さて、今日は「働き方改革」の話です。
前回のブログで「働き方改革関連法」についての話を書いていきました。
介護事業所では特に「人不足」が言われています。そうした「人不足」の時代にあって、「働き方改革」のような法改正される中でどのように経営していったらいいのかを考えてみましょう。
「働き方改革関連法」の向かう方向性は、「ワークライフバランス」です。
テレビドラマで「わたし、定時で帰ります」というのが始まりました。主人公の女性は、定時できちんと仕事を終わらせ、有給休暇もきちんと消化することを貫いています。必要があれば残業したりはしていますが、しかし、必要以上には残業しません。こうした働き方に疑問を投げかける方たちと一緒に働きながら、定期退社を基本にした働き方を貫きます。このドラマは「働くとは何か」ということを問いかけていることそのものがテーマになっています。
有給休暇の取得率は厚生労働省が毎年発表している「就労条件総合調査」によると、直近の調査では2017年の平均有給休暇取得率は51.1%となっており、政府の掲げる2020年までに有給休暇の取得率70%とは程遠い状況です。
仕事を残業せずに定時で帰って終わるのかと考える中小企業の経営者の皆さんは考え方を変えないといけません。政府の言っている2020年に70%の有給消化が実現するかはわかりませんが、いずれは社員の有給休暇取得率が70%以上というのが普通になるだろうと思います。パートアルバイトの年次有給休暇に至ってはほぼ100%年次有給休暇を消化する時代になってくるだろうと思います。これからの経営者のトレンドは、それでもきちんと利益の出せる経営です。社員を休ませ、残業もさせない中でいかにきちんと仕事を回すのか、いかにきちんと利益を出していくのか、その仕組みづくりを考えることが経営者の仕事です。
私の耳にする範囲でも、1週の労働時間が40時間であった治療院を44時間と改正する経営者がいらっしゃいました。また、なるべく時間外労働の問題が生じないように、タイムカードなどによる出退勤の管理を止めてしまう経営者がいらっしゃったりもします。これらは、新しい時代の労務管理とは逆行した行為であると思います。
「昭和時代の労務管理」では労働基準法などの労働法をきちんと順守した形での経営をしていては利益が出せない という意識の経営者が多かったように思います。「平成時代の労務管理」になるとそれが、監督署からも言われるし、労基法は守らないといけないという意識が経営者に出てきたように思います。そして、「令和時代の労務管理」では、むしろ積極的に従業員さんの労務管理を重視する経営をしないとヒトを雇えない という時代になってきていると思います。
これからの労務管理は、どうやって有給消化をしてもらうのか、いかに時間外労働をさせないようにするかを考える経営です。基本的には、国の考えている方向性に労務管理のスタイルをあわせていくことがもっともこれからの時代の労務管理にふさわしいだろうと思います。勤務間インターバル制度、テレワーク制度の導入などの新しい制度の導入や、短時間正社員制度や勤務地・勤務時間を限定する正社員の活用など、従業員さんの様々な状況に応じた制度を用意して、より働きやすい方法を従業員の皆さんに提案していく経営です。法律が改正されるから取り組むのではなく、働きやすい職場づくりを積極的に経営者の側から取り組む姿勢、これが「令和時代の労務管理」なのではないかと思います。
また、コンサルタントや社労士にもそれらを一緒に考えることのできる方が必要となってきます。労基法の抜け道を指南したり、法律や改革の方向性に逆行するようなアドバイスは特に中小企業の経営者にとっては都合のいい提案のように聞こえるかもしれませんが、その提案を受け入れることでヒトが雇いづらい職場環境となってしまい、経営が行き詰まってしまうことにもなりかねません。
時間やコストはかかっても、働き方改革の方向性と同じベクトルを向いた労務管理を考えていくことが結果的に、企業経営を安定化させることにつながるのではないかと思います。
ちょうど「令和」にかわるこのタイミングは、働き方に対する考え方も変えないといけない、そんなターニングポイントではないかと思います。