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Category Archives: 税務関連

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お笑いコンビのチュートリアルの徳井義美さんが設立した会社が所得隠しをしていたとして7年間で1億2000万円の所得隠しを指摘されたという報道がされました。

2012年から2015年までの4年間で個人的な旅行や洋服代、アクセサリー代などを会社の経費として計上していたのですが、国税局側はこれを経費として認めず、約2000万円の所得隠しを指摘したということです。 また、2016年から2018年までの3年間は収入を全く申告しておらず、徳井さんに対し約1億円の申告漏れを指摘したということです。

重加算税等を含めた追徴税額はあわせて約3400万円にのぼるという話です。 徳井さんはすでに納税と修正申告を済ませているらしいです。

この話は芸能人なだけに大きな報道がされています。 芸能人などの著名人は税金逃れという問題で済む話ではなく、たとえばスポンサー契約をしている相手に対しての損害賠償請求など、話が大事になります。これらを徳井さん自身はどの程度、自覚していたのか、そもそも全く申告していなかった点からすると、申告漏れということに対してどの程度、認識があったのが疑問ではあります。 通常の税務調査を受けたことのある方はお分かりになるとは思いますが、通常は税務調査で調べられるのは過去3年分です。それを7年もさかのぼったわけです。国税庁からするとよほど「悪質」であると判断されたのでしょう。

怖いのは、修正申告によって発生する税金だけではないことです。これに伴って取引を中止することになったりという影響があるということです。特に、徳井さんの場合、芸能人です。イメージとか社会的影響とかを考えると影響は甚大です。徳井さん自身も記者会見を開き、謝罪しています。これは影響が大きく及ばないように配慮しているのでしょう。

もう一つよくわからない点があります。このような事態になったのは私は顧問税理士がいないのかと思っていました。ですが、どうやら税理士はついていたようです。通常、法人組織にしているのであれば税理士がついているのは当然です。よくわからないのは税理士がついているにもかかわらず7年もさかのぼって修正申告したうえ、重加算税の対象になったという点です。しかも、報道によれば、申告漏れというか、直近3年間は申告自体していなかったということです。どういう事情かは不明ですが、税理士がついていながら申告もせず、こうした事態になってしまうのは釈然としない感じはします。

ということで、今日は徳井さんの話で終わってしまいましたが、次回は、修正申告に伴って発生する「加算税」の話をしていきたいと思います。



さて、今日はよくある質問です。個人事業をやっている方で、ご自宅の電話代や携帯電話代などの経費はどこまで認められるのでしょうか?

こうした質問は主に個人事業主の方から受けることが多いです。結論が聞きたいのでズバリ「自宅の電話代は何%だったら大丈夫」といった聞かれ方をすることもあります。 ですが、税務署側にも判断する際の基準があります。今日は実際の裁判例を引き合いに、税務署はどういう基準でどう判断しているのか、という話をしていきたいと思います。

その前に、基本的な部分の話からです。 支出のうちに生活費の部分が含まれているものを「家事費」とか「家事関連費」といった呼び方をします。 「家事費」というのは必要経費には算入できない生活費です。自宅の家賃や毎日の食費などが「家事費」です。「家事費」はどう頑張っても、必要経費には算入できないものです。 これに対して、「家事関連費」というのは、生活費の部分と事業に関連する部分が混ざっているものです。これは、一部が必要経費に算入できます。 この「家事関連費」に関して、国税庁のHPには次のように書かれていますので、以下にそのまま引用します。

個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。  

(例)交際費、接待費、地代、家賃、水道光熱費  

この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

「家事関連費」については、生活費の部分と業務の部分とで明確に分けられれば必要経費にしていいと言っているわけです。 さて、これを前提にしてある裁判例を見ていきましょう。 この裁判例は、夫が妻と共同で保険代理店をやっていたというケースです。問題になったのは次のような経費です。

・自宅の家賃

・自宅の水道光熱費

・長男の義務教育にかかる費用

・長男に係る弁護士費用

・仕事用品の雑費とする一部費用

裁判では、まず、前提として、家事関連費のうち必要経費と認められるのは ①業務の遂行上必要であること ②その必要な部分が明確に区分されていること この二点である

と、改めて確認したうえで、上記の費用を次のように判断しています。

・自宅の家賃

「『1階部分の利用実績表』と題する手帳によれば、妻と共同で、顧客を招いてセミナー等を開催していたことが認められる。しかし、居住の用に供されるのは3LDKの2階建て住宅全体であり、居住用部分と事業用部分を明確に区分できる状態にないことは明らかである。そのため、必要経費にならない」

・自宅の水道光熱費

「本件住宅のうち、本件住宅のうち各業務のために使用されるいわば専用スペースとして使用されていた部分はなく、リビング等が各業務に使用されていた実態も明らかでないことから、必要経費に算入することはできない」 ・長男の義務教育にかかる費用 「長男は、PTSDに罹患していると診断されていることが認められ、小学校に通学することができなかった期間があることが推認されるものの、これらの事実関係のみからは、義務教育代行費用(教育費用)と各業務との関連性が明らかではない。原告は、教育費用を支払わなければ原告は売上げを確保することができなかった旨主張するが、教育費用の支出について客観的な必要性を根拠付けるものとはいえない。」

・長男に係る弁護士費用

「一般に、事業を行う者が、事業所得による収益の補填を目的として、事業所得の減少分に係る損害賠償請求訴訟を提起することを弁護士に依頼した場合には、その費用は、総収入金額を得るために直接要した費用ということができるから、その金額は必要経費に算入することができるというべきである。 本件弁護士費用(原告の長男が小学校の担任教師から暴力を受けたことに関してD市教育委員会を訴えるために弁護士に支出した費用)は、長男の訴訟にかかわることで、各業務に係る売上げの減少による損害賠償を求める訴訟を提起すること及びそのための事前交渉を弁護士に委任した際の着手金であり、原告と妻は、各業務に関する必要経費を原告名義及び妻名義で支払っていることから、本件弁護士費用の2分の1に相当する金額については、原告の必要経費と認めるのが相当である。」

・仕事用品の雑費とする一部費用

「 本件雑費で購入した服飾品等は、各業務の遂行上、客観的に必要であるとは認め難く、本件雑費を必要経費に算入することはできない。」

この裁判例からわかるのは、まず、 自宅家賃や水道光熱費を家事関連費として経費に計上するには「その必要な部分が明確に区分されていること」が大事である ということです。たとえば、自宅の家賃の一部を経費に計上したいのであれば、どの部屋が仕事部屋なのか、その部屋は全体の㎡数のうちの何㎡なのか、というのを明確にしないとダメだということです。 水道光熱費についても、業務で使っている部屋が特定されて業務上の使用割合がはっきりわからないから「家事関連費」で必要経費になる要件を満たしていないと言っているわけで、逆にいえば、明確に区別できるのであれば必要経費にできると解釈できるでしょう。 水道光熱費を家事関連費として経費に計上するにしても、どの部屋が業務で使っている部屋なのかをまずは特定することが大事なわけです。 弁護士費用についても、一見、長男に係る弁護士費用なので経費とは関係なさそうではあるのですが、収入が減ったために提起した損害賠償訴訟は「収入を得るために直接要した費用」であるとして必要経費にしていいと判断されています。この部分の解釈も注目点です。 また、必要経費にしていいのは2分の1としたのも面白い点です。「原告と妻で弁護士費用を払っている」ので、夫の方を必要経費に算入したと考えているのか、それとも、夫と妻で支出した全体の金額の約半分が事業にかかわりがあると判断したのかは判然としません。 (おそらく夫と妻で弁護士費用を支払っているので、夫の方は事業にかかわりがあると考えて2分の1と判断したのではないかと思いますが) ですが、「収入が減った原因になった事実」とかかわりがあると判断されれば必要経費にできると判断されている点は注目点です。

最後に、服飾品は業務との関連性が少ないとみて必要経費とみなされなかったという点も付け加えてみておきましょう。

いずれにしても共通して言えるのは、「業務に関連がある」というだけでは経費計上できないということです。特に「家事関連費」になる場合には、どの部分が業務でどの部分が業務でないのか、というのが「明確に区分」されていることが重要だという点をよく理解しておきましょう。

ということで、今日は「家事関連費」のお話でした。



関西電力の役員が高浜原発のある高浜市の元助役から金品を受け取っていたことが大きく報じられています。この金品の授受が発覚したきっかけになったのが税務調査でした。地元の建設会社の吉田開発に税務調査が入り、この元助役に対して原発工事を受注した見返りに約3億円の金品を渡していることが判明したということが発端のようです。今問題になっているのは、その約3億円のうちの一部が関西電力の役員に渡っていたということなわけです。

こうした行為は、贈収賄といった違法行為である疑いがあります。ですが、今日のブログで問題にしたいのは、こうした関電の役員の違法行為の話ではなく、このような違法な行為であってももらったお金は収入に計上する必要があるという点です。現に、関電の元役員らは、もらった金品の一部は収入であったとして修正申告をしています。これらは税務署から修正申告の指摘を受けて修正申告をしたのか、吉田開発の税務調査を受けて自主的に修正申告したのかは不明ですが、要するに「違法であっても収入は収入だから申告していなければ課税する」という税務署の基本スタンスにしたがっているわけです。

平成30年12月にあった国税不服審判所の採決でこういうものがあります。

ある給与所得者が会社が製品として作っていた紙の損紙を会社に無断で売却して個人の所得にしていたという事案で、採決では国税不服審判所はこれを雑所得として課税したというものです。 非公開裁決であるため、詳しいことは分からない部分があるのですが、おそらく紙を製造していた会社で働いていた社員が、作る過程で出た損紙を会社に無断で売却して得た所得が課税されたという話です。 給与所得者側の主張としては、会社に損害を与えたことを認めたうえで、会社に対して損害賠償金を支払うので、所得を受け取ったとしても損害賠償金は必要経費になるため、結局、税金は課税されないと主張しました。また、これは不法行為であって反復継続して得る所得ではない(つまり、消費税は課税されない)と主張しました。ですが、国税不服審判所はこうした給与所得者側の主張を全面的に認めませんでした。

この国税不服審判所の採決に特徴的なものが二つあります。 一つは、収入は反復継続していたものであり、たとえ不法行為であったとはいっても収入であったと認められ、また、不法行為であったということは事業としては認定されず、雑所得としての課税となるということ。 もう一つは、会社に対して損害を与えていてその損害賠償金を支払ったわけですが、それは不法行為に基づく損害賠償金であるため必要経費とは認められないと判断されたことです。 結果として、損害賠償金の支払いをし、その上、税金は課されてその上、重加算税も付加されたことを考えると、この給与所得者はもらった収入以上にかなりの負担を強いられたわけです。不法行為をしたツケはかなり高くついたわけですが、不法行為であっても税金は課税するという税務署側の姿勢がよくわかる裁決令と言えます。

ちなみに、この事案は会社に無断で売却して収入を得ていた期間が11年に及んでいたこと、また、合計で2億4500万円にも及ぶ売却収入を得ていたことなど、期間も長く、規模も大きかったため、かなり悪質なケースと言えます。ですが、ここまで悪質でないにしても、所得があるのに申告していないということは一般的にもよくある話です。

では、ここでもう一つ説明していきたいのが、違法でない所得であっても申告しなくてもいい所得もあるという話です。年金所得者やサラリーマンが得た収入は申告しなくてもいいものもあるというものです。

まず、年金所得者の場合、年金の収入金額が年間400万円以下で、なおかつ、年金以外の所得(雑所得や給与所得など)が20万円の場合、その年金以外の所得については申告しなくてもいいことになっています。また、給与所得者も給与の収入金額が年間2000万円以下で、なおかつ、給与や退職以外の所得が20万円以下の人は申告しなくてもいいことになっています。 申告しなくてもいいということなので、もちろん、申告してもいいわけです。赤字なので申告したほうが税金の戻りが大きいなどの理由で申告する場合もあると思います。あるいは、事業所得者で赤字であったりする場合に申告して税金を還付する場合もあると思います。このように、申告してもいいわけですが、年金所得者や給与所得者はそれ以外の所得が20万円以下だったら申告しなくてもいいという話です。

ただし、この申告しなくてもいいという話は所得税の話です。住民税については年金所得者や給与所得者がそれら以外の所得が20万円以下であっても申告しないといけません。その点は注意が必要です。結局、収入がいくらかでもあれば、なんらかの申告は必要になってくることになっているという点は覚えておきましょう。

少し話がそれましたが、今日の話のメインは、違法であっても収入は収入で税金は課されるという話です。「これくらい申告していなくてもわからないよね」という判断は禁物です。違法であっても関電のケースのように、相手方の税務調査で判明して結局あとから申告することもあります。違法か合法かというのは税金の計算上、収入に計上する際には考慮しないわけです。また、合法なものであっても給与や年金以外の収入が20万円以下のものは結局、住民税の方の申告は必要だったりします。そうすると、収入があったら何らかの申告が必要ではないのかと考えることが必要だと認識しておいた方がいいと思います。

ということで、違法であっても収入があれば申告は必要という話でした。



10月1日から消費税の税率が上がったり、最低賃金が上がったり、他にも様々な改正があります。今日はそのうち、消費税率の改正前後で日付がまたぐ取引について、書いていこうと思います。

消費税は商品などのモノの引き渡しについて、「引き渡しのあった日」で取引があったものとしています。現物のモノがあって引き渡し場合は分かりやすいわけですが、たとえば通信販売などで、商品の購入の申し込みがあってから商品の引き渡しまで日にちがあるような場合、8%の消費税率なのか、10%の消費税率なのか、という問題が生じてきます。

具体例で考えてみましょう。

通信販売で購入の申し込みをインターネットでする・・・9/29

商品の発送・・・9/30

商品の到着・・・10/2

問題となるのは消費税法でいう「引き渡しのあった日」というのが三つのうちのどの日付になるのかということです。申し込みをした時点や発送した時点であれば9月中の取引になるので、消費税率は8%です。一方で、商品が到着した時点で商品の引き渡しがあったとすれば、10月になっているので、消費税率は10%となります。 結論としてはこれは買い手側ではなく、売り手側の経理処理によることになっています。つまり、売り手側の業者が発送日に売り上げ計上している(発送基準といいます)のであれば、消費税は8%になりますし、商品が到着した日で売り上げ計上している(着荷基準といいます)のであれば、10%になるということです。

消費税法では、どの時点で消費税を認識するのかは売り手の事業者に任せています。売り手側が「発送基準」にするのか、「着荷基準」にするのか、どちらにするのかを選んで、買い手側はその経理処理に従うというルールになっています。

なぜこうなるのかといいますと、消費税という税法の仕組みが間接税という方法によっているためです。消費税はAさんがBさんに100円で売った商品にかかる消費税があったとして、そのBさんがさらにCさんという最終消費者に売った場合、BさんはさらにCさんに消費税を転嫁させます。最終消費者のCさんが最終的に負担する形になる、これが消費税の基本形です。売った側が買った側に転嫁していくという仕組みになっているため、売った側の消費税の経理処理方法によるという、そもそういう仕組みの税金だからなんです。

ただ、相手側が「発送基準」なのか「着荷基準」なのかはそうすればわかるのでしょうか?もっといえば、先ほどの例のように、9月30日と10月1日をまたぐ取引があった場合、8%なのか10%なのかはどうすれば判断できるのでしょうか? これは売り手側の請求書や領収書などにその消費税率を明記するルールになっています。売り手側の発行する請求書などをみれば消費税が8%なのか10%なのか書いてあります。その書類を見て判断するわけです。

また、売り手側が税込経理処理をしていて、消費税の金額を明記していない場合は「発送基準」か「着荷基準」かはわかりません。こうした場合には、どうすればいいのでしょうか?こうした場合、原則的には相手側にどちらの経理処理かを確認するのことになっています。しかし、いちいちすべての取引について相手側に確認することは出来ない場合もあると思います。そうした場合には、買い手側が通常、やっている会計処理によっていいことになっています。どうしても売り手側の処理がわからないという最終的な場面で、自社の経理処理に従うことになるわけなんです。

それから、消費税の負担を少しでも少なくしようとして、たとえば普段は「着荷基準」で処理している会社が、9月30日と10月1日をまたぐ取引だけ「発送基準」によるようなことはできません。通常の会計処理がどちらかで判断しないといけませんからその点も留意しましょう。

ということで、今日は9月30日と10月1日をまたぐ取引についての消費税の話でした。




いよいよ10月1日から消費税の税率が10%にあがります。また、日本で初めて複数税率が導入されます。食料品や新聞などの購入は軽減税率8%となり、通常の税率の10%とが混在することになります。マスコミでも連日、こういうケースでは8%でこういうケースでは10%になると報道されています。8%と10%の違いのところにフォーカスがいっている感があります。ある程度、こうした一種の騒ぎになると予想はしていましたが、今日の本ブログではそうした方向の話ではなく、8%・10%となった時の経理処理をどうしたらいいのかという話にフォーカスを置いてみようと思います。

このブログは経営者や総務経理担当者向けのブログです。その意味からも、その経営者や総務経理担当者の視点から、今日は10月1日に税率が上がり、複数税率になることに伴い、事前にどのような対策をしておいたらいいのかを書いていこうと思います。

 

まず、その前に基礎知識を確認したいと思います。

現行の税率は8%です。実はこの8%というのは二つに分かれます。国税部分の6.3%、地方税部分の1.7%と分かれるんです。実際に消費税の申告書を作ったことがあればわかるのですが、消費税の計算というのは国の税収となる部分の6.3%を計算してから、地方に配分される分は国税の金額を元にして計算を出しています。いずれにしても、国と地方でそれぞれの配分があるわけです。

 

では、新しく導入される消費税の10%はどのように配分されるかと言いますと、国が7.8%で地方が2.2%になります。おおむね6.3%と1.7%の比率に近い形になっているわけです。ややこしいのは軽減税率の国税と地方税の配分比率は今現在の税率8%と配分比率が少しだけ違います。軽減税率の国と地方の配分はそれぞれ国が6.24%、地方が1.76%となっています。ほんのわずかですが配分比率が違うわけなんです。

どうでもいい話という感じがするかもしれませんが、実はこのことは経理処理にも影響します。その意味でどうでもいいわけでもないんです。国と地方の配分比率が違うために、きちんと区分しないと計算結果が変わってしまうためです。結果的に支払う税金は現状の8%と軽減税率の8%は同じなわけですが、中身が違うために、消費税の税額を計算する際には分けないと税金の計算ができないということになるわけです。経理処理上も同じ8%でも「9月30日までの現状税率の8%」と「軽減税率の8%」をわけないといけないわけです。

 

結果、経理処理する際に経費を「10%」のものと「現状の8%」のものと「軽減税率の8%」のもの、というように3つに分けないといけなくなったわけです。

前回、消費税が5%から8%にあがった際の経験があるので、覚えている方も多いと思いますが、経理処理上、しばらくは現状の8%も出てきます。つまり、現状の8%なのか、軽減税率の8%なのか、同じ8%も分けて経理処理する、というなんだか面倒な話になっているわけです。

たとえば、電気代などは支払いが10月のものであっても、検針日が9月にかかっている場合には8%になります。逆に、家賃などは10月分を9月末に支払うケースが多いと思います。これは9月に支払っていても10%になります。すでに8%、10%が混在しています。これに加えて、軽減税率の8%も分けて経理処理しないといけないわけです。

 

さて、実際、このように3つの税率があるわけですが、どのように経理処理していったらいいのでしょうか?軽減税率の8%ということを帳簿上に明記しないといけないということになっています。経理処理はなるべく簡単にやったほうがいいです。今の経理処理に少しプラスするだけでいいと私は考えています。

 

具体的には、帳簿に記載する際に軽減税率の8%のものには「軽減」とか「ケ」とか何かしるしをつけるようにすればそれでいいようです。領収書等から、軽減税率の8%はきちんと明記されることになっています。ですから、経理処理の際にはそれらを見て、軽減税率の8%かどうかを判断することになります。

また、会計ソフトは「現行税率の8%」「軽減税率の8%」「10%」と分けるようにすでになっているはずです。会計ソフトに入力することで帳簿の記載としている場合には、会計ソフトの入力の仕方を確認してみてください。

 

さて、ここまでは原則的な消費税の課税方法、つまり、消費税がいわゆる「原則課税」の場合の話を書いてきました。消費税の課税方法が「簡易課税」やそもそも消費税の納税義務のない「免税事業者」の場合には、実は今までの話は関係のない話です。「簡易課税」の事業者や「免税事業者」の場合、そもそも今説明してきたような帳簿上、「現状の8%」「軽減税率の8%」「10%」と分ける必要はありません。

免税事業者の場合には、消費税がかからない事業者だからわけなくていいわけです。簡易課税の事業者の場合は、売上に対して一定の率を掛けて消費税を求めます。支払った経費がどうであれ、関係ないわけです。これらの事業者では上記のような3つに分ける会計処理はしなくてもいいことになります。要するに、経理処理としては今まで通りでいいわけです。

 

ここまで書いてきたものは主に経費についての経理処理です。売上について軽減税率の8%がある事業者については、売上を8%と10%に分けないといけないという問題がもちろんあるわけです。レジシステムをそれに対応するようにするとかといった問題があります。今回はそれらの問題は考えずに、主に経費における経理処理についての話を書いていきました。

 

報道で盛んに言われているように、消費税の税率変更に伴う話はどうしても8%と10%とで損得があるという話になりがちです。中小企業の経理処理という話に立ち返った時には、少し地味かもしれませんが、経理処理についても考えておいていただけたらと思います。

今日の話を少しでも参考にしていただけたら幸いです。

 

 

 

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今日はご質問いただくことも多い「滞納」の話です。

税金や社会保険料、労働保険料を滞納するとどうなるのでしょうか?

滞納について、書いてある記事はインターネット上にも多いのですが、税金、社会保険料、労働保険料をそれぞれ並べて書かれているものはほとんどないようです。ですので、今日は税金と社会保険料、労働保険料の滞納をそれぞれ比較しながらみていきたいと思います。

滞納と言っても様々です。資金繰り上、払えなくて滞納する場合もあれば、単純に納付するのを忘れていたということもあります。場合によっては、わざと払わずにいてなんとか払わないで済ませられないかと考えるような悪質なケースもあります。それぞれ納付期限がありますから、支払いが期限を遅れれば利息にあたる「延滞税(金)」が生じます。これは理由がどうであれ同じです。ですが、少し、計算の仕方が違います。簡単にいえば、支払うのを単純に忘れていたというような場合には、少し寛容です。気づいた時点ですぐに支払えばそれほど大きな傷にはなりません。一方で、滞納期間が長期間に及ぶような場合には、計算の仕方も厳しくなります。

 

では、どのような計算の仕方になっているのでしょうか?

実は、延滞税(金)の計算の仕方自体は、税金・社会保険料・労働保険料はともに共通しています

 

原則;年利8.9%

ただし、納付期限から2か月以内(社会保険料の滞納の場合には3か月以内)は年利2.6%

 

労働保険料と税金の滞納の場合には納付期限から2か月以内だったら年利2.6%で、社会保険料の場合には3か月以内だったら年利2.6%です。それを過ぎると、年利8.9%です。

この利率は「特例基準割合」という率に拠るため、率については年によって変わりますから注意が必要です。

 

さて、最初の2か月ないし3か月は年利2.6%と低くなっているのはなぜでしょうか?これは、たまたま忘れてしまったというようなうっかりミスに配慮しているためです。ヒトのやることですから、たまたま納付し忘れることはあります。それに配慮しているわけです。

また、社会保険料の滞納は3か月になっています。労働保険や税金は2か月であるのに比べると少し運用が緩やかになっています。これは私の推測ですが、社会保険料の滞納は非常に件数も多いようです。金額も大きくなりがちだからです。そうした事態を考慮しているのではないかと思っています。

 

また、年利ですから、納付期限の翌日から納付の日までの期間を日割り計算します。日割り計算して100円未満になったら切り捨てになります。また、延滞金を計算する前のもとになる金額は社会保険料や労働保険料は1000円未満が切り捨てになります。一方で、税金の滞納についてはもとになる税金が10000円未満だと切り捨てになります。つまり、社会保険料や労働保険料の場合、納付していないのが千円未満だと延滞金が出ないわけですが、税金の場合には1万円に満たない場合に延滞税が発生しないことになっているわけです

 

もう一つ、違いとしては経理処理です。

延滞金や延滞税はどのように経理処理するのでしょうか?

税金の滞納の場合の「延滞税」は「租税公課」で処理します。経理上は「租税公課」ですが、損金不算入(個人の場合には必要経費不算入)です。つまり、税金の計算上は落とすことができないわけです。一方で、社会保険や労働保険の滞納の「延滞金」は損金算入(個人の場合には必要経費算入)できます。損金不算入とされる項目の中に社会保険料や労働保険料が入っていないため、経費に入れて税金の計算上は落とすことが出来るわけです。

勘定科目は一般的には「法定福利費」になるでしょう。「法定福利費」で経費として計上しましょう。

 

それにしても、税金、社会保険料、労働保険料と、それぞれ基本的な計算部分は同じですが、微妙に違いがあることがわかりますね。

あとは、予断的な話をいくつかしていきましょう。

まず、労働保険料の滞納をした場合の問題点は労災保険が使えなくなるケースがあるということです。労働保険を滞納中に労災事故が起こった場合、「費用徴収制度」というモノがあり、これに触れる可能性があります。労災は業務上の災害が起こった場合、原則、治療費はかからずに治療できますが、労災保険料を滞納中に労災の事故が起こると、治療費の40%かもしくは100%負担しないといけなくなるわけです。100%負担というのは、再三の労働保険料の納付の催促に応じないなどの悪質なケースですので、一般的には40%の負担が出てしまうというケースでしょう。

 

それから、労働保険料の滞納があると原則、助成金の受給ができません。助成金の支給申請の書類の中に「支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度における労働保険料の滞納がある」という項目があり、「いいえ」とチェックさせるのです。労働保険料の滞納があると助成金が受給できなくなっているわけです。助成金は労働保険料を財源にして支給されるものですから当然と言えば当然です。助成金を受給しようと思うのでしたら労働保険料はきちんと完納したほうがいいです。

 

また、税金の滞納があると、金融機関で借入する際に支障が出ることが挙げられます。金融機関で借入する場合には「納税証明書その3」というのを取るように言われることがあります。この「納税証明書その3」というのは未納の税金がないことの証明です。通常はこの未納がないことの証明は法人税・地方法人税(個人の場合には所得税)のことです。源泉所得税や消費税の未納の証明までは言われないケースが多いです。

また、最近は金融機関は社会保険料の滞納がないことの証明も求めてくることがあります

いずれにしても、税金や社会保険料の滞納があると、金融機関の借入の際に支障が出るということです。

 

最後に、いろいろな事情で資金繰り上、税金にしても社会保険料にしても労働保険料にしても、どうしても納付できないこともあると思います。その場合には、税務署や年金事務所、労働基準監督署に納付の相談に行くことをお勧めします。納付できないから無視するというのは、延滞税(金)が嵩み、場合によっては強制執行につながることもあり得ます。逃げるのではなく、行政と真摯に話し合うことが必要だと思います。

 




この時期は7月10日までの労働保険の申告書作成・提出、算定基礎届の作成・提出、納期の特例の源泉所得税の計算などがあるうえ、介護事業所は7月末までに処遇改善加算の実績報告書を提出しなければならない等、実は事務手続きが多く、なかなかブログが更新できませんでした。

今日は、顧問先からいただいた質問について、ブログを書いていこうと思います。

いただいたご質問はこのようなものです。

「講演をしていただいた方に対して報酬の源泉所得税を引かないといけないと思うのですが、この場合、交通費もあわせて支払う場合には給与のように非課税の規定が適用されないと聞きましたが、どのように取り扱ったらいいのでしょうか?」

 

この会社では社内研修の一環で講師を招いて講演をしていただいたわけです。その報酬を支払うわけなのですが、その源泉所得税についてのご質問です。

これについて、国税庁のHP(タックスアンサー)に答えがあります。

報酬・料金等を支払う場合の注意事項として次のように書かれています。

 

「謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になります。しかし、報酬・料金等の支払者が、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。」

 

つまり、交通費という名目も含めて源泉所得税がかかるわけですこのことから、報酬の支払調書は交通費の金額も含めて報酬額として支払調書を作成し、ご本人にお渡しするということになります。

私の経験上、これは勘違いの多い点だと思います。「交通費という名目で渡したお金は非課税」と思っている方が多いのではないでしょうか?交通費が非課税になるのはあくまでも給与所得者の話です。報酬の源泉所得税にはこの非課税の適用がないのです。あくまでも、報酬の対象者の交通費に源泉所得税がかからないのは、直接、宿泊費や滞在費を支払った場合に限定されるという話なわけです。実費相当額を含めて報酬を支払った場合には、交通費も含めた全体に対して源泉所得税がかかるわけです。交通費部分は非課税として、報酬の支払調書を作成してしまうと、交通費部分の課税漏れが生じてしまいます。報酬の支払いの相手先にも影響のある話ですから注意が必要です。

(ちなみに、報酬を受け取る側からすると、交通費も含めた金額を報酬額として収入に計上し、実際にかかった交通費を経費に計上するため、結局、交通費部分を除いた実際報酬額に所得税がかかることになるため、仮に交通費部分が報酬の支払調書から抜けていたとしても、交通費部分を経費に計上していないのであれば所得金額自体はかわらないはずなので、交通費部分を報酬から除いた支払調書を受け取った側についても所得税に関しては課税漏れが生じないことになります。)

 

また、その国税庁のタックスアンサーには次のような記載もあります。

「報酬・料金等の額の中に消費税及び地方消費税の額(以下、「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません

源泉所得税の対象となるのは、原則は消費税込みの金額に対してです。ただし、報酬本体部分と消費税部分を分けて表示していれば消費税抜きの報酬本体部分に対して源泉徴収すればいいことになっています。相手方の請求書などが消費税が別に計算されているのか、込みで計算されているのか、よく確認しましょう。

それから、

「支払を受ける者が研究会、劇団などの団体で、個人か法人かが明らかでない場合は、その支払を受ける者が、法人税を納める義務があること又は定款、規約、日常の活動状況などから、団体として独立して存在していることを明らかにした場合は法人として取り扱い、そうでなければ個人として取り扱います。」

報酬を支払う相手方が個人なのか法人なのか、よくわからない場合もあると思います。支払う相手方がなんらかの団体だったりする場合には、その団体が法人税を納めている法人なのか、そうでないのか、わからない。こんな場合は個人として取り扱う、つまり、源泉徴収して支払うということになっています。実務上は、その団体の代表者名で源泉徴収することになるだろうと思います。相手側が個人なのか法人なのか、個人の場合には誰の名前で支払調書を作成したらいいのか、相手側に確認して支払う必要があります。

また

「懸賞応募作品などの入選者に対する賞金や新聞、雑誌などの投稿欄への投稿の謝金などは、原則として原稿料に含まれますが、一人に対して支払う賞金や謝金の金額が、1回5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。」となっています。

原稿料などの場合、報酬額が源泉徴収する前の金額で5万円以下であればそもそも源泉徴収しなくていいことになっています。ただし、源泉徴収する必要がないのは懸賞金や謝金の場合です。5万円以下の報酬全てではないですから注意が必要です。

そして、源泉徴収する金額は次のようになっています。

支払金額(=A) 税額
100万円以下 A×10.21%
100万円超 (A-100万円)×20.42%+102,100円

これについては、たとえば、受取額を10万円ちょうどの金額にするような場合、どのように計算したらいいのかということがあります。これはいわゆる割り戻しの計算になります。

100万円以下だったら、0.8979で割り返すことになります。

10万円÷0.8979=111,370円

 

これは余談ですが、最近、報道で一部の芸能人によるいわゆる「闇営業」というのが問題になりました。これも支払いをした側が法人なのであれば源泉徴収義務があったことになります。この問題で受け取った芸能人側は修正申告をしたと報じられていますが、この辺はどうなっているのだろうかというのは私の感じた素朴な疑問です。

報酬の源泉所得税については、上記のようにいくらか複雑な部分もあるので確認しながら経理処理が必要な部分です。源泉徴収する際には注意しながら経理処理しましょう。




今日は前回の続きです。雑損控除の「災害」「盗難」「横領」のうちの「災害」についての取り扱いを解説しようと思います。ただ、これらは細かく解説すると結構大変なことになりそうなので、このブログの主な対象としている経営者に必要な部分をまとめてみます。

雑損控除といっても、実務上はこれを使うケースはほとんどが「災害」です。
先日のブログにも書きましたが、「災害」は主に次の3つのケースです。
(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2) 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3) 害虫などの生物による異常な災害
このうち、雑損控除を使うのはほとんどが(1)の自然災害と(2)の火災です。この自然災害と火災があった場合、いくら控除されるのでしょうか。

(1) (差引損失額)-(総所得金額等)×10%
(2) (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
上記のうちのいずれか多い金額を雑損控除とすることができます

算式だけ見ると少しわかりづらいですが、ポイントは「災害関連支出」と「損失額の計算」です。

まず、「災害関連支出」をみていきましょう。「災害関連支出」とは何のことでしょうか?
国税庁のHPから抜粋すると、以下のように書かれています。
「「災害関連支出」とは、災害により滅失した住宅、家財などを除去するための費用や豪雪による住宅の倒壊を防止するための屋根の雪下ろし費用などの災害に関連したやむを得ない支出をいいます。」

これは、かつて総理大臣をやったこともある田中角栄が作った規定だと言われています。田中角栄の故郷は言わずと知れた新潟県です。私と同じ柏崎(田中角栄は旧西山町)出身です。その田中角栄の選挙区だった旧新潟3区は、魚沼や湯沢といった新潟の中でも特に雪深い地域があります。田中角栄は自らのふるさとの雪に悩まされる実情を見て、屋根の雪下ろしにかかる費用を「災害関連支出」として雑損控除の対象になるようにしたと言われています。

「災害関連支出」はこうした雪下ろしの費用の他には、たとえば、風水害や火災によって倒壊した住宅の廃材を除去する費用といったものも含まれます。これらの「災害関連支出」が年間5万円以上かかった場合には、雑損控除の対象になる というのが(2)の算式の意味です。

一方で、(1)の方はこれは損失額を算出して その損失額が総所得金額の10%を超える場合に超えた金額を控除できる としています。
(1)で計算する場合の方が計算が面倒です。たとえば、自宅が火災に遭った場合、雑損控除の対象になるわけですが、その損失額をどうやって計算するのかというのが難しいわけです。この損失額の計算については、実は、一定の用紙があります。そこに記載されている項目に従って計算を出していくというモノがあるんです。
これは「被災した住宅、家財等の損失額の計算書」というものです。これは、地域ごとの1㎡当たりの住宅の価格や住んでいた住宅の構造が木造なのか鉄筋造りなのか等によって計算していくものです。また家財についての損失も、年齢や夫婦の世帯だったのか、独身だったのか、子供が何人いたのか(何人住んでいたのか)などによって計算を出していきます。
いずれにしても、(2)の「災害関連支出」が5万円以上の場合に比べ、説明をよく読みながら計算を進めていく必要があるため、少し手間ではあります。

また、そもそも雑損控除の対象になる資産は「生活に通常必要な資産」とされています。「生活に通常必要な資産」というのは、「①家具、什器、通勤用の自動車、衣服など②貴金属や宝石、書画、骨董品などで、1個又は1組の価格が30万円以下のもの」と住宅ということになります。
これらの資産が災害によって被害に遭った場合に、上記の計算書を使って計算をしていくわけです。

また、この「災害」による損失の場合、「災害減免法」という別の法律で計算することも可能です。つまり、「災害」の場合には「災害減免法」と所得税の「雑損控除」の選択になるわけです。
「災害減免法」による場合は、損害の金額が住宅や家財の価格の2分の1以上の場合なので、大きな損害の場合です。その場合、次の所得税の軽減額になります。
所得金額500 万円以下・・・全額免除
所得金額500 万円超750 万円以下・・・2分の1の軽減
所得金額750 万円超1,000 万円以下・・・4分の1の軽減

所得金額が500万円以下のような場合には、いわゆる災免法による減免の方が有利になるだろうと思います。

そして、災害の場合、申告期限が延長されることも知っておいていいことです。
災害に遭ったタイミングで申告期限が来てしまった場合、申告期限は災害がやんでから2か月まで延長されます。法人税(所得税)の他に、消費税の申告がある場合、消費税についても延長されることになります。法人の場合、申告期限の延長の届け出をしても法人税だけにしか効果が及びませんが、災害の場合には消費税にも延長の効果が及びますからこの点は通常の延長との違いと言っていいでしょう。
届け出も災害が発生した後、事後の届け出になります。災害が起こってその後その災害の対応が終わってから早めに出せば問題ありません。この際には、警察などからもらった「り災証明書」の写しを添付することが必要な場合もあります

実は、私の顧問先でも、実際、申告期限の間際に火災があってこの規定を使ったケースがあったのですが、その時も税務署に確認しながら申告期限の延長の届け出をしました。税務署側と届け出内容を確認しながら進めたほうがいいでしょう。
それから、申告期限の延長で忘れがちなのが、法人の場合、地方税もあるということです。税務署へ提出した後、地方税も忘れずに届け出しておきましょう。

その他にも、災害の場合、たとえば、予定納税の減免があったり、また、住宅が火災に遭ったようなケースで、住宅がなくても住宅ローン控除も引き続き受けることが出来たりするものもあります
また、災害により相当な損失を受けたことにより、その復旧に必要な資金の借入れのために使用する場合には、納税証明書の交付手数料は必要なかったりする特例もあります

火事に遭ったり、水害や雷などによる自然災害に遭ったりしたケースでは、このように税金の負担を軽減する措置が数多くあります。また、申告期限が延長されたりという緩和措置もあります。だいたいの概要を知っておいて、あとは税務署や市役所等の行政の窓口へご相談されることをお勧めします。

 

 

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突然ですが、「雑損控除」というのをご存知でしょうか。

雑損控除とは、災害・盗難・横領にあった場合に、所得税や住民税が一定程度、控除されるというモノです。この雑損控除は「災害」「盗難」「横領」に限定されています

つまり、オレオレ詐欺などの「詐欺」にあっても税金は控除されないのです

 

 

雑損控除を受けられる損害について、国税庁のHPには次のように書かれています。

「次のいずれかの場合に限られます。

(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害

(2) 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害

(3) 害虫などの生物による異常な災害

(4) 盗難

(5) 横領

なお、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。」

「災害」はわかりやすいわけです。地震や洪水、火災などを想像すればわかります。「盗難」も人にものを盗まれたというわけですから何となく理解できます。問題は「横領」なわけです

これについては、裁判例があります。

この裁判例は、詐欺的な投資商法による被害者が投資額を回収できなかったのは雑損控除に規定する「横領」にあたるから雑損控除を適用して税務申告をしたところ、税務署はそれは「詐欺」にあたるのであって「横領」ではないから、雑損控除の適用は出来ないと言ってきたわけです

 

では、「横領」と「詐欺」とはどう違うのでしょうか?

裁判所は「横領」は刑法上の罪である「横領」に当たるものだとしています

では、刑法上の横領とはどういうものをいうのでしょうか。

刑法252条によると、単純横領罪とは①自己の占有する他人の物を横領した者②自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者 について5年以下の懲役に処するとなっています。また、業務上事故の所有する他人の物を横領した場合には、10年以下の懲役に処するとなっていて、これを業務上横領といいます

税務上はこうした「横領」に該当するものが雑損控除に該当するのであって、控除できるのは上記のものに限定されるとしています。ということで、「詐欺」はこれにはあてはまらないことになるわけです。

裁判ではそうは言っていませんが、「詐欺」にあってしまうのも自己責任だと言われているようなものです。いずれにしても、現状では、残念ながら「横領」というのは限定的な解釈がされているのだと理解できそうです。

 

ということで、次回は、雑損控除の「災害」について少し見ていくことにしましょう。

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今日は、実際に私の顧問先であった事例をご紹介いたします。

「夫が事業を始めました。(妻はすでに何年も前から個人事業を経営しています。)夫は事業用の車を買って、私(妻)名義の土地に車を駐車することになったので、駐車場代として賃料を私に支払うことになりましたが、これって経費でいいんですよね?」

この話、皆さんはどう思われますか?

 

この話は、まさに所得税法第56条生計一の親族が支払いを受ける対価」と呼ばれるものです。この規定は、次のように書かれています。

 

居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。」

 

この規定は所得税特有の規定として、税理士試験なんかではよく出てくる規定です。実際、私が税理士試験の所得税を受験した時もこの規定が出題されました。

何が書いてあるのか、よく読まないとわからない(よく読んでもわからないかもしれません)ですが、要するに言っていることは次の三つに集約されます。

 

・親族に経費を支払っても必要経費にはならない。

・親族が代わりに支払った事業に係る経費は必要経費に算入できる。

・親族に支払った側が必要経費にできないのだから、もらった側も収入ではない。

 

さて、この所得税法第56条については、有名な裁判例が2つあります。

一つは、夫が弁護士、妻が税理士という場合で、弁護士である夫が妻に確定申告などの税務業務をやってもらい、経費に計上したわけです。税務署はこれを否認しました。根拠はこの所得税法第56条だというわけです。

もう一つは、夫も妻も弁護士という場合で、夫の弁護士業務の一部を弁護士の妻に業務委託をしていて、その業務委託料を夫が妻に支払ったケースで、このケースでも税務署は経費の計上を否認しました。この根拠も所得税法第56条だというわけです。

 

さて、なぜこのようなことになるのでしょうか。

通説によれば「家族の間で所得を分割して税負担を意図的に減らすことを防止する」と言われています。所得税法第56条は「親族に支払っても経費にできない」といっている一方で、「親族が代わりに経費を支払っても経費にできる」とも言っています。だから、夫婦間のお金のやり取りはなかったものとするというわけです。これは、夫婦両方が事業をやっていたとしても、お互いがお互いに支払ったものを経費計上できるような形にすると、租税回避行為につながるというのもその理由だというわけです。

また、「生計一」というのは一般的には「家族で財布が同じ」ことを言っていると言われます。これについては、所得税法の基本通達2-47によると、勤務の都合上、妻子と別居していても生活費を送金していたり、週末や余暇では一緒に生活している場合も含むとしています。逆の言い方をすれば、全く別に生活を営んでいる場合以外は「生計一」とみなされるとしています

この所得税法第56条の例外規定が所得税法第57条だとされています。所得税法第57条は専従者給与の規定です。青色申告の場合、青色事業専従者としての届け出をすれば、親族であっても支払った給与は届け出の範囲内で給与として認められるというモノです。これは所得税法56条の例外規定とされています。逆の言い方をすれば、専従者給与以外は親族間のお金のやり取りはなかったものとするというわけです。

 

さて、件の私の顧問先の件です。

これは結論としては、残念ながら、奥さんに支払っている駐車場代は賃料として必要経費にはならないと解釈されることになるでしょう。

ただし、たとえば、この夫が法人を設立して、法人に対して貸しているのであれば経費に計上できます。また、逆に妻が法人を設立して、妻が所有している駐車場を法人名義にして、法人が夫に貸している形にすれば経費計上できます。つまり、個人事業のままだとどうしても所得税法第56条の規定が問題になるわけなので、どちらかの事業を法人にすれば経費計上できる可能性が出てきます。また、夫と妻の事業実態にもよりますが、夫と妻の事業を同じ法人にして、その法人が妻の駐車場を借りている形にすれば経費計上できることになります。

また、たとえばこれが夫婦ではなく、内縁関係だったら経費計上が認められることになります。つまり、私の顧問先のケースでも、先ほどの裁判例のケースでも、婚姻関係だから経費計上が認められないわけです。恋人同士だったり、内縁関係だと経費計上が認められ、一方で、婚姻関係にあるととたんに経費計上ができなくなるというのが今の税法の解釈です。しかし、これは、著しく不合理ではないかという反論もあり、この規定自体の廃止を求める動きもあります。

 

いずれにしても、こういうたぐいの話こそ、まずは顧問税理士がいれば顧問税理士に相談すべき話です。税務上のこうしたややこしい論点の話こそ、税理士に相談すべき話なわけです。(そういう趣旨で、この顧問先も私にご相談されたようです)

「生計一の親族が支払いを受ける対価」という話、参考になれば幸いです。

 

 

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