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この時期は税金の出費が多い時期です。また、事務処理すべき書類が多い時期でもあります。そのことは把握していますでしょうか?

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どんなものがあるのか、まとめてみました。

 

労働保険の申告納付・・・6月1日から7月10日

算定基礎届の提出・・・7月1日から7月10日

源泉所得税(納期の特例)の納付・・・7月10日

固定資産税の納付・・・6月末

普通徴収の住民税の納付・・・6月末

 

これらに加えて、算定基礎届に関しては、新規に社会保険に加入した事業所は社会保険の調査の案内が来ていると思います。また、算定基礎届にあわせて、調査対象になっている事業所もあるはずです。算定基礎届の提出時に、賃金台帳などの書類を用意しないといけません。

 

この他にも治療院の場合、「事業税のお尋ね」が来たりしていると思います。保険診療と保険診療以外の内訳のお尋ねです。この回答もだいたい今の時期です。

介護事業所の場合、7月は処遇改善加算の報告書の提出があります。ほぼすべての介護事業所で該当するはずです。提出期限は7月末です。

 

このように提出すべき書類や支払うべき税金が多いのがこの時期なのです。

これらについて、次回以降、順番にこのブログでご紹介していこうと思います。



さて、今日はちょっと視点を変えた論点の話をします。

商工会議所とか青色申告会、これらは入ったほうがいいのか、という話です。

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実は、商工会議所や青色申告会の話というのは以前から顧問先からも話のついでに聞かれることの多い論点でもあります。そもそもこうした組織は何をやっていて、加入するとどのようなことがあるのか、ご存知でしょうか。

まずは、今日は商工会議所について、書いていこうと思います。

商工会議所は地域ごとにある中小企業や個人事業主を支援する組織です。

会員は平成30年3月現在で約8万件近くもある巨大組織です。

地域によっては商工会議所ではなく、商工会と呼んだりしますが、中小企業の経営者にとっては同じ組織と考えていいのだろうと思います。

商工会議所の主な役割は、中小企業や個人事業の経営者の経営サポート業務です。では、どのようなサポートをしているのでしょうか。

その役割は、創業支援からはじまり、融資支援、経営相談など様々です。私なりにまとめれば、商工会議所を利用する利点は以下の3点に集約されると思います。

1.創業支援、事業承継支援などの経営サポート業務を受けられる

ある意味、これは商工会議所の業務の中核と言ってもいいと思います。税理士や中小企業診断士、弁護士などと連携し、税務や法律を始めとしたさまざまな経営支援をしています。

とりわけ、創業支援事業承継は力を入れている分野のようです。事業を始めるにあたって、相談できる相手がいない場合、商工会議所に相談に行くのは一つのやり方でしょう。

また、最近は事業承継にも力を入れているようです。事業承継というのは、今やっている事業を自分のお子さんやお孫さんに次いでもらうというものです。近年は、お子さんやお孫さんのような親族ではなく、親族でない人に引き継いでもらうケースもあるようです。

こうした事業承継をサポートしたりというのも商工会議所でやっています。

創業支援や事業承継の相談がある場合、商工会議所は利用価値があります。

2.マル経融資の活用ができる

商工会議所に入会している会員の中には、これを活用するために加入しているという人も少なからずいるはずです。

商工会議所では通称「マル経融資」、「小規模事業者経営改善資金融資」という日本政策金融公庫の融資が受けられます。この融資の特徴は主には二つです。一つは、「無担保・無保証」の融資であることです。商工会議所が融資についてある程度、保証することで「無担保・無保証」が可能になっています。もう一つは、融資利率が低利であることです。年利1.11%(平成30年4月現在です)で融資を受けられます。融資可能額は最大で2,000万円です。

この融資を受ける場合、商工会議所で中小企業診断士などの経営指導員から経営相談を受けることが要件とされています。この融資を受けたいがために会員になるケースもあるようです。

3.小規模事業者持続化補助金を活用できる

小規模事業者持続化補助金というのをうけるためには商工会議所での面談が必要となります。小規模事業者持続化補助金というのは、新たな販路を開拓するために、地道な方法での販路開拓を計画した事業者に対して、販路開拓のためにかかった費用の3分の2、最大で50万円補助金が出るというものです。(補助金の詳細は後日のブログでご紹介いたします)

この補助金を使う場合に、様式4号という商工会議所が発行する書類が必要となっています。そのために必ず、商工会議所に行かないといけないわけです。

ただ、この補助金を使うにあたっては、商工会議所に入会していなくてもいいことになっています。この補助金を使うために商工会議所に入会するというのは必ずしもそうしなくてもいいことでので知っておきましょう。

以上が、商工会議所に入会することのメリットです。

では、会費はいくらかかるのでしょうか?

まずは加入金という入会時にだけかかるのが3,000円あります。あとは、資本金の額によって年会費が決まります。一番年会費が安いのが資本金500万円以下の15,000円です。月額1,000円程度なので負担はそれほどでもないです。

さて、ここからは私見です。

商工会議所に入ったほうがいいのかというのはどう考えたらいいのでしょうか?

まず、小規模事業者持続化補助金を受給するために加入するというのはその必要はないとわかります。あとは経営相談とマル経融資です。マル経融資については、この融資を受けるために商工会議所に加入するというのも動機としてはあるのかもしれません。しかし、同じような融資制度は市区町村の制度融資にあったりしますし、必ずしもマル経融資にこだわる必要はないかなと思っています。

結局、商工会議所に入会する最大のメリットは「経営相談」です。特に、創業時や事業承継時です。アドバイスを受けたりするのにたとえば中小企業診断士や我々税理士に、別に相談すれば有料になります。それが会費を支払えばサービスが受けられるわけですから大きなメリットです。商工会議所に入会するのであれば、こうした経営相談を受けたり、経営に有用な情報提供を受けたりすることもできます。結局はこれが一番のメリットなわけです。

それから、こんなことを言ったら商工会議所の方に怒られるかもしれませんが、必要なアドバイスを受けられたら商工会議所自体は退会してもいいのではないかと私は考えています。会費負担がそれほど大きくないので、特に利用することがなくても加入したままにしてもいいのかもしれませんが、必要なければ退会していいのではないかと思います。自社にとって有用なサービスだけ活用していく。商工会議所はそうやって利用してはいかがかと思います。

自社にとって必要なサービスが何なのかをよく考えたうえで加入の検討をしてはいかがかと思います。



最近のニュースをみていると、「う~ん」と首をかしげたくなるような話が多いです。

いくつか挙げてみましょう。

・財務省の公文書改ざん問題

・防衛省のイラク日報隠ぺい問題

・厚労省の裁量労働制をめぐるデータ問題

私は結構、国会中継をテレビで見る(一応、政治学科出身なので)のですが、これらの問題はどの問題も釈然としない感じがあります。

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今日はそうした最近のニュースの中で、「人命救助の際に土俵上は女人禁制だから人命救助中の女性に土俵から降りるように促した」というニュースがありました。当然というか、かなりの批判があるようです。

 

いまだに女人禁制というのは結構あります。昔は(江戸時代くらいまでは)確か、富士山も女人禁制だったと思います。女人禁制となっている世界遺産の地域とかも確かあったはずです。甲子園も女子マネージャーはグラウンドには入れないのではなかったかと思います。

守らないといけない文化もあるのでしょうし、時代とかいう言葉では片づけられない部分もあるのでしょう。女人禁制を必ずしも否定はしません。しかし、さすがに今回のケースは人命救助という事態でそれはないだろうということです。

さて、今日のブログはこうしたニュースの感想を述べたいわけではありません。経営に関することを書くブログです。

女人禁制のこの話を聞いて思ったのは、場面に応じた対応というのは難しいという話です。土俵に上がった女性をみて土俵から降りるように促したのは若い行事だったとか言う話です。その若い行事からしたらマニュアルに沿った対応をしただけでしょう。こんな非難にあうとは夢にも思っていないことだったと思います。

要するに、言いたいのは、臨機応変に対応するというのは難しいという話です。経営にはマニュアルがないです。その都度、臨機応変に対応しないといけません。では、臨機応変に対応するというのはどういうことを言うのでしょうか?

 

君たちはどう生きるか」(岩波文庫、吉野源三郎著)という最近、とても話題になっている本があります。

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この本の主題は「世間の目よりも何よりも、君自身が、まず人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。」ということです。主人公は中学生の「コぺル君」です。学校で起こる様々な出来事に悩み、近所に住む叔父さんのノートにその解決を求めます。主人公は中学生ですが、大人でも答えを出すことが難しいものもあります。むしろ、大人の場合、組織のしがらみなどから、道徳とは反する回答を出してしまうことがあります。

 

「財務省の公文書改ざん問題」「防衛省のイラク日報隠ぺい問題」「厚労省の裁量労働制をめぐるデータ問題」そして、女人禁制と土俵をめぐる問題。何かすべてに共通してあるのは、「人としてどうあるべきか」のように思います。官僚のようなエリートでも「人として」から外れてしまいます。「人としてどうあるべきか」これは、すべての経営者にも共通した課題であるように思います。

 

もし読んでいらっしゃらない方がいれば、是非、読んでいただきたい本だと思い、今日はご紹介いたしました。(ちなみに、漫画にもなっているようです。漫画版で読んでみてもいいと思います)



なかなかブログの更新ができずにおりました。

今日は「中小企業経営者と税理士の関わり方」について、ちょっと考えてみようと思います。

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その前に、経営にとって一番大事なことは何でしょうか?

個人商店だったり、会社でやっていてもほぼ一人でやっているケースもあります。一方で、従業員の数が100人、200人もいる中小企業もあります。中小企業と言っても千差万別です。経営課題もそれによって異なります。

 

しかし、どの規模でやっていても共通してある経営課題があると思います。それが資金繰りです。お金のやりくり。これは中小企業にとっては共通の課題です。経営にとって一番大事なのは、お金のやりくりです。これは共通しています。

 

黒字倒産という言葉があります。損益上は黒字なのに、経営上やっていけなくなる。なぜそんなことになるのかと思われるかもしれません。実際、このような例は珍しくはありません。損益は黒字なのに倒産してしまう。これは会計の考え方と資金繰りというお金のやりくりが一致していないということを意味しています。

 

私は顧問先にも一貫して「税金を多少支払うことになってしまっても、あるいは、銀行借入を多少したとしても、資金繰りをまずは重視した経営をする」という話をしています。このような話は最初は理解されないこともあります。

まず、税金に限らず「支払いを少なくする」ことをより重視する経営者が多いです。手元からお金が無くなることを嫌がる。気持ちはよくわかります。また、銀行融資を積極的に受けて資金を潤沢にすることを勧めています。これも、銀行の借入に対してネガティブなイメージを持つ経営者からは理解されないことがあります。しかし、今現在、銀行融資が必要ない状況であっても、将来にわたって銀行融資が必要でないかどうかは分かりません。銀行融資が必要なくらいに資金がひっ迫してから銀行からお金を借りようとしても融資を受けるまでに時間がかかりますし、借入するにも不利になります。

資金繰りを重視した経営というのは「キャッシュ」を十分に持って経営していくことです。会計上の損益や税金の支払いだけでなく、社会保険だったり、各種保険だったり、様々なものを駆使して「キャッシュ」をいかに増やしていくのか、これを第一に考えていくのが、経営にとって一番大事なことだと思います。

 

中小企業の経営者が、税理士に求める役割として、「税金を少なくすること」を求めるのは一側面としては間違いではありません。節税対策などを通じて、税理士に税金の支払いを少なくすることは、ある意味、税理士に求める役割としてわかりやすいですし、経営にとっても税金を少なくしていくことは重要なことです。

しかし、税理士に求める役割を「税金を少なくする」ことが一番とするのは中小企業と経営者の関わり方としてどうなのだろうかと私は考えています。税金を少なくするだけが税理士の役割ではないと私は思います。

 

では、中小企業の経営者は税理士をどのように位置づけ、かかわっていくべきなのか?

私は、中小企業の経営者が税理士とかかわる時、その企業がより長く経営していく環境を整えていくことを一緒に考えてもらうことだと思っています。様々な経営課題がある中で、「税金の支払いを少なくする」だけが税理士に求める役割だとしたら、中小企業の経営者は大変もったいないかかわり方だと思うのです。税理士の中には、「いかに(税金を含めた)支払いを少なくするか」を強調している税理士もいると思います。こうした税理士の言うことは経営者にとってはとてもわかりやすいです。しかし、支払いを少なくすることに焦点を絞った経営は危険です。同時に、いかにキャッシュを増やしていくかも考えていかないと、黒字倒産という事態に陥りかねないのです。

 

最近読んだ本に『金融排除』(幻冬舎)という本があります。

この本の中には、銀行や税理士が中小企業とどうかかわっていくべきなのかについて書かれている部分があります。

「銀行、税理士に求められるのは、過去ではなく将来のために仕事をすることだ」

私はまったくその通りだと思うのです。これは中小企業の経営者も理解しなければならない部分だと思います。

 

私は今後も、経営者の皆さんと「御社の未来」をよりよくすることを今後も考えていきたいと思っています。



地方銀行が人材派遣業に進出するよう金融庁に申請を出しているようです。どうやら認められる方向らしいです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180123-00000139-jij-pol

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記事によると、銀行業務は低金利の時代ということもあり、従来のようにお金を貸しだすだけでは利益が上がらないから、人材派遣業に進出して、銀行の本業以外で利益が出る仕組みを作る、というような趣旨が書いてあります。人材派遣もやってそれで利益を稼いでいこうという趣旨はよくわかります。この低金利の時代ですから無理もない話でしょう。

 

私が関心があるのはそうした銀行側の事情というよりは、こうした銀行側の事情も受け、中小企業側はどう銀行の活用方法が今後、ますます変わってくるだろうということです。

 

皆さんにとって「いい銀行」とは何でしょうか?

金利が安いとか、貸してほしい時に貸してくれるとか、いろいろあるでしょう。私は、中小企業にとっての「いい銀行」というのは、単なる「金貸し」でないというところだと思っています。

 

従来から銀行はいろいろな情報を持っています。生命保険や金融商品の情報なんかも、金融機関でないと知り得ないようなことも情報として持っていたりします。「この会社が危ない」なんていう情報も、銀行がいち早くつかみます。私も会計事務所で勤務していた頃(まだ駆け出しの20代のころ)、マスコミが公表する直前に、ある金融機関の経営破たんの情報が入りました。その情報は銀行からの情報で知り得ました。

 

要するに、現代の企業経営にとって、最も必要な「情報」をいち早くつかむことができるのが銀行なんです。銀行との付き合いをしていく必要がある(つまり、銀行に借入をする)理由がここにもあるわけです。

 

さて、中小企業にとって最も大事な情報は何でしょうか?

それは「ヒト」に関する情報だと思います。

銀行はいろいろな取引先があります。いろいろなところにいろいろな人を紹介できる「ヒト」に関する情報を持っています。

実際、私も銀行に「士業」の方を紹介してもらったりしたこともあります。

もともと銀行はいろいろな業種の取引先があり、「ヒト」を紹介する窓口には適しています。その意味からしても「人材派遣業」に進出するのは、ある意味自然の流れと言えます。

銀行が「派遣業」もやるとなれば、銀行との取引は、困った時の「ヒト」の紹介というのも今後は出てくるということです。

もっと言えば、「ヒト」の紹介もできる銀行と取引していくべきです。

 

「〇〇というような分野に詳しい人、知りませんか」とか「社員の〇〇が辞めてしまうのでヒトが足らなくて紹介してほしい」とか、そういった相談は銀行にする時代になるのかもしれません。

銀行を選ぶ選択肢として「ヒト」を紹介してくれる銀行を選ぶという時代が到来するのかもしれません。

 



朝ドラ「ひよっこ」ですが、最終盤に差しかかっていています。

もちろん、ヒロインの「みね子」を演じる有村架純さんがどうなるのかも気にかかりますが、このブログは経営についての様々な問題をテーマにしたブログです。その観点から私が注目したいのは、そのみね子の茨城の実家で新事業を立ち上げる という話が参考になる話ですので取り上げたいと思います。

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朝ドラを見ていない人もいらっしゃると思いますので、「ひよっこ」のドラマのあらすじを簡単に説明しておきます。

物語の舞台は、前回の東京オリンピックがあった1964年(昭和39年)頃から始まります。茨城の山奥の村(奥茨城村という村)で高校生3年生になっていたみね子ですが、ある日、東京に出稼ぎに行っていたお父さんが突然、失踪します。突然のお父さんの失踪に、矢田部家の生活はひっ迫します。そんな状況の中、お父さんに代わって矢田部家を支えて実家に仕送りをするため、みね子は上京します。この時代にあったいわゆる「集団就職」です。その後の東京で働いていた会社が倒産し、失踪したお父さんが行ったことのある洋食店で働き始めていたところ、失踪したお父さんが見つかり・・・といった話が朝ドラ「ひよっこ」のだいたいの話の筋です。

 

さて、そのヒロインみね子の実家の矢田部家では、「そもそもこうやってみね子が東京に行って仕送りをしないといけない状況を改善しないといつまでたっても豊かな生活ができない」とみね子のおじさん(お父さんの弟)の宗男が新しい事業の立ち上げを提案します。

そして、新しい事業として提案するのが「花」の栽培ビジネスです。「花き」ビジネスといいます。

「花き」というのは、観賞用の植物と定義されています。現在においては、年間1兆円もの市場規模のあるビジネスです。

数字が大きくなると、わかりづらいので、同じ1兆円規模のビジネスを探してみると、野球やサッカー、ゴルフ、相撲などのプロスポーツがほぼ1兆円のようです。

 

ちなみに、私の関与することの多い治療院ビジネス(整骨院の他、リラクゼーションサロンなども含める)は4兆円規模だそうで、介護サービス事業はその倍以上のなんと9兆円にも上るビジネスだそうです。どちらの産業も市場規模が拡大傾向で、特に介護サービス関連産業は2025年には15兆円規模になるとの民間シンクタンクの試算もあるようです。

 

さて、オリンピックの後、この花きビジネスに参入しようというのはなかなか目の付け所が良かったと思います。まずは、全体を俯瞰してみた時に成長が見込める産業であった点です。このドラマでも語られていますが、昭和40年代というとみんなが豊かになってきて、「モノ」が足りてきている頃です。「花」を鑑賞したりという「ココロ」を満たす産業というのはこの時代の成長産業と言えます。

新しいビジネスを始めるにあたっては、こうした大きな視点からのものの見方というのは非常に重要です。日本全体、場合によっては世界経済の視点からの経済の動向から物事を判断していく物の考え方が必要です。

また、コストの面からもプラス面が多いと言えます。花は最初の苗木や種などはコストがかかりますが、最初、きちんと育てられればその後のコストは抑えられます。また、地理的に見ても茨城から大消費地の東京へは遠いわけでもなく、輸送コストが比較的かかりません。コストが低く抑えられれば、仮に少ない売り上げであっても利益を出すことがより容易になります。同じ100万円の売上でも、原価が10万円しかかからない場合と50万円も原価がかかる場合とを比べてみればわかります。人件費が同じようにかかるのであれば、原価がかからないビジネスはそれだけ利益が上がりやすくなるだけでなく、リスクも少ないということが言えます。

 

また、もともと農家ですから、「植物を育てる」という意味では比較的今までやっていたことに近いビジネスです。これも重要な要素だと言えます。これからやる産業が全く新しい分野だとなかなかとっつきづらいです。いくら成長産業と言っても全く経験のない分野のビジネスを始めるとなると一から学びなおすことになります。

たとえば、治療院の先生がまったく経験のない農業を始めるというのを想像してみればわかります。軌道に乗せるまでに時間がかかりますし、コストもかかることが容易に想像つきます。すでにそのビジネスに参入している人に追いつくのに時間がかかるだけでなく、後から参入した人に追いつかれてしまうこともあるかもしれません。

 

朝ドラ「ひよっこ」では、この全体を俯瞰した考えを、ヒロインみね子のおじさんがやっています。そして、素人がいきなり全く知らない分野のビジネスを始めても上手くいきません。それを習う師匠もきちんと調べて、そこもケアしています。

治療院の場合、リラクゼーションサロンなどのビジネスが近いのと同じです。介護事業であれば家事代行サービスなどが近接ビジネスであるのと同じ関係と言っていいでしょう。つまり、今あるノウハウやマンパワー、場合によっては設備なども現状のものを使えることもあるでしょう。仮にそのビジネスがうまくいかなくなったとしても、全く違う産業に進出したのと違い、その設備やマンパワー、ノウハウは本業に使うことも可能です。また、違う近接ビジネスに使うこともできます。

 

新規事業に進出する場合のポイントをまとめるとこんな感じでしょうか。

  1. ビジネス全体を俯瞰して、成長が見込める分野であるかどうか
  2. 売上とコストを比較して、利益が上がることが見込めるか
  3. 現状のビジネスでのノウハウ、設備、ヒトを使える分野であるかどうか

 

これに加えていえば、資金が潤沢にあるかということを挙げてもいいと思います。銀行から借り入れをして資金準備をしてもいいと思いますが、とにかく何か始めるにあたっては、思ったよりもお金がかかるものです。資金が十分に用意されているのかというのも重要な要素です。

 

治療院でも介護でも、昨今医療保険や介護保険という国の「保険」が低調気味です。

しかし、これらの産業全体としては、先ほど書いたように拡大基調にあるビジネスです。

視野を広げて、自分の今あるノウハウに少しだけプラスアルファすることで何ができるのかを考えるという視点は朝ドラ「ひよっこ」からも学べる点だと思います。



さて、今日は銀行の話です。

そもそもどの銀行で口座を開き、どの銀行で借入をしたらいいのか、経営者の皆さんはどうやって決めているのでしょうか?

統計を取っているわけではないですが、「なんとなく」とか「大きな銀行だから」とか「近くにある銀行だったから」とか・・・

銀行選びも「経営戦略」だとしたら、どの銀行をメイン銀行にするのかというのは、経営を左右する重要な要素です。

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では、どういう基準でメイン銀行を決めたらいいのでしょうか?

決める際の基準はまずは自社がどのくらいの年商規模があるかによります。

一般的に銀行の規模は次のような感じで考えていいと思います。

信用組合<信用金庫<地方銀行・第二地銀<都市銀行

 

「〇〇信用組合」というのは一般的にはかなり小規模の銀行です。信用金庫になると地域でそれなりの取引規模のある銀行という感じです。地方銀行は信用金庫よりもさらにエリアが少し大きいイメージです。都市銀行は全国規模になる感じです。

 

年商でいうと、

信用組合・・・年商数百万円~年商数千万円

信用金庫・・・年商数千万円~年商1億円程度

地方銀行・・・年商数千万円~年商10億円程度

都市銀行・・・年商10億円超

 

こんなイメージでいいと思います。

 

これは、各銀行が出している預金量と貸出額の数字を見ればイメージできます。

信用組合は、預金量や貸出額が1000億円以下の規模です。信用金庫になると1000億円くらいから1兆円くらいの規模になります。地方銀行になるとこれが1兆円を超える規模になります。都市銀行になるとこれが数十兆円規模になります。例外はありますが、だいたいこんな感じです。

 

具体的に数字を追ってみてみましょう。地方銀行の上位5位までは次のような感じです。

単位:億円

銀行名 横浜 千葉 福岡 静岡 常陽
預金額 122,284 100,733 84,244 87,151 77,287
貸出額 97,240 84,611 72,452 73,931 56,564
預貸率 79.5% 84.0% 86.0% 84.8% 73.2%
店舗数 209 188 170 205 179

 

この表で「預貸率」というのがあります。これは、銀行に預け入れしてもらっている預金額に対していくら貸し出しているかという率です。これについては、あとで改めて説明します。

金額が大きいのでピンと来ないかもしれませんが、地方銀行の上位5社までは、都市銀行に迫るくらいの大きな規模と言えます。

 

次に、信用金庫の上位5社です。

単位:億円

銀行名 京都

中央

城南 岡崎 埼玉懸 多摩
預金額 42,306 35,787 26,116 24,750 26,442
貸出額 22,342 21,479 14,791 13,930 10,134
預貸率 52.8% 60.0% 56.6% 56.3% 38.3%
店舗数 128 85 96 96 78

 

いずれも1兆円を超える規模です。結構大きいですね。ですが、地方銀行ほどではないことがわかります。

 

ちなみに、信用組合についても上位5社を調べてみました。

単位:億円

銀行名 近畿

産業

茨城県 長野県 大阪

協栄

大東京
預金額 13,338 11,371 9,194 5,728 5,652
貸出額 8,105 4,944 2,777 3,397 3,058
預貸率 60.8% 43.5% 30.2% 59.3% 54.1%
店舗数 33 84 51 13 45

 

 

信用組合は近畿産業信組のような大きな信用組合だと信用金庫並みの規模になります。また、京都中央信金のような大きな信用金庫だと地方銀行並みです。横浜銀行は地方銀行というより、都市銀行に近い大きな規模の地方銀行です。しかし、これらは例外で、ほとんどが信組だと、信用金庫の半分以下の規模で、信用金庫は地方銀行の半分以下の規模と言えます。

 

こうした銀行の規模感というのは「どの銀行に口座を開くか」「どの銀行で借りるか」を決める際の重要な要素です。年商が1000万円程度かそれ以下の事業だったら都市銀行や地方銀行では、ちょっと大きい銀行になってしまいます。信用組合や信用金庫で検討すべきです。

逆に、年商が10億円近くある会社であれば、信用組合や信用金庫ではちょっと小さすぎます。地方銀行や都市銀行で検討すべきです。

 

また、預貸率(預かっているお金をどれくらい貸し出しているか)というのも重要な要素です預貸率が高いほど、銀行の本業である「お金を貸す」ことに熱心であることを示しています。つまり、お金を貸すことに積極的であるということです。一つの判断基準として、預貸率の平均値は約50です。もちろん、預貸率はいろいろな要素が影響しているわけですが、預貸率をメルクマーク(指標)の一つと捉えてみるのもいいと思います。

 

ちなみに、私の事務所のある東京の府中やその周辺の金融機関をいくつか調べてみました。多摩信用金庫と大東京信用組合は上記に挙がっていますので、それ以外の金融機関について、下記に挙げておきます。

単位:億円

銀行名 西武

信用

八千代 東日本 昭和

信用

預金額 17,490 21,227 18,501 4,057
貸出額 14,470 14,660 15,559 1,800
預貸率 82.7% 69.1% 84.1% 44.4%
店舗数 73 84 80 19

 

西武信用金庫や東日本銀行の預貸率の高さが目立ちますね。

年商が1000万円未満であれば、昭和信用でもいいかもしれませんが、やや預貸率が低めなのが気になります。

 

これらの上記に上げたような数字は、ネットで調べればすぐにわかるものばかりです。こうした数字を把握したうえで、自社のメイン行を決めてみてはいかがかと思います。

銀行は経営を左右する重要なパートナーです。今取引のある銀行についても、この際、検討してみてはいかがでしょうか?

※ 上記の数字はなるべく最新の数字を調べてお示ししましたが、時点が必ずしも一致していませんので、その点、ご留意ください。



さて、今日も銀行融資の話です。

以前に顧問先からこんな相談がありました。

「少し資金ができたし、借入金の残高が少なくなってきたので、A銀行の融資を繰り上げ返済しようと思うんです。返済してしまっていいと思いますか?」

さて、このご相談に皆さんだったらどのように回答されるでしょうか?

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その前に、「借金=マイナスの資産」だから借入金が少なければ少ないほどいい経営をしているという考え方は、誤解があるというのはこのブログでは何度も書いてきたことです。それよりも大事なのは、現預金をなるべく多く持つということです。「借金をしたくないから個人の預金を資金繰りに回す」というのは本末転倒です。

 

この基本的な考え方を元に、繰り上げ返済について考えてみましょう。

 

まず、繰り上げ返済というのは銀行はどうとらえるのか?

銀行は銀行にとっての商品である「お金」という商品を貸し出して、利息をもらって収益を上げる商売です。その貸し出しているお金を期日前に返されてしまうというのは、銀行にとってはあてにしていた金利がもらえなくなります。しかも、期日前に返済されてしまうというのは予期していないことです。営業するなりして、期日前に返された分は他に貸し出さないといけません。経費を使って営業活動して新たな貸出先を探さないといけません。つまり、銀行にとって繰り上げ返済されるというのは、少なからず負担になるわけです。

 

では、経営者側から見た場合、繰り上げ返済はどういう効果があるのか、考えてみましょう。繰り上げ返済されれば基本的には銀行は「なんで早く返すんですか?」とは言いません。何も言わずにそのまま受け付けます。返すと言っているものを返さないでくれとは言えないわけです。それはそうなのですが、繰り上げ返済して借入金がゼロになってしまうと、経営者側からすると、その銀行との関係が切れてしまうということを意味します。一般的に、繰り上げ返済するよりも新たに借入する方がエネルギーがいります。つまり、もうその銀行と付き合わないのであれば繰り上げ返済してもいいでしょうが、何かあったら(資金繰りで困ることが起こったら)また借りようと思っているのであれば、基本的には繰り上げ返済はしないほうが無難です。

また、そもそもなのですが、なぜ繰り上げ返済しようとするのでしょうか?

「早く返してしまいたい」ということでしょうか?あるいは、利息はもったいないということでしょうか?

経営というのはいい時はいいですが、悪くなると短期間に資金繰りが悪くなってしまうことはよくあることです。それでも繰り上げ返済したいのであれば、最悪の事態を想定しても問題ない範囲で、全部ではなく借入金の一部を繰り上げ返済するくらいでいいのではないかと思います。

 

また、たとえば「日本政策金融公庫で融資を受けられたので、銀行の借入金を返済してしまおうと思う」というような話もよくあります。

これも慎重にやる必要があります。ケースバイケースですので、公庫で受けた融資で民間の金融機関の融資を一括返済するのがいい場合もあるかもしれませんが、その場合であっても、「公庫で融資を受けられたからそのお金で一括返済する」などということを銀行に言ってしまうようなことはやめたほうがいいです。こんなことを言ってしまっては銀行側の心証はかなり悪くなります。先ほども書きましたが、銀行にとって繰り上げ返済されるのは、収益が減ることを意味します。決してうれしいことではありません。それを「他で借りたからそのお金で返す」などという話を正直にしてしまっては、今後、その銀行との付き合いがやりにくくなります。返すにしても「資金が潤沢になってきたので繰り上げ返済しようと考えています」などと言ったほうがいいでしょう。

 

ということで、まとめますと、繰り上げ返済は基本的にはやめておいた方がいいです。ですが、どうしても繰り上げ返済したいのであれば、全部ではなく一部にしたほうがいいです。さらに、全部を繰り上げ返済するのであれば、「資金があるので返済したい」などと言っておく といったところです。

 

銀行は企業経営にとっては要になる重要な部分です。その意味でも、銀行がどう考えているかを知ることは大変重要です。しかし、銀行の話というのは誰も教えてくれません。このブログでは何度も説明していますが、税理士が関与していても税理士も融資に関しては素人同然の人も多いため、結局、どうするのが一番いいのかわからずにいるという経営者が多いように思います。

次回も引き続き融資の話をしたいと思います。



前回に引き続き、銀行の話を今日もしてみたいと思います。

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よく、銀行口座を作って銀行との関係を作るというような話をする経営者がいます。

口座を開いてお金を預け入れすれば関係が作れるというような話です。

 

これを銀行側から考えてみましょう。

銀行側から見ると、預け入れてもらったお金は、引き出したいと言われたらすぐに返さないといけないお金です。当たり前の話ですが、こういう当たり前のことが重要なんです。

この当たり前の話を銀行側からすると、預金者の預け入れのお金は「負債」勘定となるものです。

預け入れする我々預金者の側は預金通帳の残高は「資産」ですが、銀行からすると「負債」なわけです。当然と言えば当然なのですが、誰かの資産は誰かの負債になっています。「簿記」というよりかは「経済」の基本的な考え方です。

 

さて、銀行口座を開いて関係を作るという話です。

口座を開いただけでは、銀行側からすると、ただ「負債」が増えるだけです。(もちろん相手勘定である「現金」も増えていますが)つまり、銀行的には収益に貢献できているわけでもないわけです。

前回のブログでも書いた通り、銀行の本質は「金貸し」です。「お金」という銀行にとっての「商品」を誰かに貸すことによって「利息」という収益を得るビジネスモデルです。

本来は、預け入れてもらった預金を他の誰かに貸すことによって収益を得ているわけで、預金してもらうことも銀行の大事な業務なわけですが、今、銀行の置かれている状況というのは空前のカネ余り状態です。銀行が大量に持っている国債を日銀に売って売った代金である日本円が銀行の手元にあるわけです。(日銀から売却するよう言われたから売ったわけですが)

ご存知だと思いますが、今は「マイナス金利」という時代です。銀行は手元に一定程度お金があると日銀に預け入れしないといけません。預け入れすれば本来は「利息という収益を得る」ことができるわけですが、マイナス金利というのは逆に「利息を払う」ことになるわけです。銀行にとってはそれは損な話ですよね?だから、手元にあるお金を誰かに貸して収益を得るようにしたいわけです。日銀のマイナス金利政策というのは、つまるところ、日銀が銀行から国債を買い取って銀行が手元に持っている現金という商品を誰かにお金を貸すことによって景気を活性化させよう(デフレを脱却させよう)という政策なわけです。

 

ちょっと経済の話に飛びましたが、要するに、「口座を開いて銀行との関係を作る」というような経営者の話は少しピントがずれているというのはわかりますか?

銀行にとって関係というのは、あくまでもお金を借りることによって築かれるものなんです。特に、今のような経済の状態(マイナス金利の状態のことです)では、銀行にとっては預金を預け入れしてもらうことよりも、お金を借りてくれる人の方が「いいお客さん」なわけです。

 

よく考えてみてほしいのですが、今、普通預金の利息って何%くらいでしょうか?

0.01%~0.02%くらいです。

1千万円預け入れしてもたったの1年で1000円から2000円程度にしかなりません。

それに対して、借入した時の利率はおおよそ1%~3%の範囲です。

史上空前の低金利時代です。

これを銀行の視点から解釈すると、貸出金利が安いというのは、借入金という商品をみんなに買ってもらいたいからですよね。だから、借りた時の金利が安いわけです。逆に、銀行にとっては「負債」になる預け入れの金利が安いというのは「今は預金に預け入れしてもらっても困る」というメッセージでもあるわけです

 

さて、銀行の口座を開くということの銀行側からすると特に「関係を築く」と言えるほどではないというのはわかったと思います。

 

ここでやや応用的な話です。

 

取引銀行から1000万円の借入金があったとします。金利が2%だったとします。

そうすると、年間の利息は20万です。

この状態のとき、銀行の担当者が「定期預金を組んでほしい」と話しに来たとします。

これはどういうことでしょうか。

 

銀行にとって考えてみればわかる話です。

たとえば、上記の状態で500万円の定期を組んだとします。

そうすると、銀行にとっては実質的に、「1000万円-500万円」ということで500万円貸しているのと同じということになります

つまり、利息収入は20万円なのに対して、借入金は500万円なわけですから実質的には20万円÷500万円で、年利4%で貸しているのと同じと考えるわけです

 

銀行からすると、すでに借入金がある先に「定期を組んでほしい」という話をするのはこういう効果が期待できるからです。こういうのを実質金利といいますが、この実質金利という数字を得たいために、こんな話をしてくるわけです。500万の定期を組んでもらって銀行の手元の現金を増やしたいわけではないということです。

 

さて、預金と借入金のこうした基本的な話というのは経営者としては必ず理解しておくべきことだと私は思います。本来はこうした話は顧問税理士がいればその税理士からしないといけないわけですが、こういう銀行の考え方のような話をしてもらったという話をほとんど聞きません。税務や経理処理も大事ですが、経営というのはそれだけで成り立っているわけではありません。むしろ税務申告や経理というのは経営にとってはほんの一部分でしかありません。

もしこのブログをお読みの方が依頼されている税理士からあまりこういう話を聞いたことがないのであれば、その関係を考えないといけないと私は思います。

 

また機会があったらこうした銀行の話を書いていこうと思います。

 



だいぶブログの更新ができていませんでした。処遇改善加算対応やらなにやら、結構、確定申告が終わっても忙しい日々でした・・・

さて、今日は銀行融資の話です。

顧問先でこの話をすると感心されることが多いので、書いてみます。

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みなさん、経営にとってもっとも大事なことは何だと思いますか?

言い方を変えれば、「倒産」しないようにするにはどうしたらいいと思いますか?

 

多くの経営者が銀行の借入金をとにかく少なくしようとそればかり考えています。経営者によっては5年返済の借入金を少し現金ができたからと言って、繰り上げ返済してまで先に返そうとします。「借金」があることはとにかく「リスク」と思っているわけです。「借金=リスク」という思い込みは経営にとっては百害あって一利なしではないかと私は思います。

 

たとえば、銀行から借り入れをするとき、1000万は融資が下りるだろうとなったとします。

でも、500万くらいあれば足りるとします。そうすると、500万しか借りないわけです。

しかも、7年返済でやろうと思えばやれるのにわざわざ5年とか、場合によっては5年よりも短い期間に設定しようとするわけです。

 

こうした経営者の思考法は、「借入=リスク」という思い込みによるものだと私は思っています。もちろん、借入金あれば一定程度のリスクはあります。しかし、経営にとって借入金の残高よりも怖いことがあります。それは「手元の現金がなくなること」です

よく考えてほしいのですが、なぜ倒産するのでしょうか?それは「現金がなくなる」からです。つまり、借入金がたくさんあるから倒産するわけではありません。借入金があってもそれだけでは倒産はしません。会社経営が継続できなくなるのは、現金がなくなった時です。

 

最近の倒産事例として有名になったのは旅行代理店の「てるみくらぶ」です。確かに借入金がたくさんあった(正確には多額の負債があった)ようですが、倒産した本質は借入金がたくさんあったからではなく、現金がなくなったからです。手元の現金以上に支払う必要のあるものがあったためです。

 

つまり、経営にとって大事なのは、より多くの手許現金を持っておくことなわけです。現金があれば倒産からは遠くなります。借入金をいかに少なくするか、という思考法は本当に大事な部分がおざなりになっていると思います。

 

少し乱暴な言い方をすれば、お金を作るのであれば売上でお金を作るのではなく、誰かに出資てもらう方法でもいいですし、もちろん借入金でもいいわけです。「現金を最大化する」これが経営にとって最も重要なことです。

 

こういう話をすると、「そういっても借りれば返さないといけないし、なにより銀行に利息を払わないといけないのがもったいない」なんていう話をする方がいます。

よく考えてほしいのですが、年利は今1%~2%といったところです。仮に100万借りたとして年利で1%~2%だったら、年間の利息は1万円~2万円です。実際にはそれを12で割った金額が1か月の利息です。これって、何かの会費程度の話ですよね?

借入をなるべくしないで経営するのが一番いいと考えて、とにかく手元の現金をやりくりで毎月ギリギリでなんとかしている経営者がいますが、私から見ますと、こんな危なっかしい経営の仕方はないと思うわけです。

 

そして、「借入するのは経営の状況が悪くなった時」と考えている方も非常に多いです。こういう方はよく考えてほしいのですが、銀行は経営状況が悪くなれば、当然、金利や返済期間などの条件は厳しい条件を出してきます。かなり悪い経営状態なのであればそもそも借入自体できないこともあり得ます。つまり、「悪くなってから借りる」というのは自分の理屈であって、銀行サイドの事情は全く加味していません。

 

銀行を揶揄する言葉で、「晴れた時に傘を貸して雨が降ったら傘を貸さない」というのがあります。

厳しい時こそ銀行から借りたいのに貸してくれず、逆に、晴れているときに借りてくれと来る。それが銀行です。それを「勝手だなあ」と言っているわけです。

借りる側からすればそうでしょうね。ですが、よく考えてほしいのですが、銀行だって商売です。銀行はどんな商売かといえば、人にお金という銀行の商品を貸して利息をもらう商売なわけです。俗っぽく言えば、「金貸し」が銀行の仕事の正体です。

その「金貸し」からしたら、経営状況の悪いところに貸すよりいいところに貸したほうがいいに決まっています。つまり、先ほどの「晴れた時に傘を貸して雨が降ったら傘を貸さない」といいのを経営者がわかっているのであればなぜ「晴れた時に借りる」ことをしないのか、ということです。

「借りる必要がないから借りない」というのは借りる側の理屈です。銀行側の事情も加味して「借りる必要はないけど借りておく」という選択をすることでリスクヘッジしておくのが経営なわけです。しかも、経営状態がいい時に借りたほうが、利率や返済期間がこちらに有利になるわけです。つまり、「経営状態がいいからこそ借りる」という話になるわけです。

経営というのはいつどうなるかわかりません。いい時にこそ、銀行から借りるという選択をするのが経営におけるリスクヘッジだと思います。

 

銀行の話というのは、どうやら多くの税理士はあまり顧問先にしないようです。

「そんな話、初めて聞きます」と言って、大変感心されます。

 

次回も私がよく顧問先でする銀行の話を書いてみたいと思います。