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さて、今日も介護施設の消費税の話です。

今年の10月から消費税率が10%に引き上げられます。一方で、飲食料品の提供については8%です。では、介護施設での食事の提供についてはどのようになるのでしょうか。これは「有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供」については、消費税は軽減税率、つまり、8%になるとされています

さて、この「有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供」とは、どういったものをいうのでしょうか?

その前に前回の復習です。

介護サービス業のうち、有料老人ホーム等で行う食事の提供は消費税が課税されることになるのでした。これは国税不服審判所の裁決等でそうした判断が行われているのでした。有料老人ホーム等で行う食事の提供は消費税がかかる。今日の話はこの点を前提にした話です。

では、有料老人ホーム等で行う食事の提供は8%の消費税になるのでしょうか?10%の消費税になるのでしょうか、というのが今日の話です。

 

その上で、国税庁のQ&Aに詳しく回答が出ていますのでそれをご紹介いたします。

 

問60 当社は、有料老人ホームを運営しています。提供する食事は全て税抜価格で、朝食500円、昼食550 円、夕食640 円で、昼食と夕食の間の15 時に500 円の間食を提供しています。これらの食事は、軽減税率の適用対象となりますか。

 

軽減税率の適用対象となる有料老人ホームにおいて行う飲食料品の提供とは、老人福祉法第29条第1 項の規定による届出が行われている有料老人ホームにおいて、当該有料老人ホームの設置者又は運営者が、当該有料老人ホームの一定の入居者に対して行う飲食料品の提供をいいます( 改正法附則34①一ロ、改正令附則3 ②一) 。

また、軽減税率の適用対象となるサービス付き高齢者向け住宅において行う飲食料品の提供とは、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」第6 条第1 項に規定する登録を受けたサービス付き高齢者向け住宅において、当該サービス付き高齢者向け住宅の設置者又は運営者が、当該サービス付き高齢者向け住宅の入居者に対して行う飲食料品の提供をいいます( 改正令附則3 ②二) 。

これらの場合において、有料老人ホーム等の設置者又は運営者が、同一の日に同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額( 税抜き)が一食につき640円以下であるもののうち、その累計額が1,920円に達するまでの飲食料品の提供であることとされています

ただし、設置者等が同一の日に同一の入居者等に対して行う飲食料品の提供のうち、その累計額の計算の対象となる飲食料品の提供( 640円以下のものに限る。) をあらかじめ書面により明らかにしている場合には、その対象飲食料品の提供の対価の額によりその累計額を計算するものとされています( 平成28年財務省告示第100号) 。

ご質問の飲食料品の提供について、あらかじめ書面により、その累計額の計算の対象となる飲食料品の提供を明らかにしていない場合は以下のとおりとなります。

朝食( 軽減) 昼食( 軽減) 間食( 軽減) 夕食( 標準) 合計( 内軽減税率対象)

500円≦640円 550円≦640円 500円≦640円 640円≦640円 = 2,190円( 1,550円)

(累計500 円) (累計1,050 円) (累計1,550 円) (累計2,190 円)

夕食は、一食につき640 円以下ですが、朝食から夕食までの対価の額の累計額が1,920 円を超えていますので、夕食については、軽減税率の適用対象となりません。

なお、あらかじめ書面において、累計額の計算の対象となる飲食料品の提供を、朝食、昼食、夕食としていた場合は以下のとおりとなります。

朝食( 軽減) 昼食( 軽減) 間食( 標準) 夕食( 軽減) 合計( 内軽減税率対象)

500円≦640円 550円≦640円 500円≦640円 640円≦640円 = 2,190円( 1,690円)

(累計500 円) (累計1,050 円) 累計対象外 (累計1,690 円)

 

 

長いですが、Q&Aをすべて引用しました。

まず、前提として有料老人ホーム等で行う食事の提供です。サービス付き高齢者住宅も入ります。この場合の軽減税率の取り扱いという話です。

 

その上で、8%になるのは1食が税抜きで640円以下で、なおかつ、1日の食事代が税抜きで1920円まで となっています

国税庁のQ&Aで出ているのが、1920円を超えた場合、超えた食事(このQ&Aでは夕食で1920円を超えるとなっています)から10%で計算することになると言っています。

これを例えば、8%になる食事を「朝食・昼食・夕食」と明記すれば、この3食は8%で、間食は10%になると言っているわけです。

もし1日の食事代が税抜きで1920円を超えるようだったら、契約書で3食については8%で計算すると明記すればいいということになります。

 

また、特別な食事の提供については、「患者の自己選択により、特別メニューの食事の提供を受けている場合に支払う特別の料金については、非課税となりません。また、病室等で役務を伴う飲食料品の提供を行うものですので、「飲食料品の譲渡」に該当せず、軽減税率の適用対象となりません( 改正法附則34①一ロ)。」となっています。ぜいたく品は軽減税率(8%)にはならないというわけです。

 

そして、「有料老人ホームとの給食調理委託契約に基づき行う食事の調理は、受託者である貴社が、委託者である有料老人ホームに対して行う食事の調理に係る役務の提供ですので、軽減税率の適用対象となりません( 軽減通達13)」とあるように、食事の提供をそもそも業者に委託している場合には、軽減税率の対象ではなく、10%で計算されることになります。

 

実務的には、有料老人ホーム等で行う食事の提供について、なるべく8%で計算する形にしたいという部分だと思います。どのようにしたら8%となるのか、8%で計算できる方法を検討する必要があります。

 

また、売上の方は8%の軽減税率で計算できたとしても、食事の提供に伴う食材の食材の仕入れなどの支払う方の消費税はどのようになるのでしょうか。

食材の仕入れについては原則的には8%の軽減税率になります。ただ、モノによっては10%の消費税がかかるものもあります。たとえば、食事の提供に伴って使用する容器代は10%の税率でかかります。あるいは、調味料で使うみりんやお酒なども同様に10%の消費税かかります。つまり、食材の仕入と言ってもすべてが8%となるわけではなく、10%で支払うものもあるわけです。そうだとすると問題なのは、今までよりも食事にかかる原価がかかってくるというわけです。それを利用者さんに転嫁するのか、あるいは、その分は事業所の負担にするのか、そういった検討も必要になってきます。

 

10月の消費税率の改正まではまだ時間はあります。

食事にかかる費用も含め、利用者さんへの料金をどのようにするのか、よく検討しないといけない論点だということを知っておきましょう。



今日は介護施設の消費税の経理処理の話です。

この話は実は会計事務所でも処理を間違えているケースがあるようで、実は非常に難しい問題です。

介護サービス業を営む事業では消費税はどのように取り扱うのが正しいのでしょうか?

消費税法別表第7号は消費税の非課税取引について、次のように書いています。

 

イ 介護保険法の規定に基づく居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス(訪問介護、訪問入浴介護その他の政令で定めるものに限る。)、施設介護サービス費の支給に係る施設サービス(政令で定めるものを除く。)その他これらに類するものとして政令で定めるもの

 

では、上記のうち「その他これらに類するものとして政令で定めるもの」とは何を指しているのでしょうか?

介護保険法施行規則第61条には次のように書かれています。

 

厚生労働省令で定める費用は、次の各号に掲げる居宅サービスの種類の区分に応じ、当該各号に定める費用とする。

一 通所介護及び通所リハビリテーション 次に掲げる費用

イ 食事の提供に要する費用

ロ おむつ代

ハ その他通所介護又は通所リハビリテーションにおいて提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められるもの

二 短期入所生活介護及び短期入所療養介護 次に掲げる費用

イ 食事の提供に要する費用

ロ 滞在に要する費用

ハ 理美容代

ニ その他短期入所生活介護又は短期入所療養介護において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められるもの

三 特定施設入居者生活介護 次に掲げる費用

イ おむつ代

ロ その他特定施設入居者生活介護において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者に負担させることが適当と認められるもの

 

上記をわかりやすくまとめてみるとこのようになります。

 

介護保険法のサービスのうち次の三つは非課税

①居宅サービス(訪問系・通所系サービス)

②施設系サービス

③その他の付随する介護サービス

 

上記のうち③その他の付随する介護サービスというのは次の三つ

 ①デイケア・デイサービス

 ・食事の提供

 ・おむつ代

 ・その他日常生活に必要なサービス

 ②ショートスティ

 ・食事の提供

 ・滞在費用

 ・理美容代

 ・その他日常生活に必要なサービス

 ③介護付き有料老人ホーム

 ・おむつ代

 ・その他日常生活に必要なサービス

 

誤解を恐れずにまとめれば上記のようになるわけです。

これをよく見ると、介護付き有料老人ホームについては「食事の提供」が入っていないことがわかります。つまり、介護付き有料老人ホームでの食事の提供は消費税がかかる取引であるということになります。介護付き有料老人ホームからあえて「食事の提供」を外しているのは、介護付き有料老人ホームの食事の提供は課税であるという解釈になるわけです。

 

この論点については、有料老人ホームを経営する法人が争った事例で、国税不服審判所で裁決が出ています。その際に、上記の条文が引き合いに出され、「介護付き有料老人ホームでの食事の提供は課税」という判断が下されています。

また、同時にこの裁決では、「洗濯及びドライクリーニング」については「その他日常生活に必要なサービス」に含まれるとして、消費税は非課税と判断されています

 

また、「利用者の選定に基づき特別に提供されるサービス」は消費税が課税されるとされています。これは、たとえば「特別な食事」とか「特別な居室料」とかが該当します。利用者が介護保険法に基づく介護サービスを超えて特別にサービスの提供を受ける場合、つまり、ぜいたくなサービスに対しては消費税が課税されます。これは勘違いしてはいけないのは、介護保険法に基づく介護サービスを自費で徴収した場合を指しているわけではありません。介護保険法でいうところのいわゆる「支給限度額」を超えたサービスは介護保険法を超えているサービスであるため「自費」として料金を徴収されます。この場合は、介護保険法に基づくサービスの延長なのであれば非課税であることに変わりはありません。

 

さて、上記をまとめますと、介護事業所が提供する介護サービスで消費税がかかるのは原則的には次の二つになります

①ぜいたくなサービス

②介護付き有料老人ホームでの食事の提供

 

介護保険の許認可を受けているところでは、これ以外は消費税は原則的にはかからないと整理してしまっていいのではないかと思います。

 

この介護施設の消費税の話は会計事務所でも取り扱いに迷う部分でもあります。医療法人などですと、医療保険が使えないものは「自費」として経理処理します。この「自費」として経理処理したものは消費税が課税されると整理しています。それとの違いがあり、特に医療系に強い会計事務所では取り扱いに迷うケースがあるように聞きます。

これは、国税局の出している通達などでは判断がつかず、介護保険法ともあわせて考えないといけないということも原因にあるようです。

介護サービス業での消費税の取り扱いについて、このブログで情報を整理していただければと思います。



今日は前回に引き続き、法人向けの定期保険のお話で、法人向けの定期保険の経理処理が今までとは変わるという話です。

今日の話はまだ正式には確定していない話です。現状では「通達の改正案」というのが国税庁から出され、それについて意見を公募している(パブリックコメントに付している)状況です。しかし、過去の経緯からしてもほぼ、確定になるものと思われるものです。

法人契約の定期保険については、ピーク時の解約返戻率によって、以下のように整理される見通しです。

○ピーク時の解約返戻率 50%以下・・・全額損金

○ピーク時の解約返戻率が50%超70%以下・・・3/5損金

○ピーク時の解約返戻率が70%超85%以下・・・2/5損金

○ピーク時の解約返戻率が85%超・・・

1年目から10年目:100%-(ピーク時の解約返戻率×0.9)

    11年目以降:100%-(ピーク時の解約返戻率×0.7)

新しい法人向けの定期保険の経理処理の特徴は、解約返戻率のピークが何%かによって経理処理が変わるという点が特徴です

従来は、経理処理をするにあたってはまずは「定期平準定期保険」か「逓増定期保険」かそれ以外の「定期保険」かによっていたわけです。その辺は前回のブログでご説明した通りです。しかし、今回の改正は、そうした保険の種類は考慮しないといわけです。少しシンプルになったのではないかなと思います。

また、この新しい経理処理については、すでに契約している法人保険に対しては適用しないことになっています。過去にも保険の経理処理を見直すことは何度かありましたが、いずれもすでに契約している保険についてはそのままという運用にしていましたから、これはある意味、当然そうなるだろうというところです。すでに加入している保険については、経理処理の変更はありませんから、改めてご確認ください。

 

また、同じ保険でも法人向けの「養老保険」については経理処理方法に変更はありません。「養老保険」というのは、保険期間中に万が一のことが起こった場合には死亡保険金が支払われる一方で、生存して満期を迎えたときには死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れるという保険です。

この養老保険は社員の退職金の積み立てをするような場合に向いている保険です。この法人向けの養老保険については、一定の要件(社員全員に普遍的に加入できるような規定がある場合)に該当していれば、1/2損金にすることが可能です

前回のブログで書いた今回の法人向け保険の販売停止について、この養老保険には及んでいません。この1/2損金になる養老保険の話はまたどこかの回で書いていこうと思います。

また、いつから変更になるかという点ですが、これは今年の6月ごろを予定しているようです。現在販売が停止されている法人向けの定期保険などの保険の販売も、新しい法人向け定期保険の経理処理が正式発表されてからおそらく販売が開始されるものと思います。

この数週間で、保険会社各社の方が、私の事務所にもいらっしゃって、このような説明をしていただいたわけですが、私の受けた印象としては、今までのように法人向けの定期保険を「解約返戻金の率が高いこと」や「全額損金などの節税となるか」といった視点で選んではいけないということです。あくまでも保険本来の目的である「経営者が死亡した場合の保障」という面から検討していくべきだと改めて思いました

経営者が突然、亡くなってしまった時、残された従業員や取引先、そして経営者のご家族も路頭に迷ってしまいます。そんな時、法人向けの定期保険に加入していれば、従業員の給与や取引先へのお支払も滞りなく進めることができます。残ったお金で経営者のご遺族へ死亡退職金の支払いをすることも可能です。法人が保険に入る本来の目的は、そうした中小企業の経営者に万が一のことがあっても金銭的には大丈夫というもののはずです。解約返戻率の高さや、節税目的というのは本来の目的ではないはずです。

その意味で、今回の法人向けの定期保険の経理処理の改正は本来の保険の目的を改めて見直す機会になったと私は思っています。

ということで、今回は法人向けの定期保険についての経理処理が変わるという話でした。



さて、今日は法人向けの生命保険の話です。

法人向けの保険が販売停止になっていることをご存知でしょうか
販売休止になっている保険は、主に中小企業の経営者(もしくは役員)を被保険者とする保険商品で、会社が契約者となっている保険です。もともとこうした法人向けの保険は本来の「死亡したらいくら」という保険の本来の目的というよりかは、いつ解約するといくら戻ってくるのかということにフォーカスして加入するという側面があったことは確かです。保険という死亡した場合の保障という側面より、一種の金融商品のような感覚で、いくら払えば将来いくら戻ってくるのかに着目して保険を掛けるということです。そして、半分損金になるなどの特性があることから、節税目的という部分も狙っていたわけです。さて、この法人向けの保険がなぜ販売停止になったのでしょうか?

これは、日本生命のある商品が発端と言われています。
日本生命に「プラチナフェニックス」という保険があります。
これは、死亡保険の保障がついた定期保険ではありますが、保障開始から最初の10年は病気による死亡の保障がありません。最初の10年はケガや事故などの保障だけになっていることが特徴です。この保険は、加入から10年目に解約返戻率(解約した時に払った保険料に対して返ってくるお金の割合)がピークに達します。そのピーク時に保険を解約すれば、保険料の80%以上が戻ってくるというものです。しかも、国税庁の基本通達にのっとっているため、支払った保険料は全額損金扱いということで売り出していたわけです。
この保険は、税理士などの間でも問題があるのではないのかと言われていたものではありました。他の保険と比べても支払ったものが全額損金になりつつ、10年で解約返戻率が80%にもなる保険は他にないからです。しかし、日本で一番大きな保険会社の日本生命が発売を開始した保険でもあり、むしろこの日本生命の保険にならって保険会社各社が似たような保険を売り始めました。東京海上日動やアクサ生命、第一生命などでも発売し始めたのです。
これに反応したのが国税庁です。
国税庁はこうした状況を問題視して、今年の2月14日に通達を出し、いったん法人向けの保険の販売停止を指示したわけです

さて、では、現状で法人向けの定期保険というのはどのように経理処理されているのでしょうか?
これは、大きくは三つに分かれます。
まずは、長期平準定期保険です。これは、支払額の1/2が損金計上、1/2が積立金計上という経理処理をしていました。支払った額の半分が費用にできるわけです。
長期平準定期保険とは、保険の保障額は一定(契約時の保障額がずっと続くもの)で、解約返戻金の返戻率が最も高い時期までの期間が比較的長くなる(20年~30年以上となることが多いです)ような保険です。主に、経営者の退職金目的で掛けることの多い保険でもあります。20年後、30年後に事業を止めた時点で保険を解約してそれを元に経営者に退職金の支払いをしようということです。仮にその間に経営者がなくなるようなことがあれば、保険の本来の機能である保険金が支払われます。一方で、存命したままであっても解約してお金に代えてその時点で事業を退くのであれば経営者の退職金に充てられるわけです。

また、逓増定期保険というものがあります。これは保険の種類によって、1/2損金、1/3損金、1/4損金という3種類ありました。
逓増定期保険とは、保険の保障額が支払額に応じて徐々に増えていく保険です。最初は保障額が少なく、徐々に保障額が増えていくことから「逓増」と呼んでいるわけです。この保険の特徴は、解約返戻率のピークが早く、ほぼ5年から10年でピークを迎えるということが特徴です。一方で、保険料は長期平準定期保険と比べるとかなり高くなるというのが特徴です。
経営者の年齢が40代後半であったり、50台であったりする場合、この逓増定期保険を使って上記のような退職金目的の積み立てをするなどをする場合には向いている保険と言えます。これも長期平準定期保険と同じように、仮に経営者が保険を掛けている間になくなれば、その時点の逓増した保険金が出ますし、満期まで存命であれば解約したお金で経営者の退職金に充てるわけです。

また、法人向けの保険で上記の長期平準定期保険や逓増定期保険以外の保険を定期保険と呼びます。契約期間が決まっていて、解約返戻率も低い、いわゆる掛け捨て保険というものです。この定期保険は支払額が全額損金になるというのが特徴です。
さて、くだんの日本生命を始めとした保険会社の開発した保険はこの「定期保険」に分類されるとされ、全額損金が可能となっていたわけです。
今回、こうした保険を「売りすぎた」ために、国税庁がストップをかけたわけです。こうした保険を含め、保険会社は法人向けの保険商品の販売ができない状態になっています。財務省は、あたらな保険の経理処理の方法がはっきりするまでは保険商品の販売を禁止しているというわけです。
さて、では、国税庁はどういう方針を出しているのでしょうか。
その解説はまた次回やりましょう。



さて、今日は今年だけの特例、天皇陛下の退位と即位に伴う10連休についてのお話です。

総務・経理の担当者は具体的にどうしたことを事前にしておかなければいけないのでしょうか。

その前に、この10連休を前にして、調査会社の各社がそれぞれ10連休についてのアンケートを取っています。それによると、10連休を休みが取れるかという質問に対し、10連休をきちんと休みが取れると回答した割合は約3割だったそうです。つまり、カレンダー上は休みでも7割の人たちは休めないというわけです。

休めると回答した人の多くは公務員のような公的機関の人のようです。

実際、私の顧問先の治療院や介護事業所などでも10連休をきちんと休みを取るとご回答いただいた会社は今のところ、ありません。実際にはなかなか休めないというのが実態のようです。

 

さて、この10連休ですが、休める休めないにかかわらず、いろいろと事前に考えておかなければならないことがあります。実際、今、保育園がこの期間、休みになってしまうのに、仕事は休みにならないので、預け先に困る方たちがかなりいらっしゃることが問題になっています。休める休めないにかかわらず、今回は前例のない公的機関の固まった休みとなるため、総務・経理担当者にとってはいくつか気を付けておくべきことがあるというわけです。どんなことが考えられるのか、挙げてみました。

 

① 4月末が期限の役所への提出書類、納付期限が4月末日のものは5月7日になる

これは、税務などの書類の提出期限が日曜・祝日に当たる場合、次の平日になるという今までのルールから照らしてお分かりいただけるものと思います。現在でも、提出期限や納付期限が日曜・祝日の場合、次の営業日になっています。これからしてお分かりと思います。

役所の提出期限は5/7になるので、ほぼ1週間伸びます。納付期限も同じように、4月末の納付期限のものは5/7になります

 

② 社会保険の書類も5月7日になってしまう

たとえば、5月1日付入社の方がいたとします。仮に、5/1が出社であったとしても手続き自体は役所が休みですから、取り扱いは5/7となってしまいます。そうすると、何が問題なのかというと、10連休で休みが重なってしまった分、役所の手続きがしばらくストップしていたため、事務作業が重なっていることから保険証の交付が遅くなるという問題があります。

これについては、「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」という書類を資格取得届と同時に出せば、保険証が届くまでその「資格証明書」が保険証の代わりとしてしばらく使えます。とりあえずはこれで代用するしかないでしょう。

また、たとえば4月末付退職の場合、離職票の交付は5/7以降の手続きになってしまいます。これについては、10連休に伴い、やはり手続きが遅くなってしまうことが予想されます。これについては、事前にその方にその旨をお伝えしておくしかないでしょう。

 

③ 金融機関の営業日も5月7日となってしまう

これは支払いや売上の入金に影響のある話です。要は資金繰りを考える際に、これらを考慮に入れる必要があります。金融機関もすべて10連休中は営業していませんから、4月26日までに銀行の手続きはしておかないといけません。また、通常、月末や月初になる入出金が全て5月7日もしくは4月26日という連休の前後に集中してしまう可能性があります。そうなった場合、通常は資金繰りに問題ない残高が不足するなどの事態が発生しかねません。事前に入金・支払いの資金繰り状況をよく確認したほうがいいでしょう。

 

④ 年払いの倒産防止共済の支払いは5月7日になってしまう

セーフティ共済(倒産防止共済)を4月中に年払いにしている場合、4月末の引き落としにはなりません。4月決算法人の場合でセーフティ共済を費用処理したい場合、通常は支払い時に損金経理となるため、支払いが5月7日になってしまうと損金処理できないという話になります。ですが、今回は、天皇の退位と即位に伴う特例として、4月末で支払いは終わっていなくても、5月7日に口座引き落としできれば、4月末での「未払金」として経理処理すれば損金算入できることになりました。この話は以前の私のブログを参考にしてみてください。↴

https://vanguardwan.com/blog/4%e6%9c%88%e6%b1%ba%e7%ae%97%e6%b3%95%e4%ba%ba%e3%81%af%e8%a6%81%e6%b3%a8%e6%84%8f%ef%bc%81%e5%80%92%e7%94%a3%e9%98%b2%e6%ad%a2%e5%85%b1%e6%b8%88%e3%81%ae%e7%89%b9%e4%be%8b%e3%81%8c%e3%81%82%e3%82%8a

 

⑤ 10連休と労基法の関係はどうなっているのか

これは以前からご質問をいただくことの多かった論点です。

10連休は休ませないといけないのかというものです。

10連休のうち、まず、4/27は土曜日です。多くの企業では土曜日は「休日」とはなっていないものと思います。「休日」となるかどうかはその会社の就業規則の休日の規定に何と書いてあるかが問題です。「休日」に「日曜日」の他、「祝日」も入っていれば、4/29(昭和の日)、4/30(退位の日(国民の祝日【祝日に挟まれた日は祝日】  )、5/1(即位の日)、5/2(国民の祝日【祝日に挟まれた日は祝日】)、5/3(憲法記念日)、5/4(みどりの日)、5/5(こどもの日)、5/6(振替休日)は全て祝日となるため、「休日」扱いとなります。つまり、就業規則の「休日」に「祝日」が入っていれば、10連休とは言わないまでも9連休にはなるわけです

一方で、就業規則の「休日」に「祝日」がなく、「休日」が「日曜日」だけなのであれば、4/28と5/5だけが「休日」となります

 

この「休日」かどうかが問題なのは、時間外給与の算定です。休日労働となれば、平日の時間単価の1.35倍で計算しないといけないわけです。もし仮に、「休日」が「日曜・祝日」となっていて、これらの祝日中に出勤した場合、時間外労働となってしまうわけです。

一方で、1か月単位の変形労働時間制を採用していた場合で、「休日」がたとえば「シフトによる」となっていれば、祝日を休日とせずに取り扱うことが可能です。

 

今回は10連休という特殊な事情があったわけですが、たとえば治療院や介護事業所などの業種では、そもそも1か月単位の変形労働時間制を導入しておいた方が会社側は運用がやりやすいはずです

 

会社側の考え方が優先されているようですが、冒頭のアンケートを振り返ってみてください。10連休をきちんと休めるとしているのは約3割です。ほとんどの企業が10連休の休みは取れないわけです。今回のような事態を想定して、従業員さんとの話し合いの上で、就業規則を変えることも検討したほうがいいでしょう。

 

ただ、就業規則は急には変えられないです。もし「休日」に「祝日」が入っていて、休みが取れない場合、たとえば、「4/30~5/2は出勤してほしい。その代わりに○○○の3日間を休みにしてほしい」というような形にする、いわゆる「代休」という形にすれば、休日の割増賃金の支払いの必要はないです。「代休」を成立させるには、事前に振替を認めてもらうことが必要なわけです。事後に振替をいっても「代休」は認められません。事後に言った場合、休日労働となってしまいますから注意が必要です。

 

⑥ 連休明けの役所への提出書類は「令和」になる

連休前は「平成」で、連休明けは「令和」になっています。特に、役所関係の書類はすべて「平成」から「令和」に変更になります。これは結構、手間な話です、会計ソフトや給与ソフトなどはこれらのソフトを扱うベンダーさんが対応してくれるのでしょうが、これ以外の様々な書類はすべて直して使用する必要があります。連休前に様々な書類をチェックしておく必要があるでしょう

 

まだ他にもあるかもしれませんが、役所の手続きや金融機関の手続きを中心に考えると、上記のようなことが想定されます。10連休が休めるか休めないかにかかわらず、上記のようなことを考慮に入れてみてはいかがでしょうか。



さて、今日は今年だけの特例という話です。

皆さんご承知の通り、4月から5月初めにかけては天皇陛下の退位と即位の関係で10連休になります。この10連休があるため、4月決算法人が倒産防止共済(セーフティ共済)を年払いする場合、口座振替が5月7日になってしまうという問題があります。

セーフティ共済は年払いであろうが、月払いであろうが、支払った期の損金(もしくは積立金)となることになっています

租税特別措置法の特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例の適用を受け、原則としてその支払った日(口座振替日)の属する事業年度の損金の額に算入されます。」(中小企業基盤整備機構の商工共済ニュースより)

支払ったときの損金になるというのが通例の解釈です。(正確には法人の場合、支払った期の別表に記載があって初めて損金算入が認められます。これについては、以前のブログを参照してください。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e3%82%bb%e3%83%bc%e3%83%95%e3%83%86%e3%82%a3%e5%85%b1%e6%b8%88%ef%bc%88%e5%80%92%e7%94%a3%e9%98%b2%e6%ad%a2%e5%85%b1%e6%b8%88%ef%bc%89%e3%81%af%e5%8a%a0%e5%85%a5%e3%81%97%e3%81%9f%e5%be%8c%e3%81%ab

 

年払いの場合、通常であれば年払いする月の27日に口座振替になります。(27日が金融機関が休みの時は翌金融機関営業日)

初めてセーフティ共済に加入する場合には、振込になるのですが、2年目以降は口座引き落としです。1年分の前納をする場合、その支払月の5日までに中小企業基盤整備機構に書類を提出しないといけません。5日までに書類を出して初めて、27日に振替になります。

 

さて、今回の4月のケースです。4月に前納(1年分の掛け金の支払い)をしたい場合、4月5日までに書類を中小企業基盤整備機構に出すわけですが、引き落としとなる4月27日は土曜日です。その場合、次の金融機関営業日ですよね。次の金融機関営業日は5月7日になってしまいます。仮に4月決算法人がセーフティ共済の年払いをしたい場合、4月の初めに手続きしたのでは5月7日の引き落としになってしまいます。これでは損金計上できないのではないかと思われていたわけです

 

これについて、倒産防止共済(セーフティ共済)を運営する中小企業基盤整備機構が税務当局に確認したようです。その記事が2019年の『新春「商工共済ニュース」』に載っています。

「皇位継承に伴う金融機関の10 連休により、平成31 年4月分掛金(通常の口座振替日は毎月27 日。)の預金口座振替は平成31 年5月7日となります。この場合において、4月決算の法人が、毎月口座振替により納付している掛金について、適正な期間損益計算の観点から、平成31 年4月分掛金で平成31 年5月7日に口座振替により引き落とされる掛金を前年度決算(平成31 年4月27 日の属する期間の決算)において、会計上未払計上をしているのであれば、税務上もその未払いとなっている掛金の損金算入が認められます。

(注)毎期、1年分(5月分から翌年4月分)の掛金を口座振替により前納している

場合であっても、上記と同様となります。」(2019年新春「商工共済ニュース」より)

 

もっとも、今回は天皇の退位と即位の10連休があるために特例的に未払い計上して損金算入してもいいといっているだけで、本来は支払っていないと損金算入できません。その点は誤解のないように。

 

また、税理士会など取り扱い団体を経由して中小企業基盤整備機構に申し込みをしている場合、その取り扱い団体への提出は月内にしないといけません。つまり、4月決算法人であれば3月中に書類を提出しないといけませんから注意が必要です。

 

ということで、今回はちょっとイレギュラーな話で、4月決算法人のセーフティ共済のお話でした。



確定申告がようやく終わりました。

私も例にもれず、確定申告の事務作業で忙しく、ブログも更新できない状態が続きました。久々のブログ更新となります。

今日のテーマは還付申告です。

 

還付申告の代表例は「医療費控除」です。

「還付申告」というのは例えば、所得の中身が給与と医療費控除だけというように還付になる申告のことを言います。ふるさと納税もこの還付申告の代表例でしょう。あるいは、住宅ローン控除の申告などもこの還付申告になります。また、事業所得の方であっても、確定した税額よりも予定納税の金額の方が大きい場合、還付申告となります。このような「還付申告」の場合、確定申告書の提出期限は、その年の1月1日から5年間となります。つまり、今回の確定申告の場合、平成31年1月1日から平成35年12月31日までということになります。期限が3月15日ではないんです。また、確定申告書の提出は通常は2月16日から3月15日ですが、年明け1月1日から提出できます。

 

ただ、たとえば医療費控除やふるさと納税のような寄付金控除、住宅ローン控除があってもそれらを控除しても税額が出る場合には還付申告ではないので注意が必要です

 

3月15日までに申告書を提出できなかった・・・と思っている方、還付申告であれば期限は5年ですからまだ大丈夫です。これからゆっくり申告書を作って出せば大丈夫ですよ。

 

それから、医療費控除は以前と違う点がいろいろとあります。この点は確定申告時に私も何度かご質問を受けた点ですが、保険者から送られてくる「医療費通知」を使って申告しても問題ないとされています

国税庁が出している「医療費控除に関する手続きについて」というQ&Aの中には次のように書かれています。

 

医療保険者が発行するもので次の①から⑥までに掲げる6項目の記載がある「医療費通知」を確定申告書に添付する場合(注2)は、「医療費控除の明細書」の記載を簡略化することができ、医療費の領収書の保存も不要となります。

①被保険者等の氏名

②療養を受けた年月

③療養を受けた者

④療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称

⑤被保険者等が支払った医療費の額

⑥保険者等の名称

(注2)電子申告(e-Tax)により確定申告を行う際に、医療保険者から交付された「医療費通知」データ(XML形式)で、その医療保険者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを所得税の確定申告書データに添付して送信する場合を含みます。

 

これについては、先日の参議院の予算委員会でも議題になっていました。

現在、医療費控除の申告をする方は全国に約700万人いるそうです。「医療費通知」のみで確定申告するこの方法はかなり便利ではありますが、実際には各保険者から出されるこの医療費通知には上記の六つの要件がクリアされていないものもあり、添付して提出できないものも多いようです。特に⑤の支払った医療費の額の記載がないものがあるそうです。将来的には、医療費通知に記載されているもので確定申告できるようにする方向で検討していると麻生財務大臣も答弁していましたが、医療費通知で申告するには上記の要件が整っているのかの確認が必要ですから注意しましょう。

 

ということで、今日は「還付申告」のうちの「医療費控除」の話でした。



さて、今日は治療院や介護事業所でよくみられる資格取得の費用を会社が立替払いをする場合の労務上や税務上の処理がどうなるかという話をしていこうと思います。

治療院でも介護事業所でも最近は、「人材不足」が合言葉です。

そこで、格を取得している人を採用するのではなく、まだ資格を取得していない人を採用して、資格取得のための費用を会社が立替払いし、給与を支給する際に少しずつ控除していく、というようなことをしている会社があります

私もこの手のご相談を何回かうけたことがあります。

会社としては、資格をすでに持っている人はなかなか採用が難しいため、無資格者を採用し、働きながら資格を取ってもらおうということです。

ただ、この人がたとえば採用後数カ月で辞められてしまうと会社としては困ります。そこで、一定期間については給与から天引きして、一定期間を超えて働いてくれたら、立替払いしていた残りの分は会社が負担する形にするというような形にすることが多いようです。最初に係る資格取得のための学校に通う費用は会社がいったん払ってくれて、一定期間以上働けば、会社が持ってくれるわけですから、従業員としてもメリットが大きいわけです。会社としても、一定期間以上働いてくれれば残りの立て替え分が残っていてそれを会社側が負担したとしても、人材が確保されればその程度の費用負担をしてもメリットが大きいというわけです。俗にいう「ウィンウィン」の関係ということです。

 

通常、この資格取得のための費用を立替払いする場合、会社とその従業員さんが金銭の貸付契約もしくは立替払いして返金する旨の契約を交わします。たとえば、2年以内に退職してしまったら残りの分は退職時に一括で返してもらうというような契約を結ぶことになります。

 

さて、この資格取得費用を会社がいったん立て替え払いし、一定期間以上働けば費用を会社が持つというこの仕組みは労務上、それから税務上、なにか問題はないのでしょうか?

 

まず、労務上の問題から考えてみましょう。

労務上は、これはまずは労働基準法第16条の規定の問題を検討します。「賠償予定の禁止」というものです。労働基準法第16条には次のように書かれています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」

 

労務上の問題で問題になるのは、たとえば2年以上働いてくれなかったら残っている資格取得費用の立て替え分は返してもらうという契約をした場合、上記の労働基準法第16条に照らして問題にならないかという点です。

 

これについては、裁判例があります。

判例では次のように書かれています。

技能検定試験に関する必要費用を立替払いし、合格、不合格にかかわらず、その後、約定の期間内において退職するときは、右の金員を弁済し、その期間就労する時はこれを免除する等の特約は、①その費用の計算が合理的な実費であること、②その金員が使用者の立替払いと解されるものであること、③その金員の返済により何時でも退職が可能であること、④右返済に係る約定が不当に雇用関係の継続を強制するものではないこと、の場合には本条に抵触しない」(大阪高裁 昭和43.1.28)

 

また、労働基準法第17条前借金相殺の禁止」の規定との関係はどうかという問題もあります。労働基準法第17条は以下のように書かれています。

使用者は、前借金その他の労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない

これについては通達で次のように書かれています。

前借金でも貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を綜合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条の規定は適用されない。」(23.10.15基発他)

 

つまり、資格取得の費用について、会社が立替払いしその返済という形にすることは、労務上、問題ないということになります。

ただ、この判例にも書かれているように、「期間・金額・金利」等を明確にしないといけません。「お金を貸し、それを返してもらっている」ことを明確にする必要があるわけです。その意味でも、これを明確にするためにもきちんと契約書を交わす必要があります。

また、一定期間働けば残っている部分は、免除するという契約についても、判例から判断すると、契約の内容が著しく変な形の契約になっていない限り、問題ないとされているようです。著しく変な形の契約というのは例えば、資格取得の費用が100万円で、それを1年で返済することになっている(給与の半分近くの金額が返済に充てられる)とか、そういう極端なものでないという話です。

 

また、判例で「美容指導をうけ退職する場合は技術講習手数料を支払う旨の契約は労働基準法第16条に違反する」(浦和地裁 昭和61.5.30)とあるように、たとえば一定期間内に退職した場合、逆に手数料を取るような契約も労働基準法に違反しますから、この点も留意する必要があります。

 

このように、労務上は契約内容が不合理なものでなければ会社が立替払いし、一定期間を働いてくれたら立て替えた資格取得費用の一部を返済するのを免除するというのは合法であることがわかります。

 

では、税務上はどうでしょうか?

税務上はまずは立替払いであることを明確にしたほうがいいです。そうしないと「給与の一部」とみなされてしまう可能性があるためです。そのためにも、「契約書」をきちんと交わしたほうがいいです。契約書を交わすという点は労務上の観点からと同じです。

また、「金銭の貸付」とする場合には、金利をいくらか取ったほうがいいでしょう。微妙なところですが、「費用の立替」であれば一見すると金利を取らなくても良さそうではあります。しかし、いったんお金を貸して資格取得の費用を出したと考えれば金利はいくらか取らないといけないでしょう。つまり、「費用の立替」とか「金銭の貸付」といった名称で金利を取る取らないを分けるのではなく、資格取得の費用をいったん会社が立て替えた場合、言い方がどうあれ、金利はいくらか取らないといけないということだろうと思います

 

ちなみに、金利を利率何%にするかは、一定の決まりがあります。以下の国税庁のHPを参考にしてみてください。

https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/2606.htm

 

平成30年については、金利は1.6%となっています。

 

また、たとえば2年間勤務したら、会社が立替払いした資格取得費用の残りは全額、免除する形にしたとします。この免除した資格取得費用はどう処理するのでしょうか。

これは、会社としては免除した時点で「賞与の支払い」となるだろうと思います。

そうなると、本人からも源泉所得税も徴収しないといけません。給与課税していくため、本人には所得税・住民税がかかるという処理となります。

 

人材不足が言われる昨今、資格取得費用を会社が立て替えて支払うことも積極的に考えたほうがいいでしょう。その場合、こうした労務上や税務上の問題も考慮に入れて自社に合った制度を考えてみてはいかがでしょうか。



仕事がかなり詰まっていて、ブログの更新ができずにおりました。

今日は、本ブログでもっともアクセス数とご質問の多い項目が住民税の特別徴収です。この住民税の特別徴収について、本ブログに寄せられた質問から改めて考えたいと思います。

 

 

ご質問の内容は以下のようなものです。

 

事業を経営しております。

創業して15年程度、従業員数も増えてまいりましたが、

今までかたくなに特別徴収を拒否してまいりました。

理由としては、

住民税に関しては各個人に課税されるためのものであり、

行政の代わりに会社側が代理で徴収して納付、ということに対して納得がいかなかったからです。

自分たちで徴収しなければいけないお金なら、

自分で頭を下げて苦労してでも徴収してくればいいのに。という偏屈な考え方です。

たしかに、払っていない従業員もおられるようで

代理で徴収するにあたり、行政に手数料等を請求することは、

全く無意味なことなのでしょうか。

その他の法律で決まっていることなのでしょうか

 

ご質問の内容は正直、「う~ん」と言わざるを得ない内容です。

実際、私の顧問先の会社さんからこうしたことを言われたら「お気持ちはわかりますが、特別徴収の義務化は必須なのでやるようにしましょうよ」となだめるという感じの内容です。

特別徴収の義務化というのはもともと地方税法で決まっているものです。地方税法の231条の4という条文できちんと規定されています。

地方税法231条の4は次のように規定しています。

市町村は、前条の規定により特別徴収の方法によって個人の市町村民税を徴収しようとする場合には、当該年度の初日において同条の納税義務者に対して給与の支払をする者(他の市町村内において給与の支払をする者を含む。)のうち 所得税法第183条の規定により給与の支払をする際所得税を徴収して納付する義務がある者を当該市町村の条例により特別徴収義務者として指定し、これに徴収させなければならない。」

 

つまり、所得税を源泉徴収する事業者に住民税も特別徴収させると法律で規定されているのです。そういうわけで、「なぜ勝手に住民税の徴収も義務化させるのか」という疑問を持たれる方も多いのですが、それは認識がそもそも違っていて、もともと法律で所得税だけでなく住民税も事業者が徴収することになっているのです。そもそも法律がそう規定されているのに、実際には市区町村の実務上の取り扱いとして、特別徴収しない形で給与支払報告書が出される場合、応じてきたわけです。事業者側が「特別徴収は面倒だからうちの会社はやらない」と言えば、市町村側が実務上の取り扱いとして、「わかりました。では、普通徴収でやってもいいですよ」というのを認めていただけの話なんです。

ただ、この市町村側の法律よりも緩いこうした取り扱いは、住民税の徴収率が下がるということにつながっていて、市町村にとっては深刻な問題となっていたわけです。そのため、もともと特別徴収は事業者側の義務と法律で規定されているのだから、事業者側にきちんと住民税を徴収させよう、という話になったわけです。

 

ご質問の方も、所得税は源泉徴収して国に納付しているのではないかと思います。住民税の特別徴収もそれと同じ話なわけです。いずれも法律で規定されている話です。ここはおとなしく従わざるを得ないのではないかと思います。

 

ただ、この特別徴収について、実務上、市区町村の現場では、そこまで強硬に対応していない自治体もあるように思えます。実際、いったん特別徴収となった従業員について、給与所得者異動届を出して普通徴収に切り替えの届け出を出したものは認めていたりしているようです。私も顧問先で実際、そういった例に出くわしました。以前よりは特別徴収する形にはなっていますが、実際には所得税の源泉徴収ほど強制はしていないといったところだと思います。その辺は自治体にもよりますので、各市区町村に確認してみてください。

 

それから、特別徴収について、このご質問は事業者側からのご質問でしたが、従業員側からもご質問をいただくことが多いです。それが、ダブルワークをしている場合の住民税という話です。これは、以前の私のブログにも書きましたので、参考にしてみて下さい。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e5%89%af%e6%a5%ad%e3%81%8c%e4%bc%9a%e7%a4%be%e3%81%ab%e3%81%b0%e3%82%8c%e3%81%aa%e3%81%84%e4%bd%8f%e6%b0%91%e7%a8%8e%e3%81%ae%e5%be%b4%e5%8f%8e%e6%96%b9%e6%b3%95%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%aa%e3%81%ab

 

 

以上、今日は住民税の特別徴収の話でした。



今日は実際に私のブログに投稿のあったものに対しての回答を載せたいと思います。

 

質問の内容

 

普通のサラリーマンです。

不動産投資がバレないよう、

住民税は自分で今まで支払ってました。

 

会社から来年からは、会社が払うのが義務になったので

自分で支払わないで欲しい。

と言われたが、少し拒んだところ、

会社側で支払う事について何か問題でもあるのか?

と何か、勘ぐられて気分が悪くなったので、

分かりましたと承諾しておきました。

 

不動産投資は現在、少額ですがプラスの状態です。

 

来年から、会社が住民税を支払う事により、

不動産投資はバレてしまうのでしょうか?

何か、バレない良い方法があれば教えて下さい。

 

もしかしたら、副業という事で

仕事が首になる恐れもでるのかなと思ってもいます。

 

 

まず、このような質問が出る背景を少し解説したいと思います。これは会社での住民税の特別徴収が義務化されたことがあります。住民税は原則として会社で支払い給与から天引きされることになったこと、これがかかわっています。給与から特別徴収(給与から住民税を天引き)する場合、特別徴収税額通知書というのが会社に届きます。そこにはその方の所得の内訳が書かれています。つまり、これを見ると、本人の収入(会社の給与以外の収入があればそれも)がわかってしまうというわけです。こうしたことが背景にあり、住民税の特別徴収が義務化されたことについて警戒しているサラリーマンは意外と多いのです。

 

副業が禁止されているケースは多くの企業であります。それは、個々の企業の就業規則でどのように書かれているのかの話なので、確認していただきたいところです。一方で、不動産投資まで禁止しているところはあまりないだろうと思います。ただ、その不動産投資をしていることを会社に知られたくないということはあるだろうと思います。

いずれにしても、住民税が特別徴収されることによって、原則として住民税はすべての所得が合算されるため、特別徴収を通じて会社に副業がばれてしまうことを恐れている方は結構、いらっしゃるということです。

さて、これにはどのように対処したらいいのでしょうか?

実は、これは確定申告の仕方を知っておくだけで対処できる部分もあったりします。では、どのようにしたらいいのでしょうか?

 

具体的には確定申告の際に、申告書の第二表(確定申告書の二枚目)の右下に「住民税・事業税に関する事項」というのがあります。そこに「給与・公的年金等にかかる所得以外の住民税の徴収方法の選択」という欄があります。「給与から差し引き」と「自分で納付」のどちらかに○をつけるようになっています。そこの「自分で納付」に○を付ければいいということです。確定申告の際に忘れずに○を付けてください。

上記のように「自分で納付」に○を付けると、給与の収入は会社から天引きになりますが、一方で、給与以外の収入はご自宅に住民税の納付書が届くことになります。これによって、サラリーマンが副業をしていても会社にはばれることがないというわけです。

 

ただ、次のようなケースでは、副業や他で働いていることがわかってしまうことがあります。

たとえば、副業が赤字だった場合です。

副業で事業をしていて赤字だった場合、給与所得と通算されます。通算された後、住民税の計算をします。会社での給与所得の他に、事業所得でマイナスがあれば、そのマイナス表示された住民税の特別徴収税額通知書が会社に届きます。それをみられてばれてしまうわけです。

 

また、サラリーマンが他で働いていた場合、そのもう一か所の収入が給与所得の場合、これもばれてしまう可能性が高いです。この場合、両方とも給与所得ですから、二か所の収入が合算され手住民税が計算されます。上記の「自分で納付」に○をつけて住民税が普通徴収になるのは、あくまでも「給与と年金以外の所得」の話です。もう一か所の収入も給与であれば2か所の給与が合算されて住民税が計算されるというわけです。そのために会社にばれてしまうことはあり得ます。

 

ただ、近年、特に、マイナンバー制度が導入されて以降、市区町村から会社に送られてくる特別徴収税額通知書をみますと、個々の従業員さんの所得の欄はシールが張って合って見えないようにして送られてくる傾向があります。会社の方としてはそのまま本人に渡すだけなので、住民税の徴収税額しか表示されません。そのため、たとえばうっかり第二表の住民税の欄の「自分で納付」に○を付けるのを忘れたとしても、会社にはばれずに済む可能性もあります。(もっとも会社の総務担当者がうっかりそのシールを剥がしてしまえばわかってしまいますし、住民税額が給与の額に比べて多ければ怪しまれる可能性はありますが・・・)

 

いずれにしても、第二表の右下の住民税の欄という部分の活用方法というのは知っておいていいものだと思い、今回は紹介させていただきました。

実は、第二表の下の欄は結構、面白い項目(マニアックな項目)が多く、私も仕事上、確定申告書の第二表の下の欄について、結構、調べてみたりしたことがあります。また何かの機会に、確定申告書の第二表の下の欄についてご紹介できればと思います。

 

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