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Category Archives: 税務関連


さて、今日はちょっと早いですが、確定申告の話を一つしたいと思います。今年から確定申告書の記載が一部変更になるという話です。

税制改正で今年の確定申告から変わる点というのは結構あります。

基礎控除が48万円になったり、給与所得控除額や公的年金控除額の変更や、青色申告特別控除の変更、ひとり親控除の創設などその他にも多岐にわたり改正があります。

その中で確定申告書の書式が変わっている点があります。それが「雑所得」です。

雑所得は従来「公的年金等」と「公的年金等以外」の二つの欄だけでした。これは実にシンプルで、年金か年金以外かでわけて記載すればそれでよかったわけです。それが今回の令和2年の確定申告書から「公的年金等」と「その他」のほかに「業務」という欄が追加されます。これはどういうことでしょうか。

雑所得に入るものとしては年金以外に、たとえば原稿料をもらったり、何かの報酬をもらったりというものを載せることがあります。サラリーマンのような給与所得者の場合には、いわゆる「副業」がこの雑所得の「業務」にあたるわけです。

2020年はコロナ禍の1年でしたが、同時に「副業」を始める人が多かった1年でもあったと思います。この「副業」にあたる部分を雑所得の「業務」の欄に記載することになったわけです。

では、なぜこのような改正が入ったのでしょうか。

これは、令和4年に予定されている税制改正の影響のようです。

令和4年の税制改正では、「雑所得」に関して次のような改正が入ることになっています。

■前々年の雑所得の収入金額が300万以下の場合、当年は現金主義で計上できる

■前々年の雑所得の収入金額が300万超の場合、当年の領収書等は5年間保存義務がある

■前々年の雑所得の収入金額が1000万超の場合、当年の確定申告書には収入・経費の内容を記載した書類の添付義務がある

従来は雑所得の場合、特に帳簿の作成義務がなく、領収書等の保存義務もありませんでした。これが、令和4年から適用される確定申告で上記のように、一定の所得の場合、領収書の保存義務や帳簿の記載が必要となってくるという内容の改正が入ります。

ただ、このいくら以上の所得なら領収書の保存が必要なのかという基準が「前々年の収入金額」が判断基準になっています。令和4年の前々年は令和2年です。つまり、今回の確定申告なわけです。そのため、今回の令和2年の確定申告から「業務」の欄を追加しているわけです。

税務署としてはこの雑所得の「業務」の欄の収入金額を見て、現金主義の適用なのか、領収書の保存義務があるのか、収入・経費の記載のある帳簿の添付が必要なのか、といったことを判断していくわけです。

ちなみに、現金主義というのは、現に入金があったものを「収入」、現に支出があったものを「経費」として収入と経費を計上していくというかなり簡易なやり方です。今は公的年金以外の雑所得であれば収入金額に関係なく、すべてこの「現金主義」で計上していけばいいわけですが、これができる雑所得が「収入が300万円以下」の場合に限られることになったわけです。

この雑所得の「業務」欄の追加は、国が副業を認めているという見方もできます。

これからはサラリーマンもいわゆる「副業」が当たり前の時代になってくるのだと思います。確定申告書の雑所得の「業務」欄の追加は、それにあわせた改正ともいえるのでしょうね。

以上、今日は確定申告の雑所得の話でした。



さて、このブログも年末の忙しい状況に入ってしまい、なかなか更新できず、ご無沙汰しておりました。久しぶりに一つ記事を書きたいと思います。今日はコロナの借り入れをした際の印紙税の話です

まず、今日の話は新型コロナウィルスの影響を受けたことによって金融機関から借り入れをした場合の話です。コロナとは関係のない借入金の場合には関係のない話になります。

金融機関からお金を借りると借入金の契約書に一定の印紙を貼ります。たとえば、100万円以上500万円までだと2,000円、1000万円までだと1万円、5000万円までだと2万円・・・というような金額を借り入れの契約書に貼ります。印紙税は文書課税なので契約書の数だけ貼ります。2部作れば2部ともにその金額の印紙を貼る必要があるわけです。それが、いわゆる「コロナの借り入れ」をした場合、かからなくなるわけです。

今日はその少し先の話です。

もし仮にコロナの借り入れなのに印紙を貼ってしまったらどうなるのかという話です。

これは、特にコロナの借り入れが始まったころの4月とか5月くらいに金融機関から借り入れをしているケースによくあるようで、そのころは印紙を貼っていたケースがあったようです。その場合でも、はった印紙税は取り戻せます。

具体的には「印紙税過誤納確認申請書」という一定の用紙があり、そこに所定事項を記入していけばいいだけです。

具体的には以下の点を注意して記入すればいいでしょう。

・「文書の種類」のところは「消費貸借に関する契約書」と記載する

・「文書の名称または呼称」のところは「金銭借用証書」と記載する

・「納付年月日」の欄には契約書の日付を記載する

・「過誤納となった理由」の欄は「その他」にチェックをし、「新型コロナに係る非課税」と記入する

上記の内容を書き、還付口座を記入したうえで印鑑を捺印したら、あとは銀行や日本政策金融公庫の証明書の原本を添付すればOKです。

意外と簡単、そんなに難しくないことがわかると思います。

今日は新型コロナの借入金の印紙は非課税という話でした。



ブログの更新がしばらくぶりになりました。ここのところなぜか忙しく、なかなかブログ更新ができませんでした。

さて、今日はちょっと小ネタ的な話です。所得税の振替納税の話です。

税金の支払い方法というのは税金の種類によってまちまちです。最近は自動車税などはコンビニでも納付できるようになりました。源泉所得税などの国税もe-taxを使って納付することもできます。また、住民税や固定資産税、などの地方税の多くは口座引き落としができます。これを振替納税といっています。国税だと所得税がこの振替納税が利用できます。その所得税の振替納税の話が今日のテーマです。

この所得税の振替納税ですが、実は税務署ごとに届け出をしないといけません。つまり、引っ越しして納税地が変わって税務署の管轄が変わると、その都度、振替納税の届け出をしだし直さないといけないわけです

実務上は、結構、これを忘れるケースがあります。

引っ越ししたあと最初の確定申告書を無事に3月15日に提出したとします。毎年、振替納税だからということで特に銀行や税務署で所得税の納付はせずにいたとします。納税地が変わって税務署の管轄が変わっている場合には新たに振替納税の届け出をしないと期日に口座引き落とししてくれないわけです。振替納税当日になって、口座に残高を入れておいたのに引き落としにならずに「あれっ、なんで税金の引き落としにならないんだろう」と思うと、税務署の管轄が変わっているのに振替納税の届け出を忘れていた・・・こんなケースは結構あります。

このように税務署の管轄が変わっていて振替納税の再申請を忘れていた場合でも、2021年1月以降は「納税地の異動届出書」に振替納税を継続する旨を記載することで振替納税の口座を税務署間で引継ぎしてくれることになります

これは納税者側によっては朗報です。

今までは引っ越し等で税務署の管轄が変わっている場合、確定申告書と一緒に振替納税の届け出も3月15日までに出さないといけなかったわけです。それを振替納税の届け出を出し忘れていた場合、原則通りで納付期限は3月15日になるため、振替納税の届け出をしていないまま3月15日を過ぎてしまうと納付期限後の納付となってしまいます。結果的に、延滞税等がかかってしまうことがありえたわけですが、こうしたことがなくなるわけです。

ただ、実際、今までも税務署の管轄が変わった場合、税務署の方から「納付書送付継続依頼書」が送付された場合は、その依頼書を提出することで振替納税を継続することも可能でした。ただ、こうした手続きを取るまでもなく異動届に振替納税の継続を記載することで振替納税の継続ができるようになったということです。

ということで、今日は少し便利になった振替納税の話でした。



ベビーシッターを利用する場合、国から一定の割引券という補助を受けることができる制度があります。この制度のことを「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」といいます。今日はこの制度のことをみていきましょう。

 このサービスを利用する前に二つのことを確認する必要があります。一つは、利用者自身が割引券の以下のような使用条件を満たしているかということです。

1 当該割引券は、承認事業主が対象者に交付したものであること。
2 対象者は、承認事業主に雇用されており、乳幼児等の保護者であること。
3 対象者は、配偶者の就労・病気療養、求職活動、就学、職業訓練等により、又はひとり親家庭であることにより、サービスを使わなければ就労すること(職場への復帰を含む。)が困難な状況にあること。
4 対象者にサービスを提供するベビーシッター事業者は、割引券等取扱事業者等であること。
5 割引券等取扱事業者は、対象者と請負契約を締結することによりサービスを提供していること。

次に、お勤めの企業がベビーシッター派遣事業の利用を予定しているかを確認する必要があります。

 割引券利用が可能なベビーシッター事業者を利用の上、利用料金の支払いにあたっては、必ず領収書を受け取り、保存することになります。
 割引券の交付後、利用したベビーシッター事業者へ領収書と割引券を提出の上、割引料金の支払いを受けてください。

割引券の利用は、1日(回)対象児童1人につき1枚、1か月に1家庭24枚までとなっています。ただし、例えば、きょうだいが2人の場合、1日2枚までとなっています。 割引券1枚当たりの割引金額は、2,200円です。また、また所得制限は特にありませんから、所得金額が高い方もこのサービスを利用できます。

割引券は、利用料金が1回につき2,200円以上のサービスを対象とします。なお、この場合における利用料金とは、ベビーシッター事業者から請求される料金のうち、純然たるサービス提供対価のことをいい、会費、交通費、キャンセル料、保険料等のサービス提供に付随する料金は含まないことになっています。また、自社のベビーシッターが自社の職員に提供するサービスについては、対象となりません。

割引券の対象となるサービスとしてはベビーシッター事業者が提供するサービスのうち、乳幼児又は小学校3年生までの児童、その他健全育成上の世話を必要とする小学校6年生までの児童の家庭内における保育や世話及びベビーシッターによる保育所等や認可外保育施設への送迎に限るものとしています。

また、保育等施設への送迎は、原則として家庭内における保育等のサービスに必要な送迎であって、次のものを充たす場合にのみ割引券の対象とします。

・家庭と保育等施設との間の送迎であって、保育等施設間の送迎ではないこと。

・同一家庭以外の複数の乳幼児等を同時に送迎するものでないこと。

・送迎の間の行程や乳幼児等の様子について、ベビーシッターが保育記録として記載しており、それにより保護者に報告していること。

・ベビーシッターの所属するベビーシッター事業者(法人格を有し、協会が実施要綱に定める割引券等を取り扱う事業者として認定した者)が運営する保育等施設の送迎でないこと。

次に割引券の発行には割引券利用手数料が必要です。手数料は割引券1枚につき中小事業主(労働者数が1,000人未満の事業主)は70円、それ以外の事業主は180円です。会社側はこの利用料金を支払う必要があります。金額は大きくありませんが、会社側の一定の協力も必要ということです。

また、このベビーシッター割引券はコロナ禍で拡充されています。

新型コロナウイルス感染症によって、小学校等が臨時休業等 になった場合に、保護者が仕事を休んだり放課後児童クラブ等 も利用できず、ベビーシッターを利用した場合の利用料金を補 助するものです。

コロナ禍の特例では、次の①~③に当てはまる方が特例措置の対象となり、ベビーシッターの利用券を利用できる対象となっています。

①個人で仕事をしている(自営業、フリーランスなど)

②配偶者が仕事をしていたり、ひとり親であったりして、ベビーシッターを利用しないと働き続けられない

③新型コロナウイルス感染症の影響で子供の通う小学校や保育 所等が休校・休園等になっている

また、割引券(2,200円/枚)は 平常時が1日の上限枚数:1枚/人 のところを、このコロナ禍の特例では、5枚/人になっています。また、平常時だと、1か月の上限枚数: 24枚/家庭となっていますが、このコロナ禍の特例では120枚/家庭 となっています。さらに、平常時の年間の上限枚数 :280枚/家庭 のところをこのコロナ禍の特例では上限なしとなっています。

さて、このベビーシッターの割引制度ですが、一点注意点があります。所得税や住民税が課税されるということです。割引を受けた分、確定申告して税金を支払わないといけないわけです。

たとえば、2,200円の割引券を上限の年間280枚利用した場合、2,200円×280枚=616,000円の補助が受けられます。 ただし、その616,000円は確定申告をしなくてはいけなくなります

所得区分は「雑所得」となります。給与のみだった場合、年末調整した源泉徴収票とともに申告が必要となるわけです。

また、所得税の確定申告が発生するのは給与所得者の場合、雑所得が20万円を超える場合です。このベビーシッターの割引制度を利用することで所得が発生する人であってもその金額が20万円以下(20万円ちょうども含みます)で、他に雑所得やそれ以外の所得がないようだったら申告はしなくていいことになります。

ただし、上記にご紹介したコロナ禍で拡充した特例制度でのベビーシッターの割引制度を利用した場合には、非課税所得となるため、申告は必要ありません。

コロナ禍の特例を使ったほうが有利になりますからその点、注意しましょう。

ちなみに、このベビーシッターの割引制度を利用した場合に課税されるという話は来年度の税制改正では非課税になるという話が出ているようです。この点は今後も注意してみていく必要があるでしょう。

それから、今回は国のベビーシッターの割引制度をご紹介いたしましたが、自治体によって独自に割引制度を設けているところもあります。お住まいの自治体でそうした制度があるかも確認してみましょう。

ということで、今日は「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」をご紹介いたしました。



以前に法人の代表者変更をした時の届け出の話をしました。

今回は法人の所在地の変更があった場合の税務、社会保険、労働保険などの届け出について書いていこうと思います。

法人の所在地変更の届け出関係は実は少し複雑です。

所在地の変更がどこからどこに変更したかによって、どこに届け出をするのかが変わってくるからです。税務署、年金事務所、労働保険など、統一性はないためちょっと、やっかいです。順番に見ていきましょう。

まず、代表者の変更と同じ点があります。それは、登記所への届け出を一番最初にすべきということです。登記所に届け出をして、本店所在地変更後の謄本を添付して様々な手続きをしていくという流れになります。

まず、登記の変更についてです。

本店所在地の登記の変更は登記所の管轄内の届け出か、管轄外への届け出かによって手続きの仕方が異なります。登記所にはそれぞれ管轄区域があります。管轄登記所の変更がない所在地変更と登記所をまたがって別の登記所への所在地の変更とで手続きの仕方が違ってくるわけです。管轄が変わると手続きが変わるというのは役所側の発想といえばそうなのですが、この管轄内の移転か管轄外の移転かという点は、本店移転の手続きを通して気にしないと手続きができない点ですから、まずはそこを気にするという点を頭に入れておきましょう。

登記所の管轄内の移転であれば手続きはそれほど難しくはありません。議事録等を添付して所在地の変更の手続きすればいいだけなので、以前に解説した代表者の変更とそれほど大きな違いはありません。もし管轄区域内の移転であれば、法務局の出している記載例などを参考にして議事録を作ってみてください。

ちょっと面倒なのが、管轄外への移転の場合です。管轄区域外への移転の場合、流れとしてはまずは移転前の登記所に移転する旨の議事録を添付して移転する登記をします。いったん移転前の登記所で登記をするわけです。そのうえで、移転した後の登記所に改めて登記されている内容の届け出をするという流れになります。登記されている内容というのは、「商号」(会社名のことです)「所在地」「目的」「資本金」「取締役の名前」・・・といった登記されている事項のすべてを新しい登記所で改めて登記しなおすわけです。

これだけでもなんだか面倒な感じがするかもしれません。

移転前の登記所に移転する議事録を添付し、移転しておいてから、新しい登記所登記事項のすべてを登記しなおす。その流れをまずは知っておきましょう。

そのうえで、この移転前と移転後の書類のすべてを移転前の登記所に出します。移転前・移転後、それぞれの登記所に書類を出すわけではないという点も注意点です。

新しい登記所では印鑑の登録もされていませんから、印鑑届も移転後の登記所への書類に添付が必要です。

移転前の登記所でこれらの書類をチェックして移転後の登記所へ書類を送付するようです。そのため、管轄外への移転の場合、登記完了までが通常よりも少し時間がかかります。

時間がかかるという点も知っておいたほうがいいでしょう。

さて、登記所の手続きが終わったとします。その後は税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所、労働保険、雇用保険とそれぞれ手続きしていきます。

まず、税務署ですが、これは税務署の場合も管轄をまずは確認してください。管轄の税務署が変わらないのだったら同じ税務署ですから「異動届」をその税務署に出せば終わりです。問題なのは税務署の管轄が変わる場合です。

この場合には、異動前の税務署に「異動届出書」を提出します。異動後の税務署には提出しなくてもいいです。この際に、登記簿謄本の提出は不要です。税務署への届け出は添付書類がいらないという点は、本店移転の手続きを通じて特徴点かもしれません。

次に、都道府県税事務所と市町村への届け出です。こちらは異動前・異動後の両方の都道府県税事務所・市町村に「異動届出書」を提出します。

ただし、東京都の場合、異動前の納税地に異動届を出せばそれでいいことになっています。また、都のHPによると異動後の納税地に出しても問題はないということです。

東京都の都税事務所の場合には異動前か異動後かどちらかの都税事務所に異動届を出すようにします。

税務署と異なり、都道府県税事務所や市町村への異動届は移転後の登記簿謄本の写しの添付が必要となります。忘れずに添付しましょう。

そして、社会保険の手続きです。

税務署や都道府県税事務所などと同じく、まずは年金事務所の管轄を確認しましょう。管轄内での移転だったら簡単です。「適⽤事業所 名称/所在地 変更(訂正)届」を出せばそれで終わりです。

では、管轄外の移転だったら移転前と移転後のどちらの年金事務所に届け出をしたらいいのでしょうか。

これは移転前の所在地の管轄の年金事務所へ「適⽤事業所 名称/所在地 変更(訂正)届」を出すことになります。

年金事務所への本店移転の届け出は「事実発生から5日以内」となっています。しかし、登記簿謄本を添付しなければならないことから5日以内というのは実質的には難しいでしょう。実務上は登記が完了したら早めに届け出を出すということになるだろうと思います。

最後に労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きです。

労災保険と雇用保険の手続きは労災保険の手続きが先になります

まず、同一の都道府県内の移転の場合です。

同一都道府県内の移転の場合、管轄の労働基準監督署が変わるか、変わらないかで分かれます。管轄の労働基準監督署が変わらなければ簡単です。「労働保険名称・所在地等変更届」を移転後10日以内に提出します。ただし、登記簿謄本かもしくは賃貸借契約書など、事業実態のわかるものを添付する形です。登記簿謄本でなくてもいいことから、他に所在地移転のわかる書類があればそれで手続きしてもいいでしょう。登記簿謄本を添付するのなら、登記が完了した後の手続きになります。10日以内だと間に合わない可能性がありますが、その場合にはなるべく早めに出すようにすればいいでしょう。

同一都道府県で労働基準監督署が管轄外の移転の場合には、移転後の労働基準監督署に労働保険名称・所在地等変更届」を出します。

この場合も変更後の登記簿謄本もしくは賃貸借契約書を添付して提出します。労働基準監督署の管轄の変わる本店移転の場合、新しく労働保険番号が振られます。労働保険番号は以前のものは使えませんのでその点は注意しましょう。

そして、意外と面倒なのが都道府県をまたいだ移転の場合です。

前提として、営業所は本店所在地のみだったとします。

都道府県が変わると管轄の労働基準監督署はもちろんですが、監督署の一つ上の役所である労働局も変わります。管轄の労働局が変わる場合、手続きとしては旧本店所在地の都道府県の労働保険関係をいったん廃止して、新しい都道府県で新たに労働保険に加入するという流れになります。つまり、移転前の都道府県では労働保険料精算をして廃止をするわけです。移転後の都道府県では、「労働保険名称・所在地等変更届」で対応するのではなく、「労働保険関係成立届」と「概算労働保険料」の申告という形でまったく新しく事業を始めるのと同じ手順で手続きします。労働保険の場合、都道府県が変わる移転は意外と面倒なんです。

さて、労働保険の手続きが終わったら今度は雇用保険です。雇用保険の本店移転は、変更のあった日の翌日か10日以内に「雇用保険事業主事業所各種変更届」を、事業所の所在地を管轄するハローワークに提出します。これも雇用保険の管轄を確認して管轄に変更がなければこの届け出を出せばそれで終わりです。

ハローワークの管轄が変わる場合、これは移転後の所在地を管轄するハローワークへ「雇用保険事業主事業所各種変更届」を出します。この際に、「労働保険名称所在地等変更届」の控と本店所在地の確認書類を添えて、事業所の所在地を管轄するハローワークに提出します。労働基準監督署と同じく、賃貸借契約書であれば登記が終わってからということはないのですが、登記簿謄本を添付して本店の所在地変更の届け出をする場合、やはり登記が完了してからの手続きとなります。

また、労働保険の「労働保険名称所在地等変更届」の控えを添付することが必要なことから、労働保険の手続きも終わらないと手続きできません

それから、上記の労働保険は雇用保険の手続きは一元適用事業(労災と雇用保険が一体となっている場合)を前提としています。建設業などの二元適用事業の場合には、労災保険については、移転後の所在地を管轄する労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出し、雇用保険については、移転後の所在地を管轄する公共職業安定所に「労働保険名称、所在地等変更届」及び、「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出することになります。

いかがでしたでしょうか。

本店移転した場合の手続きはなかなか複雑だと思います。

ちなみに、このブログでは支店等の複数の営業所があることを前提とせず、本店所在地のみに営業所がある場合を前提に進めましたので、その点、ご承知いただければと思います。

ということで、今日は本店移転をした場合の手続きについての話でした。



年末調整の時期が近くなってきました。職場でもこれから年末調整の書類の記入をするケースが多くなってくるはずです。今回の年末調整では今までにない書類が増えたり、「ひとり親控除」という新しい控除ができたりと、実に改正が多くなっています。

今日はその中から、「内縁関係」の場合にどのように変わったのか、見ていきたいと思います。

内縁関係の場合、税務は配偶者控除は取れませんが、社会保険の扶養には入れます。ここは変更はありません。変わるのは「寡婦控除」「ひとり親控除」の部分です。寡婦控除とひとり親控除については以前にこのブログでも書いていますので、下記を参照してみてください。

ここで問題なのは、従前はたとえば、寡婦であって内縁関係の夫がいる場合、婚姻関係にはないので「寡婦控除」は継続して取れました。ところが、税法改正で今回の年末調整から内縁関係の者がいる場合、「寡婦控除」もしくは「ひとり親控除」は取れなくなりました。今回の改正で事実婚の関係の者がいる「寡婦」もしくは「ひとり親」はこれらの控除の対象ではなくなったのです。

問題なのは、この「事実婚」というのをどういう形で確認するのか、ということです。「事実婚」というのは原則的には本人から申し出がなければわかりません。ただ、本人から申し出がなくても会社側で「事実婚」とわかるケースがあります。社会保険の扶養に入るために住民票に「未届の夫」「未届の妻」と記載するケースがあります。これらの記載のある住民票を添付して事実婚であるけれども社会保険の扶養に入るようなケースです。このような場合には、会社側でも届け出の書類を確認していますから、「事実婚」の関係にあることの把握ができます。この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書かれている場合には配偶者控除はもちろん、「寡婦控除」「ひとり親控除」が取れないということになります。

令和2年1月23日付で総務省から各市区町村へ向けて、住民票に「未届の夫」「未届の妻」と書いてあるケースで寡婦控除やひとり親控除を取っていないことを確認するようにという通知が出ています。またこの確認をした場合にはその情報を税務署と共有するようにということになっています。つまり、市区町村側で「未届の夫」「未届の妻」と書いてある住民票がある場合、かならず税務署にもその情報がいくようになっているわけです。

おそらく実務上、事実婚であるために寡婦控除やひとり親控除が取れないのは、本人からの申し出がある場合以外にはこのケースくらいなのではないかと思います。

ちなみに、この住民票の「未届の夫」「未届の妻」と書いて事実婚であることを示す方法ですが、住民票が同じでないとできないことになっています。住所が別の場合にはそもそもこの「未届の夫」「未届の妻」と記載はできません。法律上婚姻関係にある場合で社会保険の扶養となる場合、同居は要件とされていませんから、住民票の所在地が別であっても社会保険の扶養になることは可能です。この辺も事実婚と法律上の婚姻関係にある場合の違いとして認識しておきましょう。

実際、「未届の夫」「未届の妻」と住民票に書いてお子さんがいらっしゃる場合、社会保険の扶養は継続できますが、「寡婦」「ひとり親」を継続することはできなくなります。一方で、婚姻関係になったとすると、社会保険の扶養はもちろんできますし、(多くは「夫の方で」となるでしょうが)配偶者控除も取れますが、婚姻関係になった以上、「寡婦控除」「ひとり親控除」は取れません。

この年末調整を機にこうした状況にある方はどうするのがいいのか、検討が必要でしょう。

以上、今日は内縁関係の方の年末調整の話でした。



大塚家具の代表だった大塚久美子氏が社長を退任するというニュースが飛び込んできました。私の顧問先でも最近あった話ですが、今日は法人の代表者が変更したときの手続きはどうしたらいいのかという話です。

登記、税務、社会保険、労働保険と一連の手続きがどうなっているのか、見ていきましょう。

まず、法人の代表者が変更した場合、様々な手続きがある中で一番最初にやるべきことは登記です。登記が完了したあとに税務署や年金事務所に手続きすることになります。

登記の変更の時の注意点としては「印鑑カード」です。「印鑑カード」は以前のものを引き継ぐのか、新しく発行するのかというのがあります。「印鑑カード」とは印鑑証明書などを発行する際に必要なものです。前代表者の親族が代表者を引き継ぐ場合には、印鑑カードも引き継ぐ形を取ることが多いと思います。そうでないようなケースの場合、新たに印鑑カードを発行することになるでしょう。

この印鑑カードのことを記載した「印鑑届」のほか、代表者変更の登記には株式会社であれば「株主総会議事録」や「株主リスト」、旧代表者が辞任して代表者が変更するのであれば「辞任届」が必要となります。そのほかに、新代表の印鑑証明書も必要となります。

さて、無事に代表者変更の登記が済んだとします。そうなると、次に、税務署や都税(県税・府税)事務所、市町村への届け出をするという流れになります。

税務署、都税(県税・府税)事務所、市役所といった税務関係の届け出は税務署だけ少し違います

税務署は「異動届」というのを出してそれで終わりです。付書類は特に必要ありません。

一方で、都税(府税・県税)事務所や市役所は変更後の登記簿謄本を添付して出します

添付資料に登記簿謄本が必要かどうかの点が変わってきますので注意しましょう。

さらに、社会保険に加入していたのなら、社会保険の「事業所関係変更(訂正)届」というのを出さないといけません。

事実が発生した日から5日以内となっていますが、登記簿謄本を添付しないといけないので、実際上は登記が完了してから手続きをすることになります。代表者変更の登記が済んだら早めに手続きすればいいでしょう。

それから、労働保険(労災保険や雇用保険)ですが、これは特に手続きは必要ありません。労働保険は代表者が誰というのは特に届け出を必要としていないのです。

ちょっと意外に思うかもしれませんが、手続きをしようとして届け出の方法がないのでそれで気づくかもしれません。労働保険は届け出しないという点も注意しましょう。

あとは、役所ではないですが、銀行などにも登記簿謄本の写しを通常は出すことになるはずです。これは銀行側からたぶん言われます。以前は通帳には「株式会社○○代表取締役○○」と代表者の名前まで入れていましたが、現在は会社名だけです。ですが、銀行は変更後の登記簿謄本を出すように言うのではないかと思います。

ちなみにですが、登記簿謄本というのは「全部履歴事項証明書のことです。たまに顧問先の社長さんから登記簿謄本って全部履歴事項証明書のことですか、と聞かれます。そうです。正式名称は全部履歴事項証明書です。同じことだと理解しておいてください。

また、たとえば結婚して姓が変わったりした場合も代表者の変更と同じ扱いとなります。手続き的には同じような手続きとなります。

ただ、登記に関しては姓の変更は株主総会議事録は必要ないです。代表者の変更といっても姓が変わっただけなのだったらそもそも株主総会を開いて承認を得るようなことではないですからね。

ということで、今日は代表者が変更した場合の手続きの話でした。



さて、今日は私の顧問先から質問のあったことを元に書いていこうと思います。

「治療院の専従者として働いているが、この先、コロナの影響もあり治療院がどうなるかわからない。パートとして別でも働きたいが、問題はないのでしょうか」

このケースのように個人事業で専従者給与を計上している人がパートで働いたりしたいという場合もあるでしょう。その場合、専従者給与が計上できなくなるケースがあります。これを見ていこうと思います。

その前に専従者給与とは何のことでしょうか?

たとえば、夫が個人事業をやっていて、その事業を妻やお子さんが手伝ったとします。手伝ってくれたわけですから、家族とはいえ給与を支払ったとします。その給与のことを「専従者給与」といいます。この「専従者給与」ですが、一定の要件があり、その要件に当てはまる形になっていないといけません。なおかつ、税務署への届け出も必要とされます。それらをクリアして初めて「専従者給与」として経費計上できることになります。

このように「専従者給与」に制限があるのは所得税法第56条という規定があるためです。この所得税法56条は税法になじみのない方からすると少し意外に思える規定かもしれません。要するに、生計を同じくする親族に対して支払ったもの(給与や賃料など)は経費にならないというものです。

この所得税法56条の例外が「専従者給与」です。青色申告の場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」というのに誰にいくら支払うのかを記載し、仕事をしたことに対しての給与の額が適正だと判断されれば、生計を同じくする親族であっても経費に計上できるということになっています。(白色の場合には届け出をしなくても経費に計上できますが、経費に計上できる給与の金額に一定の制限があります)

さて、今日はこの専従者給与を計上する場合に、他に給与があると計上できなくなるケースがあるという話です。所得税法施行令165条(親族が事業に専ら従事するかどうかの判定)という部分にこのことが書かれています。ちょっと読みづらいのですがこの規定をそのまま載せたいと思います。

法第57条第1項⼜は第3項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する居住者と⽣計を⼀にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて6⽉をこえるかどうかによる。ただし、同条第1項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその2分の1に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば⾜りるものとする。

⼀ 当該事業が年の中途における開業、廃業、休業⼜はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかつたこと。

⼆ 当該事業に従事する者の死亡、⻑期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と⽣計を⼀にする親族として当該事業に従事することができなかつたこと。

2 前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の⼀に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。

⼀ 学校教育法第1条(学校の範囲)、第124条(専修学校)⼜は第134条第1項

(各種学校)の学校の学⽣⼜は⽣徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第124条⼜は同項の学校の⽣徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)

⼆ 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)

三 ⽼衰その他⼼⾝の障害により事業に従事する能⼒が著しく阻害されている者

ちょっと読みづらいですよね。

要約すると、以下のようになります。

〇専従者給与にするには1年間に6カ月以上(事業に従事できる期間が1年に満たない場合にはその事業をやっていた期間の半分以上の期間)勤務していることが必要

〇学生は専従者給与に計上できない

〇他に職業がある人は専従者給与に計上できない(ただし勤務時間が短い場合は除く)

〇身体的に働けない状況の人は専従者給与に計上できない

思い切ってまとめれば上記のようになります。

今回、問題にしているのはこの三つ目の「他に職業がある人は専従者給与に計上できない」という論点です。

この論点での裁判例があります。関連会社の役員として従事する配偶者は、他に職業を有する者であるから青色申告専従者には当たらないとされた事例です。(東京地裁平成28年9月30日)

この例では、税理士業を営む原告が、妻に支払った青色事業専従者給与を必要経費に算入して申告したところ、税務署側は「妻は関連法人3社の役員として法人の業務に従事しており青色事業専従者に該当しない」として専従者給与の計上は認められないとしています。

原告の妻は、いずれも1年の売上高が1000万円を優に超える規模の関連会社において、代表取締役又は取締役として業務に従事しており、その役員報酬の合計額は、税理士事務所の専従者給与の額をはるかに超えるもので、このうちの1社については妻が代表取締役であるとともに宅地建物取引主任者の地位にあったものであり、その報酬を確定申告しているのであるから、自ら業務に見合った報酬を得ていることを自認しているもので、「他に職業を有する」というべきだとして、専従者給与は計上できないとしています。

上記の裁判例も踏まえて考えると、役員などの取締役をやっていて報酬を得ているというのは「他に職業を有する者」とみられる可能性があるので注意が必要です。仮に、取締役等の役員になっていても得ている報酬額が専従者給与と比べて少なければ問題はないかもしれませんが、専従者給与よりも多い場合、問題になる可能性があります。また、代表取締役になっているケースも「他に職業を有する者」とみられる可能性がありますから注意が必要です。

次に、「他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)」という規定の( )の部分の「その職業に従事する時間が短い者」というのは具体的にはどういう意味なのでしょうか。

これについては、特に判例等がないので、個々に判断していくしかなさそうです。ですから、ここからは私見となってしまいます。

まず、正規雇用となっているようなケースは「他に職業を有する者」といえるので問題があるといえます。

では、正規雇用でもなく、専従者給与と比べて金額も少ない場合、問題がないと考えていいのでしょうか。

これも私見ですが、税法ではないところから考えるのも根拠になりえるのではないのかと思います。雇用保険法で考えると、週の労働時間が20時間以上の場合には雇用保険に加入することになります。一時的に20時間を超えていても加入する必要はなく、恒常的に20時間以上の労働時間がある(もしくは労働契約等で週の所定労働時間が20時間以上となる)場合に加入することになるものです。雇用保険は失業した場合の生活保障という意味の保険で、これに加入するということは「他の職業を有する者」とみられる可能性があるのではないかと考えます。

まとめますと、専従者給与を得ている人が他で報酬を得ている場合、以下のようなことが求められると思います。

  • 他の会社の代表取締役となっていないこと
  • 他の会社の取締役等の役員になっている場合には、報酬額が専従者給与よりも少ないこと
  • 他の会社で正社員になっていないこと
  • 専従者給与以外の給与の額が専従者給与と比べて少ないこと
  • 他の会社でパート・アルバイトで働く場合には、週の労働時間が20時間未満であること

こんな感じでしょうか。

ちなみに、個人事業が法人なりした場合にはこうした専従者給与の問題は生じません。

法人にしてしまえば、他で働こうが、代表取締役になっていようが、法人の給与なので計上は可能です。もちろん、金額が働いている内容に比べて給与が高ければ金額の部分が問題になることはあります。ですが、きちんと仕事の内容と給与の額が特に問題ないといえるのだったらその法人で給与を計上すること自体に問題はありません。

また、専従者給与の場合、学生は計上できません。ですから、個人事業を営んでいる人が自分のお子さんがお手伝いをした場合に専従者給与を計上したとします。そのお子さんが学校に通っている学生だったら専従者給与は計上できません。ですが、この場合でも個人事業を法人にすれば給与を計上できることになります。

このように、専従者給与の観点から法人なりすることを検討することも考えられる話です。

ということで、今日は、専従者給与の「他で職業を有する」という部分についての話でした。



年末調整にはまだだいぶ時間があります。税制改正で令和2年から適用されるものに「ひとり親控除」というのがあります。年末調整までまだ時間のあるこの時期だからこそ、早めに理解しておいたほうがいいでしょう。

今日はなるべくわかりやすくこの「ひとり親控除」をご説明したいと思います。

まず、「ひとり親控除」を説明する前に従来からある「寡婦控除」と「寡夫控除」をご説明いたします。

寡婦控除というのは納税者自身が「寡婦」である場合に受けられる控除です。

「寡婦」の方は対象となるのは女性です。寡婦とは、夫と死別した人、もしくは夫と離婚した後婚姻をしていない人で、扶養親族もしくは生計を同じくする子がいる人です。この場合、お子さんは、令和2年分以後は所得が48万円以下であることが要件です。

また、夫と死別した後婚姻をしていないで、合計所得金額が500万円以下の人も寡婦となります。この場合には、扶養親族などの要件はありません。

また、寡夫控除とは、納税者本人が、「寡夫」であることが要件です。女性の場合には「寡婦」で男性の場合には「寡夫」です。

この「寡夫」とは、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。

・所得金額が500万円以下であること。

・妻と死別し、若しくは妻と離婚した後婚姻をしていないこと

・生計を同じくする子がいること。
この場合、お子さんは、令和2年分以後は所得が48万円以下であることが要件です。

結構、わかりづらいかもしれませんから、まとめてみましょう。以下のようになります。

寡婦

①夫と死別もしくは離婚+生計を同じくする子どもがいる

②夫と死別し婚姻をしていない+所得が500万以下(お子さんがいない)

寡夫

 妻と死別もしくは離婚+所得が500万以下+生計を同じくする子どもがいる

所得控除の金額は27万円です。

加えて、寡婦の場合、上記の①にあてはまるケースで所得金額が500万以下の場合、「特別の寡婦」となります。この「特別の寡婦」になると控除額が通常の27万円から35万円となります。「寡夫」には「特別の寡婦」のような制度はないので、「寡夫」の場合には控除額は27万円のみです。

さて、この「寡婦」「寡夫」と比較しながら「ひとり親控除」をみていきましょう。

「寡婦」にしても「寡夫」にしても「婚姻していた」というのが前提にあります。そうすると、たとえば「シングルマザー」のように最初から結婚していなくてお子さんがいる方には「寡婦」控除の適用は初めからないことになります。また、「寡婦」と「寡夫」で控除の仕組みが違います。男性と女性で控除が違うわけです。こうした従来からあった不公正の見直しを図ったのが「ひとり親控除」です。「ひとり親控除」は婚姻しているかいないかは問わず、お子さんのいるひとり親であれば受けられる控除です。要件は以下のように整理されます。

所得金額が500万円以下であること。

・生計を同じくする子がいること。

寡夫控除には上記の要件に「妻と死別し、若しくは妻と離婚した後婚姻をしていないこと」がありましたが、それがないというのが「ひとり親控除」です。

この「ひとり親控除」は、従来あった男性とか女性とかの区別はありません

また、この「ひとり親控除」の控除額は一律35万円となります。

さて、ここからが少し複雑になるのですが、まず、従来あった「寡夫控除」、これは自動的に廃止となります。「ひとり親控除」に置き換えられるためです。

次に「寡婦」控除の方ですが、これは一部、残ることになります。

新しい「ひとり親控除」は結婚している結婚していないは関係なく、お子さんがいることが要件ですが、「寡婦」控除の場合、二つのパターンがあったはずです。

①夫と死別もしくは離婚+生計を同じくする子どもがいる

②夫と死別し婚姻をしていない+所得が500万以下(お子さんがいない)

このうち①は「ひとり親控除」に置き換えられます。ですが、②の方は夫と死別してお子さんはいない方です。つまり、②に該当している寡婦の場合、新しくできた「ひとり親控除」にはあてはまらないわけです。この②の方は従来の寡婦控除が引き続き適用されます。

ちなみに、従来の寡婦控除の②の要件に当てはまる人の控除額は従来と同じく27万円です。

それから、この「ひとり親控除」の創設によって従来からあった「寡夫控除」がなくなっただけではなく、「特別の寡婦」というのもなくなりました。

また、事実婚の場合、これらの控除は対象外となりますからその点、注意が必要です。

さて、今日の話をまとめますと、次のようになります。

「ひとり親控除」の要件は以下です。

・所得金額が500万円以下であること。

・生計を同じくする子がいること。

「寡婦控除」が適用されるのは以下の場合だけとなります。

夫と死別し婚姻をしていない+所得が500万以下(お子さんがいない)

少し早いですが、今年の年末調整から適用される「ひとり親控除」についてできるだけわかりやすくまとめてみました。参考にしていただければと思います。



コロナの関係で日本政策金融公庫の借入を利用される方も多くなっています。 融資が決定され、契約書を取り交わす際に公庫の担当者に必ず聞かれるのが「団体信用生命保険に加入しますか」というものです。

そこで私が顧問先の皆さんから聞かれるのがこういった質問です。

団体信用生命保険(団信)って加入する必要はあるの」「そもそも団信って何

今日はこの「団信」についてみていきましょう。

団体信用生命保険というのは住宅ローンなどにもありますが、日本政策金融公庫の事業の借入金についてもあります。公庫団信制度と呼ばれています。 公庫団信制度とは何かというのは次のように書かれています。

死亡・所定の高度障がい状態になられた場合に補償します。 ご加入者が死亡または所定の高度障がい状態になられた場合、残りの債務が全額弁済されます。 株式会社日本公庫(国民生活事業)または沖縄公庫のご融資を受けられた方がご利用いただけます。 事業資金融資(貸付種類に限定があります)または恩給・共済年金担保貸付が対象です。 事業資金融資団信保険をご利用いただけるのは、満15歳以上 満68歳未満の方です。 恩給・共済年金担保貸付団信保険は、満15歳以上 満80歳未満の方です。 年齢の基準日は、告知日(申込書兼告知書の記入日)現在です。 (公益財団法人公庫団信サービス協会 HPより抜粋)

要するに、事業主が公庫の借入金をした後、死亡したり重度障碍者になったときに残債を保険で賄うというものです。

引受先の保険会社があり、明治安田生命や第一生命などの日本の保険会社となっています。 保険としては、全額掛け捨ての保険です。

保険料の金額としてはおおよそ借入額の0.25%前後のようです。

つまり、1000万円の借入金でだいたい年額25,000円くらいです。保険料がだいたいいくらくらいになるのかという参考としてみてください。

また、この保険の加入の有無が審査に影響するかということもよく聞かれます。これは審査上にはまったく影響がないようです。

そもそも契約書が送付されてきて(融資額や返済方法が決まっていて)同時に団信の資料も送付されてくるので、審査に影響がないことは明らかです。

ですから、純粋にこの保険自体に加入する必要はあるのかどうかという点から考えればいいということになります。

さて、ここからは私が顧問先の皆さんに「団信は入ったほうがいいですか」と聞かれたときに必ずお答えしていることです(もしこのブログをご覧になっている私の顧問先に方がいらしたらたぶん同じことを言っています。)

加入が必要な場合というのは、たとえば次のような場合だと思います。

個人で他に保険に入っていない

借入金の金額が会社の規模に比べて大きい

役員に家族がおらず、社長自身に何かあった時に事業を引き継ぐ人がいない

他にもあるでしょうが、上記のようなケースに複数、該当しているのでしたら加入を検討してみてもいいと思います

通常は個人で保険に加入済みであって、少なくとも借入金額が1000万円にみたないような場合には不要だと私は考えています。

また、加入した場合の保険料の経理処理についても注意が必要です。法人と個人とで処理の仕方が違うからです。

法人の場合には問題なく、全額損金として経理処理できます。

しかし、個人の場合には、必要経費にはなりません。

しかも、支払った金額は生命保険料控除の対象にもなりません。

一方で、この保険によって債務の弁済がなされた(つまり事業主が死亡するか、重度障碍者になった場合)にはどのように経理処理されるのでしょうか。

法人の場合には、弁済された金額が益金処理されます。つまり、利益になるわけです

支払った金額が損金、つまり経費になるため、もらったら課税されます。

ということは個人はどうなるかというと、個人の場合には所得税は課税されません。個人は支払ってももらっても税金には関係しない形になっているわけです

まとめますと、団信に加入するかどうかは、純粋に必要か必要でないかその一点で考えていただければと思います。 以上、日本政策金融公庫の借入の際の「団体信用生命保険」の話でした。