さて、今日も介護施設の消費税の話です。
今年の10月から消費税率が10%に引き上げられます。一方で、飲食料品の提供については8%です。では、介護施設での食事の提供についてはどのようになるのでしょうか。これは「有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供」については、消費税は軽減税率、つまり、8%になるとされています。
さて、この「有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供」とは、どういったものをいうのでしょうか?
その前に前回の復習です。
介護サービス業のうち、有料老人ホーム等で行う食事の提供は消費税が課税されることになるのでした。これは国税不服審判所の裁決等でそうした判断が行われているのでした。有料老人ホーム等で行う食事の提供は消費税がかかる。今日の話はこの点を前提にした話です。
では、有料老人ホーム等で行う食事の提供は8%の消費税になるのでしょうか?10%の消費税になるのでしょうか、というのが今日の話です。
その上で、国税庁のQ&Aに詳しく回答が出ていますのでそれをご紹介いたします。
問60 当社は、有料老人ホームを運営しています。提供する食事は全て税抜価格で、朝食500円、昼食550 円、夕食640 円で、昼食と夕食の間の15 時に500 円の間食を提供しています。これらの食事は、軽減税率の適用対象となりますか。
軽減税率の適用対象となる有料老人ホームにおいて行う飲食料品の提供とは、老人福祉法第29条第1 項の規定による届出が行われている有料老人ホームにおいて、当該有料老人ホームの設置者又は運営者が、当該有料老人ホームの一定の入居者に対して行う飲食料品の提供をいいます( 改正法附則34①一ロ、改正令附則3 ②一) 。
また、軽減税率の適用対象となるサービス付き高齢者向け住宅において行う飲食料品の提供とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」第6 条第1 項に規定する登録を受けたサービス付き高齢者向け住宅において、当該サービス付き高齢者向け住宅の設置者又は運営者が、当該サービス付き高齢者向け住宅の入居者に対して行う飲食料品の提供をいいます( 改正令附則3 ②二) 。
これらの場合において、有料老人ホーム等の設置者又は運営者が、同一の日に同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額( 税抜き)が一食につき640円以下であるもののうち、その累計額が1,920円に達するまでの飲食料品の提供であることとされています。
ただし、設置者等が同一の日に同一の入居者等に対して行う飲食料品の提供のうち、その累計額の計算の対象となる飲食料品の提供( 640円以下のものに限る。) をあらかじめ書面により明らかにしている場合には、その対象飲食料品の提供の対価の額によりその累計額を計算するものとされています( 平成28年財務省告示第100号) 。
ご質問の飲食料品の提供について、あらかじめ書面により、その累計額の計算の対象となる飲食料品の提供を明らかにしていない場合は以下のとおりとなります。
朝食( 軽減) 昼食( 軽減) 間食( 軽減) 夕食( 標準) 合計( 内軽減税率対象)
500円≦640円 550円≦640円 500円≦640円 640円≦640円 = 2,190円( 1,550円)
(累計500 円) (累計1,050 円) (累計1,550 円) (累計2,190 円)
夕食は、一食につき640 円以下ですが、朝食から夕食までの対価の額の累計額が1,920 円を超えていますので、夕食については、軽減税率の適用対象となりません。
なお、あらかじめ書面において、累計額の計算の対象となる飲食料品の提供を、朝食、昼食、夕食としていた場合は以下のとおりとなります。
朝食( 軽減) 昼食( 軽減) 間食( 標準) 夕食( 軽減) 合計( 内軽減税率対象)
500円≦640円 550円≦640円 500円≦640円 640円≦640円 = 2,190円( 1,690円)
(累計500 円) (累計1,050 円) 累計対象外 (累計1,690 円)
長いですが、Q&Aをすべて引用しました。
まず、前提として有料老人ホーム等で行う食事の提供です。サービス付き高齢者住宅も入ります。この場合の軽減税率の取り扱いという話です。
その上で、8%になるのは1食が税抜きで640円以下で、なおかつ、1日の食事代が税抜きで1920円まで となっています。
国税庁のQ&Aで出ているのが、1920円を超えた場合、超えた食事(このQ&Aでは夕食で1920円を超えるとなっています)から10%で計算することになると言っています。
これを例えば、8%になる食事を「朝食・昼食・夕食」と明記すれば、この3食は8%で、間食は10%になると言っているわけです。
もし1日の食事代が税抜きで1920円を超えるようだったら、契約書で3食については8%で計算すると明記すればいいということになります。
また、特別な食事の提供については、「患者の自己選択により、特別メニューの食事の提供を受けている場合に支払う特別の料金については、非課税となりません。また、病室等で役務を伴う飲食料品の提供を行うものですので、「飲食料品の譲渡」に該当せず、軽減税率の適用対象となりません( 改正法附則34①一ロ)。」となっています。ぜいたく品は軽減税率(8%)にはならないというわけです。
そして、「有料老人ホームとの給食調理委託契約に基づき行う食事の調理は、受託者である貴社が、委託者である有料老人ホームに対して行う食事の調理に係る役務の提供ですので、軽減税率の適用対象となりません( 軽減通達13)」とあるように、食事の提供をそもそも業者に委託している場合には、軽減税率の対象ではなく、10%で計算されることになります。
実務的には、有料老人ホーム等で行う食事の提供について、なるべく8%で計算する形にしたいという部分だと思います。どのようにしたら8%となるのか、8%で計算できる方法を検討する必要があります。
また、売上の方は8%の軽減税率で計算できたとしても、食事の提供に伴う食材の食材の仕入れなどの支払う方の消費税はどのようになるのでしょうか。
食材の仕入れについては原則的には8%の軽減税率になります。ただ、モノによっては10%の消費税がかかるものもあります。たとえば、食事の提供に伴って使用する容器代は10%の税率でかかります。あるいは、調味料で使うみりんやお酒なども同様に10%の消費税かかります。つまり、食材の仕入と言ってもすべてが8%となるわけではなく、10%で支払うものもあるわけです。そうだとすると問題なのは、今までよりも食事にかかる原価がかかってくるというわけです。それを利用者さんに転嫁するのか、あるいは、その分は事業所の負担にするのか、そういった検討も必要になってきます。
10月の消費税率の改正まではまだ時間はあります。
食事にかかる費用も含め、利用者さんへの料金をどのようにするのか、よく検討しないといけない論点だということを知っておきましょう。