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さて、今日は配偶者控除の改正の話です。

103万円が150万円になります。この1月(平成30年1月)から改正になっています。

どういう関係になっているのか、よくわからないという人も多いと思います。

シンプルにしてわかりやすく解説します

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まず、今回の改正は、一般的には「夫」の配偶者控除の話です。(夫の方が年収が多く、妻の方が年収が少ないという前提です)それ以外は何も変わっていません。つまり、一般的には「妻」の税金や社会保険の話は全く変わっていないという点です。

この配偶者控除の話でややこしいのは、税務と社会保険の両方が関係する点がまず一つあります。もう一つは、夫の税額に影響がある話と妻自身の税金や社会保険の話とが混在している点です。

 

その辺を考え、このブログでは、妻の年収(給与の場合に限った話です。事業所得の場合は当てはまりません)がどの金額になったらどうなるのか、もう一方で、夫の年収が変わるとどうなるのか、金額を順番に並べて考えてみることにします。

 

妻の年収100万以下・・・住民税が非課税になるライン。この金額を超えると「妻」の住民税が5,000円以上かかる。

妻の年収103万円以下・・・「妻」の所得税が非課税になる金額。所得控除(生命保険料控除など)が何もなくても、この金額以下だったら「妻」の所得税はかからない。

妻の年収106万円未満・・・「夫」の勤務先が従業員数501名以上の大企業の場合、「妻」は社会保険の扶養から外れる。この金額以上だと妻は単独で社会保険に加入(勤務先の社会保険に入るか、勤務先の社会保険に加入する基準に達していなければ妻単独で国民健康保険・国民年金に加入)しないといけない。

妻の年収130万円未満・・・「夫」の勤務先にかかわらず社会保険の扶養に入れる範囲。この金額以上だと妻は単独で社会保険に加入(勤務先の社会保険に入るか、勤務先の社会保険に加入する基準に達していなければ妻単独で国民健康保険・国民年金に加入)しないといけない。

妻の年収150万円未満・・・「夫」の配偶者控除(38万円)が取れる範囲。「妻」の年収が103万円以上であれば「妻」自身には所得税・住民税はかかる。

妻の年収150万円以上201万円未満・・・「夫」の配偶者特別控除が取れる。控除額38万円が段階的に少なくなり、201万円になった段階で、配偶者特別控除はゼロになる。

 

こんな形です。なんだか複雑ですね。

 

複雑に感じた所に悪いのですが・・・

もう一つ、今回の税法の改正で、「夫」の年収によって妻の配偶者控除が制限されるのも加わりました。夫の年収要件が以下です。

 

夫の年収が1120万円(所得金額で900万円)未満・・・この金額未満だったら「夫」は配偶者控除38万円を取れます。

夫の年収が1120万円以上1170万円(所得金額で900万円以上950万円未満)・・・「夫」は配偶者控除26万円を取れます。

夫の年収が1170万円以上1220万円(所得金額で950万円以上1000万円未満)・・・「夫」は配偶者控除13万円を取れます。

夫の年収が1220万円(所得金額1000万円)未満・・・「妻」の年収が150万円以上201万円未満の場合、「夫」は配偶者特別控除を取れます。

 

気にしないといけないが「夫」の税金なのか、「妻」の税金や社会保険なのかによって、違うという点です。ご自身が今、どの部分が問題になっているのかによって変わります。

「妻」自身の税金や社会保険の負担の問題なのであれば、妻の年収は100万円、103万円、106万円、130万円という話です。

「夫」の税金の話なのであれば、妻の年収は150万円、201万円、それから夫自身の年収1120万円~1220万円という話です。

 

このように金額を並べてみると、少し見えてくるのではないでしょうか。参考にしてみてください。



新年、1回目のブログ更新です。ご無沙汰していました。

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さて、1回目のブログは介護事業所向きの助成金の話です。

現在、介護事業所の経営者の方でしたら、従業員に60歳以上の高齢者がいらっしゃいますでしょうか。介護事業所は働いている従業員さんも高齢の方が多くいらっしゃるいますよね?他の業種では、この助成金はあまり該当する可能性が高くないかもしれませんが、介護事業所に限っては、定年延長や定年廃止した場合に受給できるこの助成金は使える可能性が高いです。

まずは自社の就業規則で定年年齢が何歳になっているかを確認してみましょう。定年年齢後も引き続き雇用している方がいる場合、その方が1年以上雇用保険に加入しているかを確認してみてください。その両方とも該当するのであれば、この助成金に該当する可能性があります。

該当する60歳以上の方がいらっしゃる場合、「 65歳以上への定年引上げ」「 定年の定めの廃止」「希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入」のいずれかを導入した事業主に対して助成金が出るというものです

では、いくら受給できるのでしょうか。

定年引上げ等の措置の内容や年齢の引上げ幅、60歳以上の雇用保険被保険者数に応じて、下表の金額が支給されます。

定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ

 (横列)措置内容  (下列)対象被保険者数 65歳への 定年引上げ (5歳未満) 65歳への 定年引上げ (5歳) 66歳以上への定年引上げ (5歳未満)  66歳以上への 定年引上げ (5歳以上)
1~2人 20万円 30万円 25万円 40万円
3~9人 25万円 100万円 30万円 120万円
10人以上 30万円 120万円 35万円 145万円

定年の定めの廃止、旧定年年齢及び継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入

 (横列)措置内容  (下列)対象被保険者数 定年の 廃止 66~69歳の継続雇用への引上げ (4歳未満) 66~69歳の継続雇用への引上げ (4歳) 70歳以上の継続雇用への引上げ (5歳未満) 70歳以上の継続雇用への引上げ (5歳以上)
1~2人  40万円 10万円 20万円 15万円 25万円
3~9人 120万円 15万円 60万円 20万円 80万円
10人以上 145万円 20万円 75万円 25万円 95万円

 

定年引上げと、継続雇用制度の導入を合わせて実施した場合の支給額はいずれか高い額のみとなります。

また、定年引上げ等実施後2カ月以内に支給申請しないといけません。申請先はハローワークではなく、 雇用保険の適用事業所の主たる所在地のある独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(高齢・障害者業務課です。 間違いないようにしましょう。

今日は、「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)」の話でした。



前回に続いて、「ふるさと納税」の話です。

今日は、「ふるさと納税」したあとの手続きの話をします。ふるさと納税しただけでは税額控除は受けられません。あくまでも申告しないと税額には反映しません。では、具体的にどうやって手続きしたらいいのでしょうか。

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手続きの方法は二通りあります。

一つは、確定申告で精算する方法です。まずはふるさと納税するとその自治体から「寄付金受領証明書」というのが届きます。その「寄付金受領証明書」を脇に置いて確定申告書に記入していきます。ポイントは3つです。

 

  1. 寄付金控除の欄に記載する(寄付した金額-2000円が控除額です)
  2. 確定申告書の第二表の右下の欄に「寄付金控除」という欄があります。ここに寄付した自治体の名称と金額を記入
  3. 同じく確定申告書第二表の左下に「住民税に関する事項」という欄があります。「寄付金税額控除」の部分の「都道府県、市町村分」の欄に寄付金の金額を記入

 

これだけです。それほど難しくはないんです。

 

そして、さらに簡単な制度があります。それが「ふるさと納税ワンストップ特例」という制度です。簡単にいえば、ふるさと納税しても確定申告せずに税額の精算をしてくれるという何とも便利な制度です。

 

この制度が使えるかどうかは次の2つの条件が当てはまっていないといけません。

  1. 確定申告しない(年末調整だけ)の人
  2. ふるさと納税している自治体が5自治体以内の人

 

この二つが当てはまっていて、ワンストップ特例を使いたい人は、寄付の都度、寄付した自治体に「様式55条の5」というのを提出しないといけません。正式名称は「道府県民税市町村民税 寄付金税額控除に係る申告特例申請書」というものです。

 

難しそうですが、実はそんなに難しい書類ではありません。

 

書く内容は住所・氏名のほかは「寄付をした年月日」「寄付金の額」だけです。あとは「申告の特例の適用に関する申請書」のチェック欄をする箇所が2か所あります。そのチェックを必ず2か所ともしましょう。

そんなに難しくないですよね?

あとはマイナンバーカードの表裏をコピーしたものか、運転免許証の写しとマイナンバー通知書の写しもコピーのいずれかを添付して提出することになります。

 

書類は難しくないですが、これは寄付の都度、提出しないといけないというのが面倒かもしれません。同じ自治体に二回寄付していても、寄付の都度なので二回とも提出しないといけません。

 

あとは提出期限も気をつけましょう。寄付した年の翌年1月10日までに提出しないといけません。平成29年中に寄付したのであれば、平成30年1月10日までに自治体に出さないとこのワンストップ特例の適用は受けられませんから注意が必要です。

また、たとえば、仮にワンストップ特例を受けられなかったら控除が受けられないのかといえば、もちろん、そんなことはありません。ワンストップ特例での控除は出来ませんが、確定申告で税額の精算はできますのでどうぞご安心ください。

 

あとは、実際に質問がよくある項目です。

 

確定申告の場合、申告期限は翌年3月15日ですよね。期限を過ぎたものでも申告できるのか、というのはよくある質問です。ふるさと納税の控除だけであれば還付申告になります。還付申告であれば3月15日を過ぎても受け付けてくれます。還付申告は5年間出せます。

平成29年の確定申告の還付申告は平成29年1月1日から平成34年12月31日まで提出できます。

 

前回、今回とこの年末に大変質問の多い「ふるさと納税」についてでした。



さて、今日はふるさと納税についてです。

年末にこの質問がとても多かったです。ふるさと納税とは何なのか、限度額の計算はどうしたらいいのか、知っておくべき最低限度について解説します。

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年末近くになったこの時期、経営者の皆さんからとても質問が多いのが「いくらまでふるさと納税していいのか」というものです。

限度額計算の前に、まず知っておいていただきたいのは「ふるさと納税」というのは一体何なのか、ということです。

なぜこんなことを言うのかというと、ふるさと納税の返戻品の話が話題になりすぎていて「ふるさと納税」というのは何なのかが忘れられている感があるためです。何のために「ふるさと納税」をするのかを知っておく必要があります。

「ふるさと納税」というのは、「自治体への寄付」です。ふるさと納税という制度がある以前から、自治体への寄付というのはありました。ただ、「ふるさと納税」ができるまでは、所得税や住民税の寄付金控除の扱いでしかなかったわけです。つまり、税金は減りますが、それは寄付金控除という制度の中での話だったわけです。つまり、寄付した金額から以前は5,000円を引いた金額を寄付金控除した金額に所得税や住民税の税率を掛けた金額の税金だけが少なくなるという制度だったんです。

それを、所得税と住民税をあわせると、「寄付した金額-2,000円」の税金が少なくなるようにしたというのが「ふるさと納税」です。

 

具体的な金額に当てはめてみましょう。

 

給与収入が年間6,000,000円だったとします。給与所得控除額を引いた後の所得金額は4,260,000円となります。所得控除の金額が1,000,000円だったとします。そうすると、課税所得は3,260,000円となります。

ちなみに、これらの数字は給与所得者であれば源泉徴収票があればわかります。

 

難しいことは抜きにして、源泉徴収票から「給与収入」「課税所得金額」「所得控除額」を見つけてください。次に「さとふる」というサイトを開いてください。↴

https://www.satofull.jp/static/calculation01.php

 

このサイトに上記の3つの数字を入れると、ふるさと納税の上限が求められます。

上記の場合、83,000円と出ました。つまり、83,000円以内であれば、ふるさと納税した金額のうち2,000円を控除した金額全額が所得税か住民税が控除されるということです。

意外と簡単?ではないでしょうか。

 

繰り返しですが、 「ふるさと納税」は寄付であるということです。節税というよりかは「ふるさと納税」した金額のうち、2,000円を超える金額(2,000円の自己負担がある)の税金が減るという話だということをまずは知ってください。

その上で、限度額の計算はネット上のサイトを利用してみましょう。

 

皆さんは最低限、このくらいが理解できれば「ふるさと納税」についての理解は十分だと思います。

では、次回は「ふるさと納税ワンストップサービス」についてかいつまんで説明します。



ブログの更新が少し空いてしまいました。

今日は助成金の話で、「生産性要件」というお話を致します。

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生産性要件」って、何かご存知でしょうか。

いろいろな助成金にこの「生産性要件」があります。該当すると、助成金が割増になるというものです。厚生労働省の生産性要件に関する記事のページです。↴

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html

 

キャリアアップ助成金の正社員化コースであれば、この「生産性要件」に該当すれば57万円の受給額が72万円になります!これはチェックせずにはいられないでしょう。

 

生産性要件というのは、「3年前と比較して生産性が6%以上改善している」という場合に当てはまります。

具体的には

営業利益+人件費+減価償却費+賃借料+租税公課の合計を雇用保険の被保険者数で割ります。その金額が3年前に比べて、6%以上改善していると割増の対象になります。

1人当たりの利益が上がっている場合に対象になるということです。

算式をみますと、該当しそうなのが「利益が増えている」場合や、「雇用保険被保険者数が減っている」場合などです。

「設備投資をして減価償却費が増えた」(減価償却費が増えた)なんていうのも該当している可能性があります。何百万とかいう設備投資を直近の年度でした場合、該当する可能性がありますから、注意してチェックしましょう。

具体的には、上記の厚労省のページに生産性要件の計算シートがあるので、該当する数字を入力してみると確認できます。

その際のポイントは以下のようなものです。

 

3年前の決算と比較する

 

たとえば、3月決算法人だったとします。直近の決算は平成29年3月期。この場合、3年前は平成26年3月期ということになります。これが上記の算式に当てはめて6%以上改善しているかどうかを確認するわけです。決算書をみながら該当する勘定科目を入力してみて改善しているかをチェックしてみましょう。

 

勘定科目でしか判断されない

 

この生産性要件は勘定科目でしか判断されません。たとえば、人件費の中に「通勤交通費」というのも含まれます。ですが、「通勤交通費」を「旅費交通費」という勘定科目にしてしまっている場合には、「通勤交通費」とそれ以外の交通費(タクシー代とか電車代とか)が混在しているため、「この中に通勤交通費が入っているんです」と言ってもダメです。勘定科目を「通勤交通費」と分けていないといけません。

直近の事業年度は、「通勤交通費」といった科目を作って経理処理しましょう。

この辺は、助成金に理解のない税理士だと処理してくれません。「通勤交通費は『通勤交通費』という勘定科目で処理してください」と伝えないといけません。

また、たとえば、住民票や謄本取得の費用は「租税公課」で処理するようにすればいいことになります。ちょっとした会計処理で助成金の申請が有利になることは知っておいていいことです。

 

1%~6%の改善でも「生産性要件」をクリアできる場合がある

生産性要件を計算してみた時、6%をわずかに上回らなかった場合というのがあります。その場合は、あきらめてはいけません。

「金融機関から一定の『事業性評価』を得ていれば、生産性要件が1%~6%であれば生産性要件を満たしたものとする」となっています。

金融機関の「事業性評価」というものについて、厚労省は次のように説明しています。

「事業の見立て(市場での成長性、競争優位性、事業特性及び経営資源・強み等)を与信取引のある金融機関に照会させていただき、その回答を参考にして、割増支給の判断を行うものです。なお、『与信取引』とは、金融機関から借入を受けている場合の他に、借入残高がなくとも、借入限度額(借入の際の設定上限金額)が設定されている場合等も該当します。」

 

これは、ちょっと解説が必要でしょう。要するに、借入金のある金融機関(借入金がなければ口座のある金融機関)に「事業性評価」の書類に捺印をもらってね、と言っているわけです。具体的には、「与信取引に関する情報提供に関する承諾書」(様式3号)という書類があります。通常は事業の借入をしている金融機関に照会することになるでしょう。

こうしたこともありますから、金融機関からいくらか借入金があった方がいいとも言えます。借入金のない金融機関にこうした書類に印鑑をもらうのはやりづらいでしょうからね。

 

助成金の上乗せ支給の対象になる「生産性要件」これは、実は会計や経理処理と密接に関係がある項目なわけです。

その意味でも、税理士業務と社労士業務を一体で見ている【弊社のような】事務所に依頼されるのがお得かと思います。

 

ということで、今日は、助成金の「生産性要件」の話でした。



さて、前回に引き続き、キャリアアップ助成金の正社員化コースに絞った形でのポイントをご紹介いたします。

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キャリアアップ助成金にあたっては、労働局は出された書類を細かい点まで確認しています。実際に申請してみないとわからない点について、前回に引き続きご紹介いたします。

 

・キャリアアップ助成金を活用しようとする従業員さんの雇用保険の手続きは「有期雇用契約」「パート」などの非正規雇用の形にする

 

これは、実際に申請した時に指摘されることがあるポイントのようです。

雇用保険の資格取得時に「有期雇用契約」とか「パート」とかと言った形で資格取得の手続きをしていないと、あとから助成金の申請をした後に指摘されることがあります。

あまり知られていないことですが、実は助成金というのは都道府県によって基準がまちまちです。この資格取得時の区分が「有期雇用契約」や「パート」になっている人を正規雇用に転換するというのをチェックポイントにしている都道府県もあるようです。あとからこうした点を指摘されないためにも、キャリアアップ助成金を使う予定のある人を雇う場合には、資格取得時に最初から非正規雇用の形態である「有期雇用契約」や「パート」などとして手続きするようにしましょう。

 

・時間外労働があれば時間外労働をきちんと支払う

 

助成金と一見関係なさそうですが、時間外労働に対しての時間外手当をきちんと支払っているのか、というのはチェックポイントになっているようです。時間外労働があるのに時間外手当が支払われていないとこの助成金を受給できないケースもあるようです。

社会保険にきちんと加入していないと助成金が受給できないなど、結局、きちんと労働法規や社会保険諸法令を遵守していないと受給できないというルールになっているようです。時間外労働があれば何らかの形できちんと支払いをしましょう。

その際、中小企業の場合、たとえば「定額時間外手当」として、一定の金額を時間外手当として支払っているものとして労働契約を結ぶなどは一つの方法です。

 

・タイムカード(出勤簿)と賃金台帳をチェック!

 

助成金の受給の際にはたいてい、タイムカードのコピー(もしくは出勤簿)や賃金台帳を提出します。これらの書類の記載がきちんとなっているのかを確認しましょう。たとえば、休憩時間があるのであればそういった情報もタイムカードにも記載したほうがいいでしょう。賃金台帳も労働時間や労働日数を記載してあるのかを確認しましょう。

「給与計算は会計事務所に依頼してあるから大丈夫」といっても、たいていの会計事務所は助成金のことをよくわかってはいません。助成金のことはわかっていませんから、労働時間数や労働日数が記載されていない賃金台帳を出してきたりします。会計事務所に給与計算を依頼していて会計事務所から賃金台帳を出してもらう場合、賃金台帳に労働日数や労働時間数の記載がなければ書いておいた方が丁寧です。助成金の申請時に労働日数や労働時間数などの情報をきちんと書いてあるかどうかを確認したほうがいいでしょう。

 

・就業規則の内容もきちんと確認!

ある労働局にキャリアアップ助成金の書類を提出したところ、定年年齢の記載について質問をされたことがありました。キャリアアップ助成金の受給に際しては直接は関係しない部分です。ですが、就業規則はキャリアアップ助成金に関連する部分(社員への転換規定があることなど)だけをチェックしているわけではないことがよくわかります。育児休暇制度があるのか、正社員特有の手当てがあるのかなど、正社員への転換規定以外の部分も確認されます。キャリアアップ助成金の受給の際には、正社員への転換規定以外も改めて確認してみましょう。

 

・正社員へ転換する旨をきちんと労働契約書に記載する

まず、このキャリアアップ助成金を受給するには、きちんと労働契約書を交わしてないと受給できません。そして、その労働契約書には、正社員へ転換する場合「正規雇用への転換」を明記した契約書であるとわかりやすいです。つまり、受給につながりやすいということです。「〇月〇日からは就業規則第〇条の規定に従い、正規雇用として採用するものとする」といった一文を労働契約書に記載するということです。契約書に記載があれば、正規雇用への転換は一目瞭然ですから、こうした文面をきちんと記載したほうがいいでしょう。

 

最後に、こうしたポイントは、キャリアアップ助成金の正社員化コースを何度か経験した社労士でないとなかなかわからない部分であったりもします。助成金というのは、ローカルルールも多く、労働局によっても取り扱いが微妙に異なる部分も多いです。結構、細かい点が問題になることも多いので、そうしたポイントがわかっている社労士にやってもらったほうがスムーズに受給できます。

 

ちなみに、社労士と言っても、助成金はあまりやらない社労士は多いです。どちらかというと、助成金の事務手続きはやらない、もしくはやっていてもやっている件数がそれほど多くない社労士が多いです。

キャリアアップ助成金は1名でも雇う人がいれば受給できる助成金です。その意味で、非常に使える助成金です。しかし、受給するためにはいくつかポイントがあります。きちんと受給に繋げるためにも、キャリアアップ助成金に詳しい社労士に依頼してみてはいかがでしょうか?



「働き方改革」というのは、安倍政権の重要な政策課題です。

「働きずめで残業が当たり前」とか「正規雇用と非正規雇用の格差問題」とか「男性中心の企業社会」こういった古くからの価値観に基づいた働き方はこれからは変えなくてはいけない。これが働き方改革です。

雇用保険の助成金にもその「働き方改革」を意識した助成金が数多くあります。

今日は「働き方改革」を代表する助成金、キャリアアップ助成金の正社員化コースについて、書いていこうと思います。

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キャリアアップ助成金(正社員化コース)については、以前にも書きました。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%aa%e3%81%84%e3%81%a8%e6%90%8d%e3%81%99%e3%82%8b%ef%bc%81%ef%bc%9f%e4%bd%bf%e3%81%88%e3%82%8b%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91%e3%80%8c%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%aa%e3%82%a2%e3%82%a2

 

今日はその以前に書いたものからもうちょっと踏み込んだ申請時の注意点についていくつか書いていこうと思います。

 

まず、このキャリアアップ助成金の正社員化コースというのは、有期雇用契約だったり、パート・アルバイトなどの非正規雇用の人材を正規雇用化すると受給できるものです。

この助成金は今、もっとも旬な助成金と言えます。まだ活用されていない事業主さんは、是非、活用してみてください。要件に該当しさえすれば、比較的難しくなく受給できる助成金です。私の関与先でも、一社で2回も3回も申請して受給している会社は数多くあります。

今までもいくつものキャリアアップ助成金の受給のお手伝いをしてきたわけですが、数多くやってきた受給手続きを通して、実務上気を付けるべきポイントは何か、いくつかの論点について書いていこうと思います。

 

・有期雇用契約の期間は6か月以上ないといけない

正規雇用化すると受給できるのがこの助成金ですが、その非正規雇用の期間は6か月以上ないとといけません。逆にいえば、正規雇用化する前に6か月以上の有期雇用契約にすれば受給の対象になるということです。よくあるのは試用期間3か月で正社員化するというようなものです。6か月以上でないと対象になりませんから、これではキャリアアップ助成金の対象にはなりません。試用期間というのを6か月以上の有期雇用契約にしないといけないわけです。

先日、社労士会の助成金の研修で、ハローワークの職員がこんなことをおっしゃっていました。

「実際、このキャリアアップ助成金を意識して、最初は6か月以上の有期雇用契約にして、その後正規雇用化するという形で採用する企業様が多いのは事実です。ハローワークとしては、あくまでも当初から正社員雇用という形にしていただくよう、各企業様にはお願いしているところですが、実際のところ、有期雇用契約から正社員になるという形で人材採用が進んでいる現状を踏まえ、黙認しているといったところです。」

企業側としては、新規に雇用するのであれば、まずは6か月以上の有期雇用契約にする。これだけで、キャリアアップ助成金の受給につながります。ハローワークとしては、最初は非正規での採用になるわけですから好ましいとは言えないでしょうが、その後正社員化につながっていくのであればこの状況は仕方ないと受け止めているといyったところです。

 

・社会保険の加入をしないといけない

今までのご相談の中で、キャリアアップ助成金の受給をする以前に、社会保険に加入していない法人からのご相談というのが実に多い現状があります。法人の場合、社長1人の会社でも社会保険に加入しないといけません。ところが、そもそも社会保険自体に会社が入っていないわけです。

「雇用保険に入っていれば助成金は受給できるんだろう」と思っている社長さんが実に多いのですが、雇用保険に入っていても社会保険に入っていないと対象になりません。特にこのキャリアアップ助成金はそうです。

また、会社自体が社会保険に入っていても、少なくとも対象となる従業員さんが正社員化した以降は社会保険に加入していないと受給の対象にはなりません。有期雇用契約の期間であっても、常勤者の4分の3以上の時間を常時働いているのであれば、社会保険に加入していないといけません。

このように、会社自体が社会保険に加入していないとか、キャリアアップ助成金の対象となる従業員の労働時間が長く、本来、社会保険に加入していないといけない時間数働いているのに社会保険に加入していない状態だと助成金の受給ができません。社会保険にきちんと加入していることが重要な条件になっているわけです。

ただ、個人事業で従業員数が5名以下のサービス業などの場合、法律上、社会保険の加入義務はありません。このような事業所では、仮に社会保険に入っていなくてもキャリアアップ助成金の受給対象にはなります。

 

・正社員化する規定を就業規則に設けないといけない

就業規則に正社員転換の規定がないといけません。これはそんなに難しい話ではありません。たとえば、「6か月以上の有期雇用契約の社員は、本人からの申し出と上長の推薦によって、正規雇用に転換する試験を受け、それに合格した場合には、正規雇用に転換することがある」といった規定を作ればいいだけです。

この際の注意点は、転換時期です。たとえば、「転換時期は4月1日とする」と就業規則に書いてしまうと、それ以外の時期の正規雇用への転換があった場合、助成金の受給の対象外になってしまいます。

そのため、「正規雇用への転換の時期は、随時とする」としておけば、いつ正規雇用に転換しても助成金の受給対象になります。ほんのちょっとしたことですが、注意が必要です。

また、従業員数が10名以下の場合、本来は就業規則の届け出義務はありません。ですが、就業規則の届け出をして、労働基準監督署の受領印のある就業規則を出したほうが話が早いです。仮に、従業員の数が10名以下で、就業規則の届け出義務のない会社の場合、従業員全員が就業規則について同意しているという書類を提出する必要があります。少し書類が煩雑になるため、従業員数10名以下の事業所についても、就業規則を出してしまったほうが手続きは楽になります。

 

とりあえず、今日は3つの注意点を書きました。引き続き、次回も「キャリアアップ助成金」の受給のための注意点について書いていこうと思います。



少しブログの更新が空いてしまいました。前回に引き続き、中小企業の退職金制度ということで、今日は特定退職金共済制度について書いていこうと思います。

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この特定退職金共済制度(特退共と略すことが多いので、特退共と書いていきます)ですが、よく中小企業退職金共済制度(中退共と略すことが多いので、中退共と書いていきます)と制度が似ているので、比較して言われることが多いです。

この二つの制度は、特に特退共を考える場合、中退共と比較してみるとよく理解できます。ですので、この二つの制度を比較しながら理解していきましょう。

 

まず加入の要件です。

中退共では、中小企業に限られています。資本金や従業員の数がある一定水準以下になっている中小企業でないと加入できません。

一方で、特退共は基本的に資本金や従業員数に制限はありません。したがって、資本金の大きい会社や従業員数の大きい会社でも加入できるのが特退共です

また、掛け金の金額にも違いがあります。

中退共は月額掛け金5,000円~30,000円で定められている金額で選びます。一方で、特退共は掛け金が1,000円~30,000円で1,000円単位で選択できます。中退共よりも細かいわけです。

さらに、違いという意味で言えば、運営主体が違います。

中退共は独立行政法人勤労者退職金共済機構であるのに対し、特退共は一般の生命保険会社などです。

また、中退共は事業所が加入した最初の1年間は掛け金の助成があるのに対して、特退共には掛け金の助成がありません。これは、特退共の運用主体が一般の生命保険会社であるのに対して、中退共は独立行政法人であることと関係していることです。

 

逆に、同じ点も多くあります。

掛け金の支払いを企業がして、退職したら従業員本人に直接、退職金が支払われる点や会社が支払った金額の全額が損金に算入できる点等はおなじです。

 

さて、では、中退共と特退共の違いを踏まえて、どちらをどう活用したらいいのかという点です。

 

実際に、従業員に支払われる退職金の金額という点では中退共にやや分があります。これは運用主体が中退共が独立行政法人なのに対して、特退共は民間である点との関連でしょう。退職金の金額はやや中退共の方が多くなっています。

また、掛け金が特退共が1,000円から加入できる点も大きな相違点です。中退共も短時間労働者の場合、2,000円から加入が可能にはなりましたが、より細かい設定ができるのが特退共の大きな特徴です。

 

そうした点を踏まえると、私はこのように使い分けしたらどうかと思います。

 

まずは加入の検討をするのは中退共。資本金の額や従業員数で加入できないのであれば特退共に加入する。

・パートやアルバイトに退職金制度を考えるのであれば特退共

・正社員の場合には、まずは中退共。中退共の上乗せとして特退共を活用することを検討する

 

こんな感じでしょうか。

中退共は掛け金の助成があったりして、やはり特退共よりもやや有利と言えます。また、今は予算がいっぱいで新規の受付はしていませんが、キャリアアップ助成金の上乗せ支給の東京都の正規雇用転換促進助成金という助成金では、中退共に加入しているとさらに上乗せして助成金が支給されるといった特典があったりもします。いろいろな意味で、国などの公のバックアップがあるのが中退共です。そういった制度を利用しない手はないです。その意味でもまずは中退共の加入を検討するべきでしょう。

特退共の検討は、中退共の加入ができないときや、パート・アルバイトなど、退職金の支給と言っても少額になるようなケース、あとは中退共では退職金が少ない場合などだと思います。

 

特退共を中退共との比較で考えるという今回のブログですが、退職金制度の整備の際の参考にしてみてくださいね。



さて、今日は前回に引き続き、従業員の退職金制度についてです。

一般の保険会社の保険を利用した退職金制度について、考えてみましょう。

中小企業の退職金制度として、一番多く採用されているのは「中小企業退職金共済」です。これは前回のブログでも書きました。

次に中小企業が採用することが多いのがこの生命保険を利用した退職金制度ではないかと思います。では、中身はどんなものなのでしょうか?

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この一般の保険会社の生命保険を使って従業員の退職金を準備するというこの保険を「福利厚生型養老保険」と呼んだりします。

この取り扱いは法人税基本通達9-3-4というところに書かれています。要約すると次のような内容です。

 

契約者が法人、被保険者が役員または従業員となっている生命保険の場合、次のように経理処理することとします。

  1. 死亡保険金や生存保険金の受取人が法人である場合には、支払額は全額、資産計上
  2. 死亡保険金や生存保険金の受取人が役員または従業員である場合には、支払額は役員または従業員に支払った給与
  3. 死亡保険金の受取人が従業員の遺族、生存保険金の受取人は法人の場合には、支払額の2分の1は損金

 

お分かりになりますか?

この「福利厚生型養老保険」という従業員退職金制度を使う場合のポイントは、上記の基本通達の3番にしないと意味がないわけです。1番だと、そもそも会社としては支払った保険料を損金にできないため、節税が図れません。2番だと従業員さんに所得税や住民税が課税されてしまいます。3番の形にしないといけないわけです。

つまり、契約者(つまり保険料を支払う人)は法人にしておいて、その上で、死亡保険金は従業員の遺族、生存保険金の受取人は法人という契約内容にすると、支払った保険料の2分の1が損金となり、法人としては節税にもつながるわけです。

 

「これは、従業員の退職金制度の話だったよね?」と思われた方。その通りです。この保険は従業員の退職金制度の一環として保険を使うというものなんです。つまり、この保険は、従業員が死亡した場合には、死亡退職金として従業員の遺族に直接、支払われます。遺族は死亡退職金として受け取るわけです。一方で、生存していて従業員が退職した場合(こちらの方が圧倒的に多いでしょうが)には、その従業員に相当する保険を解約します。すると、そのお金はいったん会社に入ります。会社はそれを原資にしてその退職する従業員に退職金を支払うわけです。

 

会社としては、支払った保険料の2分の1を損金計上して、節税を図りつつ、従業員の退職金原資を保険で作るというのがこの「福利厚生型養老保険」なわけです。

なかなか良く考えられていると思いませんか?

 

さて、ではどんな注意点があるのでしょうか。

次の4点が注意点です。

  1. 加入目的が「役員または従業員の退職金の準備などの福利厚生目的である」こと
  2. 加入に際しては、全員が公平に加入することが必要。一部の従業員だけ除外するなどすると2分の1損金として経理処理できなくなる
  3. 被保険者である役員または従業員自身の同意がないと加入できない(会社が勝手にその役員や従業員の名義で加入することは出来ない)
  4. 加入者の大部分が同族関係者である場合には、支払った保険料の2分の1は「給与」となり、所得税や住民税が課税される

 

特に特徴的なのは2番でしょう。従業員が全員、加入する形を取らないといけないわけです

 

また、この生命保険を使った従業員の退職金制度が選ばれるのは、生存した場合の生存保険金はいったん会社に入るという点です。いったん会社にお金が入金されるため、たとえば問題があって辞めた従業員の場合には、その従業員には退職金を支払わないとすることもできます。支払うか支払わないかは最終的には会社が判断できるからです。この点は中小企業退職金共済とよく比較される点です。中退共では、機構から従業員に直接、退職金の支払いがされるため、退職理由のいかんにかかわらず本人に退職金の支払いがされてしまいます。その点が中退共のデメリットなわけです。生命保険を使った退職金制度ではそのデメリットをカバーできます。

 

また、この生命保険を使った退職金制度は、役員も加入できる点が特徴的です。中小企業退職金共済は基本的には役員は加入できないという点とも対照的と言えます。

 

加えていえば、解約返戻金の8割とか9割とかでお金を貸しつけてもらえる制度もあります。この点なんかも中退共にはないものです。

 

いくつかのデメリット(従業員全員を被保険者にしないといけない点など)といくつかメリット(支払うか支払わないかは会社が選択できる点など)がそれぞれあります。これらを比較して、退職金制度として、この「福利厚生型養老保険」について検討してみてはいかがでしょうか。



今日は前回に引き続き、退職金規定の話です。

中小企業の退職金規定はどのようなものを作ったらいいのでしょうか?

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中小企業の場合、退職金規定は、企業の外部にお金を出す形と、自社で運用する形に大別されます。では、外部に運用するものにはどのようなものがあるのでしょうか。

 

  1. 中小企業退職金共済
  2. 特定退職金共済制度
  3. 厚生年金基金
  4. 確定給付型企業年金制度
  5. 確定拠出型企業年金制度(401K)
  6. 生命保険

 

こんなところがあがるでしょう。

 

今日は、まずは順番にこれらの制度の概略を掴んでおきましょう。

1.中小企業退職金共済(中退共)

 

この制度は中小企業の退職金制度に多く導入されている制度です。

特徴はとてもわかりやすいことです。

月額5,000円から30,000円の範囲で企業が掛け金を全額負担します。払った掛け金は全額損金(個人事業は必要経費)となります。

企業にとっては運用責任がないというのがもっとも大きな特徴です。掛け金を支払えば企業側の退職金の準備の必要はありません。

ただ、この制度の弱点は、従業員の退職事由にかかわらず本人に退職金が支払われる点です。従業員側に問題があって退職した(解雇した)場合であっても、原則として中退共から本人に支払われます。

この点を嫌がって中退共の加入を躊躇される社長さんが多いのも事実です。

私は、この点があるので、たとえば入社3年目以降の社員について加入させるなどしたらどうかと提案しています。一般的には、入社年数が短い(1年とか2年未満)社員に問題が起こるケースが多いためです。完全には防げませんが、これである程度、問題のある社員に対する退職金の支払いという問題点が解消されるのではないかと思います。

もう少し詳しいことをお知りになりたい方は、私の以前のブログを読んでみてください。↴

中退共(中小企業退職金共済制度)を使って退職金制度を整備しよう!

2.特定退職金共済制度(特退共)

この制度は中退共に似ているため、よく比較されます。

違うのは、この制度を運用しているのは民間の生命保険会社である点です。中退共は運用主体が独立行政法人勤労者退職金共済機構という国に近い組織であるのと比較される点です。

また、掛け金は1,000円から30,000円となっていて、中退共よりも細かく設定できます

細かい点に違いがあるとはいえ、似た制度と言えます。

特退共の利用の仕方として、中退共だけだと退職金の額が少ないので、上乗せという意味合いで特退共も加入するというケースが多いです。

3.厚生年金基金

意味合いとしては厚生年金の上乗せです。俗に、1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金というのに対して、厚生年金基金は3階部分などと呼ばれます。ただ、厚生年金基金自体が整理統合されていることや、2024年4月1日までに厚生年金基金自体が廃止されることになっていることなどから、現状でこの制度を選択する中小企業は大変少数派です。

現在、厚生年金基金を採用している中小企業は古くから厚生年金基金をやっている企業が継続してやっているというようなケースが多いと思います。

 

4.確定給付年金制度

これは、中小企業側自身が退職金の支払い義務を負うため、企業自身が退職金のお金を運用するというものです。昔はこれが主流でしたが、今、この制度をあえて選択している中小企業は大変少数派です。これから退職金制度を整備する中小企業の多くは中退共や特退共を導入して、企業自身が退職金の支払い義務を負うことを選択しなくなっています。それでも確定給付年金を選択する中小企業は古くから退職金規定があってその規定が退職給付金規定になっているようなケースでしょう。

 

5.確定拠出年金制度(401K)

 

この制度については、以前の私のブログで要点だけ紹介しました。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e7%a2%ba%e5%ae%9a%e6%8b%a0%e5%87%ba%e5%b9%b4%e9%87%91%e3%81%a3%e3%81%a6%e4%bd%95%e3%81%8b%ef%bc%9f%e5%9f%ba%e6%9c%ac%e7%9a%84%e3%81%aa%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%a0%e3%81%91%e3%82%92%e7%9f%a5%e3%81%a3

 

詳しくはこのブログを読んでほしいのですが、要するに企業側は運用義務を負わず、企業は掛け金の支払いをしたら運用は、原則従業員本人がやるというものです。

中小企業での退職金制度としては中退共や特退共についで多いものになります。

 

6.生命保険

 

退職金制度としては、一般の生命保険会社を使った制度です。

 

一般の生命保険会社にある「福利厚生型養老保険」と呼ばれるもので、特徴は中退共や特退共と違い、いったん会社に入金されてから本人に退職金を支払う形のため、退職理由の如何によって支払われるということはありません。また、一部解約や全部解約について、従業員本人の同意は原則、不要です。会社の資金繰りの都合でいつでも資金化できる点は特徴的です。

 

あとは、通常、この「福利厚生型養老保険」は支払額の2分の1が損金(個人事業は必要経費)になります。ただ、従業員全員を対象者にしないと2分の1損金にならないという点も特徴的です

この生命保険を使った従業員の退職金制度については、また後日、詳しく書いていこうと思います。

 

いずれにしても、退職金制度を設けるということはこれらの制度を使う、あるいは複数の組み合わせで制度設計していくことになると思います。自社にとってどの制度がふさわしいのか。まずは、上記のような概略を知ったうえで、選択していくことが必要だろうと思います。