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Category Archives: 経営


連日、ニュースはコロナコロナ・・・

テレビを見るのも嫌になりますね。

私も顧問先からコロナ関連のことで連日のようにご質問をいただきます。

その関係もあり、新型コロナウィルス関係で中小企業経営にかかわる部分でいろいろと調べて分かったことなど、今週はいくつか書いていこうと思います。

今日は生命保険の契約者貸付です。

法人契約の保険に入っている場合、一定の割合で契約者貸し付けといってお金を借りることができる制度があります。法人契約の生命保険に加入するメリットの一つですが、その契約者貸し付けというのは通常は一定の金利がとられます。2%から3%前後になるケースが多く、イメージとしては金融機関よりもやや高めの金利になる感じです。

ただ、金融機関の融資と違って、積み立てているものの一部からお金を借りるというものであることもあり、着金までが早いです。申し込みしたら翌日か翌々日には着金になっています。急に資金繰り上、資金が必要な場合には結構、使えます。

さて、この契約者貸し付けですが、今回の新型コロナウィルスに関連して保険会社によっては金利をゼロにしています

いくつか例を挙げてみましょう。

たとえば、ソニー生命です。

ソニー生命では、セーフティネット4号という信用保証協会の認定を受けている場合、解約返戻金の7割を限度として金利をゼロにしています。

また、アクサ生命では契約者貸し付けの金利をマイナス0.5%として貸し出しをしています。

その他は結構、金利をゼロにしているところが多くあります。

たとえば、第一生命、日本生命、明治安田生命、朝日生命、住友生命、大同生命など日本の生命保険会社の多くは、法人契約の保険は結構、契約者貸し付けの金利をゼロにしています。

また、アフラック生命やプルデンシャル生命などの外資系の保険会社でも契約者貸し付けをゼロにしているものもあります

しかもこれらの日本の生命保険会社では、特段の要件を必要としていません。新型コロナウィルスの関係で売り上げが減っているなどの要件なしで金利をゼロにしてくれるわけです。

これらの金利がゼロになる措置は、多くが9/30までに借りた金額を返済した場合です。9/30以降になると通常の2%から3%の利率の金利がかかります。ですので、一般の金融機関や日本政策金融公庫の融資を受けたら返済するなどの方法と組み合わせも考えておいたほうがいいでしょう。

この際、前回のブログで書いた保証協会の4号融資や5号融資や日本政策金融公庫のセーフティネット貸付などとあわせて、生命保険の契約者貸し付けも検討してみてはいかがかと思います。



12月決算、確定申告、コロナウィルス・・・

いろいろと重なってなかなかブログが更新できませんでした。今日は久しぶりの更新です。

今日のテーマは新型コロナウィルスに対する中小企業対策の話です。

この1週間くらいの間に相次いで政府が対策を発表しています。

現状で分かっている範囲で、中小企業対策として出ているものをまとめましたので参考にしていただければ幸いです。

中小企業の経営者の観点からこの新型コロナウィルスに対する中小企業対策をみると大きく三つあります。いろいろなものが出ているのでわかりづらいかもしれませんが、三つと分類すると理解がしやすくなるのではないかと思います。

  • 確定申告期限が延期されています

これはネットのニュースやテレビなどの報道でも大きく報じられているのでご存じの方も多いでしょう。今回の新型コロナウィルスの関係で、大勢の人が確定申告期限の税務署という狭い空間に集まってしまい感染が広がることを防ぐという観点から、申告期限が3月16日(今年は3月15日が日曜日のため、もともと期限が3月16日になっていました)をちょうど1か月延期して、4月16日になっています(4月15日ではないです)

対象の税目は、「所得税」「消費税」「贈与税」です。

もともと個人事業者の消費税の申告期限は3月31日ですから、消費税に関しては1か月ではなく16日延期されることになります。

また、申告の方がクローズアップされているので見落としがちですが、申告に伴って納付の方も延期になります

ここで問題なのは振替納税がどうなるのかです。振替納税(口座から引き落としになる方法)での所得税の支払いの場合、いつ口座引き落としになるのかが現状(3月5日時点)では発表されていません。納付書で納付する場合には、申告期限の4月16日でいいのですが、振替納税の場合、いつ引き落としになるのか、この点は国税庁の発表を待つ必要があります。

それから、対象税目が「所得税」「贈与税」「消費税」となっています。法人の申告は延期にはなりません。すでに終わっていますが、12月決算法人の申告・納付、1月決算法人の申告・納付は従来通りです。

  • 緊急融資対策が出ています。

新型コロナウィルスに対する中小企業対策として私がある意味、最も注目しているのはこの融資の関係です。

新型コロナウィルスの影響で売り上げの減少が現に発生していたり、見込まれる場合、金融機関の制度融資が創設されています。

「制度融資が創設」と書きましたが、実際には従来ある制度の要件を緩くしたものです。大きくは次の二つです。

日本政策金融公庫のセーフティネット貸付

従来からあるわけですが、通常の要件は前年同月比の3カ月平均で売り上げが5%以上減少していることというのが主な要件にありました。この5%売り上げが減少するという要件がなくなり、今回のコロナウィルスの関係で売り上げの減少が認められる場合にも対象となることになりました

このセーフティネット貸付は、現在、日本政策金融公庫での融資を受けていてもそれとは別枠でされている融資制度なので、利用がしやすいといえます。

ちなみに、金利は中小事業の場合、1.11%(2月3日現在の金利です。経済産業省の資料によります)ということです。

信用保証協会融資の4号融資・5号融資

これも従来からあるもので、公庫のセーフティネット貸付に似ています。従来の要件としては、前年同月の3カ月平均の売り上げが5%以上減少するというのが主な要件です。これを3カ月平均ではなく、前年同月の1ヶ月だけでいいとなっています。

実際に売上の減少がある場合には、②の保証協会の制度も検討に値しますし、来月以降、売上の減少が見込まれるような場合には政策金融公庫のセーフティネット貸付を検討してもいいでしょう。

融資に関しては、資金が底をついてからでは遅すぎます。早め早めに対応をするのが鉄則です。その意味で、現状で、例えば、介護施設などでデイサービスの利用控えが発生している場合や治療院などでも患者さんが減少している場合など、新型コロナウィルスの影響がすでに売り上げに出ている(あるいは影響が出る見込み)場合には、先手を打ってこれらの制度融資の活用を考えてもいいと思います。

  • 雇用調整助成金の要件が緩和されています。

今回の件で、実際にコロナウィルスに感染したり、感染にまでは至らなくても休ませたりした場合に使える可能性があるのが雇用調整助成金です。

会社の命令で社員を休ませた場合、欠勤なので給与から控除するわけですが、会社が命令して休ませる場合、その分、給与を保障しないといけません。控除した金額の6割を休業補償として支払わなければいけないというルールがあります。これを休業補償といいます。この休業補償を支払った場合、その支払った金額の範囲で雇用調整助成金という助成金が出ます。この助成金は従来からあるものですが、今回はこの要件が緩和されています。本来はこの助成金を使う場合、先にまず計画書を出さないと対象にならないのですが、今回のコロナウィルスが原因で休業命令をした場合、計画書は5/31までにあとから出せばいいことになっています。

また、本来は前年同月の3か月で比較して売り上げが10%以上減少している場合に対象になるものですが、1ヶ月で比較していいことになっています

休ませるのはコロナウィルスの感染でなくても単に発熱して休ませる場合にも対象になります。もしこうした社員がいて、売上が前年同月と比べて下がっている場合、使える可能性があります。

助成金の金額は休業補償で支払った額の3分の2(労働者1名あたり1日8,330円が上限)とされています。

ただ、この助成金は対象となるのは雇用保険に加入している方です。雇用保険に加入していない非正規雇用の方(パートなど)は対象となりません。この点が現在、問題となっている点で、政府はこうした方も対象となるような助成金制度を創設するといってはいますが、現状では雇用保険未加入者の方たちをフォローする制度はないようです。

以上が中小企業向けの新型コロナウィルスに対する中小企業対策です。

振替納税がいつになるのか、非正規雇用の方が休んだ場合の雇用調整助成金に代わる助成金制度はどういうものなのか、などまだ不透明な部分があります。

わかった範囲でまたこのブログでもお伝えできればと思います。



ラグビーのワールドカップの余韻がまだ残っているということでしょうか。 ラグビーの解説やドラマにも俳優として出演したりしていた元ラグビー日本代表のキャプテン廣瀬俊朗さんの記事をたまたまネットの記事でみました。廣瀬俊朗さんの「目的」と「目標」の違いという話は経営にもそのままあてまはまる話だと思って感心しつつ読みました。↴

https://www.j-cast.com/2019/11/12372341.html?p=all

大学入試でも、人生でも、「目標」を掲げる人は多いです。実際「目標」というのは目に見えやすいものですし、それを達成するために頑張るというのは分かりやすいです。しかし、「目的」というのはあまり考えないことが多いかもしれません。私は経営者にこそ「目標」よりも「目的」が必要だと思って、日々、それを実感しています。

経営目標というと、一番わかりやすいのは「売上年商○万円」というようなものです。 「目標」というのはそれを目指してがんばっているときはいいんです。山の頂上をみながら歩いているようなものです。しかし、「目標」を達成してしまうとそのあとはどうなってしまうのでしょうか?もしくは、「目標」が達成できなかったら、どうなってしまうのでしょうか?

大学入試などは典型例だと思います。○○大学に合格する、といって頑張って勉強しても、必ずしもその結果を得られるとは限りません。では、目標を達成できなかったらやってきたことは全て無駄になるのでしょうか?そうではないです。問題なのは、何のために頑張ってきたのかという「目的」なわけです。

先ほどの廣瀬さんは、次のように話をしています。

「『目標』っていうのは、例えば『日本一になる』とか『試合に出る』とか、皆さん、あると思います。それは最後、天候だったり、監督が決めることだったり…。自分自身では決められない。でも、『目的』っていうのは違う。『なぜ自分はラグビーをしているのか』ということ。周囲の子どもたち、クラブハウスを毎日、キレイにしてくれていている方々…。そういった方々に『自分の姿勢』を見てもらうこと。ラガーマンなんて選手寿命はそう長くない。皆さん、いずれは引退する。その時に『何を残せたのか?』というのが『目的』だと思います」

「目標」というのは自分以外のモノにも影響されます。達成できるとは限りません。しかし、「目的」はまさに自分自身が決めることです。つまり

「目標」・・・他者に影響されるモノ

「目的」・・・自分が決めるモノ

これは経営にも当てはまる話だと思います。 「経営目標」を掲げて、年商(月商)○万円!というのは大事なことです。否定はしません。それに向けて頑張ることも大事なことです。しかし、それは「目的」を達成するための手段でしかないわけです。そもそもなぜ、その年商(月商)○万円を達成したいのか、そこです。年商(月商)○万円を達成すれば、資金繰りが楽になる、銀行からの融資が受けやすくなる、給与が上がる・・・それもそうかもしれませんが、それらは「目標」を達成した結果、起こることです。もっと根本的な「目的」が必要です。

なぜ、その事業で売り上げを上げたいのでしょうか?自分のやろうとしているビジネスモデルをより多く広げて社会に貢献したいとか、目の前の○○というお客さんを喜ばせたいとか・・・それが「目的」です。

私が見ていると、特に長く経営に携わっているとその部分を見失いがちです。見失うととたんに「カネもうけ」に走りがちです。「カネもうけ」自体は私は悪いことではないと思っています。悪いのは「カネもうけ」は目的を見失ってしまうことが多いということです。「カネもうけ」は多少、悪いことをしたとしてもお金を持ってくる人を評価することにつながります。そうなると、経営者に軸がなくなります。何のためにやっているのかがわからなくなるわけです。従業員や周りの人はそうした経営者の姿勢に敏感です。たちまち雰囲気が悪くなります。しかも、「目的」を中心に考えないと、どこに向かっているのかわからなくなります。

また、経営というのは様々な環境に影響されます。「カネもうけ」が思うようにいかなくなることも出てきます。そうした悪い状況に陥った時、自分はなぜこの事業をしているのか、その「目的」があれば頑張れます。「目的」というのは忘れがちなのですが、悪くなった時にとても大事なものになってきます。

よくスローガン(標語)を掲げている会社があります。 会社のスローガンというと私が真っ先に思い当たるのが電機メーカーのソニーの「It’s a sony」です。 Sonyというのは会社の名前ですから固有名詞です。固有名詞の前に「a」があるのは文法的には正しくはありません。ここには、固有名詞としてのsonyではなく、sonyの製品が「a」を付けるほどにあちこちに存在するようなものを目指すという意思があるそうです。それほど社会の役に立つ商品を作る、これがソニーという会社の存在する「目的」なわけです。

このように「目的」をスローガンという言葉にするのは、なぜこの事業をやっているのかという「目的」を忘れないためという側面もあるのではないかと私は考えています。

ちなみに、私は自分の事務所の名前にその事業の目的を「スローガン(標語)」として入れています。HPにも書かれていますが、「ヴァンガードマネージメントオフィス」の「ヴァンガード」は先駆者という意味です。私は事務所名前に自分の「目的」を入れました。詳しくは下記のHPの会社概要をご覧ください。↴

会社概要

 皆さんの会社でも「目的」を忘れないよう、スローガンにしてみてはいかがでしょうか?




今日は前回に引き続き、法人向けの定期保険のお話で、法人向けの定期保険の経理処理が今までとは変わるという話です。

今日の話はまだ正式には確定していない話です。現状では「通達の改正案」というのが国税庁から出され、それについて意見を公募している(パブリックコメントに付している)状況です。しかし、過去の経緯からしてもほぼ、確定になるものと思われるものです。

法人契約の定期保険については、ピーク時の解約返戻率によって、以下のように整理される見通しです。

○ピーク時の解約返戻率 50%以下・・・全額損金

○ピーク時の解約返戻率が50%超70%以下・・・3/5損金

○ピーク時の解約返戻率が70%超85%以下・・・2/5損金

○ピーク時の解約返戻率が85%超・・・

1年目から10年目:100%-(ピーク時の解約返戻率×0.9)

    11年目以降:100%-(ピーク時の解約返戻率×0.7)

新しい法人向けの定期保険の経理処理の特徴は、解約返戻率のピークが何%かによって経理処理が変わるという点が特徴です

従来は、経理処理をするにあたってはまずは「定期平準定期保険」か「逓増定期保険」かそれ以外の「定期保険」かによっていたわけです。その辺は前回のブログでご説明した通りです。しかし、今回の改正は、そうした保険の種類は考慮しないといわけです。少しシンプルになったのではないかなと思います。

また、この新しい経理処理については、すでに契約している法人保険に対しては適用しないことになっています。過去にも保険の経理処理を見直すことは何度かありましたが、いずれもすでに契約している保険についてはそのままという運用にしていましたから、これはある意味、当然そうなるだろうというところです。すでに加入している保険については、経理処理の変更はありませんから、改めてご確認ください。

 

また、同じ保険でも法人向けの「養老保険」については経理処理方法に変更はありません。「養老保険」というのは、保険期間中に万が一のことが起こった場合には死亡保険金が支払われる一方で、生存して満期を迎えたときには死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れるという保険です。

この養老保険は社員の退職金の積み立てをするような場合に向いている保険です。この法人向けの養老保険については、一定の要件(社員全員に普遍的に加入できるような規定がある場合)に該当していれば、1/2損金にすることが可能です

前回のブログで書いた今回の法人向け保険の販売停止について、この養老保険には及んでいません。この1/2損金になる養老保険の話はまたどこかの回で書いていこうと思います。

また、いつから変更になるかという点ですが、これは今年の6月ごろを予定しているようです。現在販売が停止されている法人向けの定期保険などの保険の販売も、新しい法人向け定期保険の経理処理が正式発表されてからおそらく販売が開始されるものと思います。

この数週間で、保険会社各社の方が、私の事務所にもいらっしゃって、このような説明をしていただいたわけですが、私の受けた印象としては、今までのように法人向けの定期保険を「解約返戻金の率が高いこと」や「全額損金などの節税となるか」といった視点で選んではいけないということです。あくまでも保険本来の目的である「経営者が死亡した場合の保障」という面から検討していくべきだと改めて思いました

経営者が突然、亡くなってしまった時、残された従業員や取引先、そして経営者のご家族も路頭に迷ってしまいます。そんな時、法人向けの定期保険に加入していれば、従業員の給与や取引先へのお支払も滞りなく進めることができます。残ったお金で経営者のご遺族へ死亡退職金の支払いをすることも可能です。法人が保険に入る本来の目的は、そうした中小企業の経営者に万が一のことがあっても金銭的には大丈夫というもののはずです。解約返戻率の高さや、節税目的というのは本来の目的ではないはずです。

その意味で、今回の法人向けの定期保険の経理処理の改正は本来の保険の目的を改めて見直す機会になったと私は思っています。

ということで、今回は法人向けの定期保険についての経理処理が変わるという話でした。




さて、今日は法人向けの生命保険の話です。

法人向けの保険が販売停止になっていることをご存知でしょうか
販売休止になっている保険は、主に中小企業の経営者(もしくは役員)を被保険者とする保険商品で、会社が契約者となっている保険です。もともとこうした法人向けの保険は本来の「死亡したらいくら」という保険の本来の目的というよりかは、いつ解約するといくら戻ってくるのかということにフォーカスして加入するという側面があったことは確かです。保険という死亡した場合の保障という側面より、一種の金融商品のような感覚で、いくら払えば将来いくら戻ってくるのかに着目して保険を掛けるということです。そして、半分損金になるなどの特性があることから、節税目的という部分も狙っていたわけです。さて、この法人向けの保険がなぜ販売停止になったのでしょうか?

これは、日本生命のある商品が発端と言われています。
日本生命に「プラチナフェニックス」という保険があります。
これは、死亡保険の保障がついた定期保険ではありますが、保障開始から最初の10年は病気による死亡の保障がありません。最初の10年はケガや事故などの保障だけになっていることが特徴です。この保険は、加入から10年目に解約返戻率(解約した時に払った保険料に対して返ってくるお金の割合)がピークに達します。そのピーク時に保険を解約すれば、保険料の80%以上が戻ってくるというものです。しかも、国税庁の基本通達にのっとっているため、支払った保険料は全額損金扱いということで売り出していたわけです。
この保険は、税理士などの間でも問題があるのではないのかと言われていたものではありました。他の保険と比べても支払ったものが全額損金になりつつ、10年で解約返戻率が80%にもなる保険は他にないからです。しかし、日本で一番大きな保険会社の日本生命が発売を開始した保険でもあり、むしろこの日本生命の保険にならって保険会社各社が似たような保険を売り始めました。東京海上日動やアクサ生命、第一生命などでも発売し始めたのです。
これに反応したのが国税庁です。
国税庁はこうした状況を問題視して、今年の2月14日に通達を出し、いったん法人向けの保険の販売停止を指示したわけです

さて、では、現状で法人向けの定期保険というのはどのように経理処理されているのでしょうか?
これは、大きくは三つに分かれます。
まずは、長期平準定期保険です。これは、支払額の1/2が損金計上、1/2が積立金計上という経理処理をしていました。支払った額の半分が費用にできるわけです。
長期平準定期保険とは、保険の保障額は一定(契約時の保障額がずっと続くもの)で、解約返戻金の返戻率が最も高い時期までの期間が比較的長くなる(20年~30年以上となることが多いです)ような保険です。主に、経営者の退職金目的で掛けることの多い保険でもあります。20年後、30年後に事業を止めた時点で保険を解約してそれを元に経営者に退職金の支払いをしようということです。仮にその間に経営者がなくなるようなことがあれば、保険の本来の機能である保険金が支払われます。一方で、存命したままであっても解約してお金に代えてその時点で事業を退くのであれば経営者の退職金に充てられるわけです。

また、逓増定期保険というものがあります。これは保険の種類によって、1/2損金、1/3損金、1/4損金という3種類ありました。
逓増定期保険とは、保険の保障額が支払額に応じて徐々に増えていく保険です。最初は保障額が少なく、徐々に保障額が増えていくことから「逓増」と呼んでいるわけです。この保険の特徴は、解約返戻率のピークが早く、ほぼ5年から10年でピークを迎えるということが特徴です。一方で、保険料は長期平準定期保険と比べるとかなり高くなるというのが特徴です。
経営者の年齢が40代後半であったり、50台であったりする場合、この逓増定期保険を使って上記のような退職金目的の積み立てをするなどをする場合には向いている保険と言えます。これも長期平準定期保険と同じように、仮に経営者が保険を掛けている間になくなれば、その時点の逓増した保険金が出ますし、満期まで存命であれば解約したお金で経営者の退職金に充てるわけです。

また、法人向けの保険で上記の長期平準定期保険や逓増定期保険以外の保険を定期保険と呼びます。契約期間が決まっていて、解約返戻率も低い、いわゆる掛け捨て保険というものです。この定期保険は支払額が全額損金になるというのが特徴です。
さて、くだんの日本生命を始めとした保険会社の開発した保険はこの「定期保険」に分類されるとされ、全額損金が可能となっていたわけです。
今回、こうした保険を「売りすぎた」ために、国税庁がストップをかけたわけです。こうした保険を含め、保険会社は法人向けの保険商品の販売ができない状態になっています。財務省は、あたらな保険の経理処理の方法がはっきりするまでは保険商品の販売を禁止しているというわけです。
さて、では、国税庁はどういう方針を出しているのでしょうか。
その解説はまた次回やりましょう。




さて、今日は今年だけの特例、天皇陛下の退位と即位に伴う10連休についてのお話です。

総務・経理の担当者は具体的にどうしたことを事前にしておかなければいけないのでしょうか。

その前に、この10連休を前にして、調査会社の各社がそれぞれ10連休についてのアンケートを取っています。それによると、10連休を休みが取れるかという質問に対し、10連休をきちんと休みが取れると回答した割合は約3割だったそうです。つまり、カレンダー上は休みでも7割の人たちは休めないというわけです。

休めると回答した人の多くは公務員のような公的機関の人のようです。

実際、私の顧問先の治療院や介護事業所などでも10連休をきちんと休みを取るとご回答いただいた会社は今のところ、ありません。実際にはなかなか休めないというのが実態のようです。

 

さて、この10連休ですが、休める休めないにかかわらず、いろいろと事前に考えておかなければならないことがあります。実際、今、保育園がこの期間、休みになってしまうのに、仕事は休みにならないので、預け先に困る方たちがかなりいらっしゃることが問題になっています。休める休めないにかかわらず、今回は前例のない公的機関の固まった休みとなるため、総務・経理担当者にとってはいくつか気を付けておくべきことがあるというわけです。どんなことが考えられるのか、挙げてみました。

 

① 4月末が期限の役所への提出書類、納付期限が4月末日のものは5月7日になる

これは、税務などの書類の提出期限が日曜・祝日に当たる場合、次の平日になるという今までのルールから照らしてお分かりいただけるものと思います。現在でも、提出期限や納付期限が日曜・祝日の場合、次の営業日になっています。これからしてお分かりと思います。

役所の提出期限は5/7になるので、ほぼ1週間伸びます。納付期限も同じように、4月末の納付期限のものは5/7になります

 

② 社会保険の書類も5月7日になってしまう

たとえば、5月1日付入社の方がいたとします。仮に、5/1が出社であったとしても手続き自体は役所が休みですから、取り扱いは5/7となってしまいます。そうすると、何が問題なのかというと、10連休で休みが重なってしまった分、役所の手続きがしばらくストップしていたため、事務作業が重なっていることから保険証の交付が遅くなるという問題があります。

これについては、「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」という書類を資格取得届と同時に出せば、保険証が届くまでその「資格証明書」が保険証の代わりとしてしばらく使えます。とりあえずはこれで代用するしかないでしょう。

また、たとえば4月末付退職の場合、離職票の交付は5/7以降の手続きになってしまいます。これについては、10連休に伴い、やはり手続きが遅くなってしまうことが予想されます。これについては、事前にその方にその旨をお伝えしておくしかないでしょう。

 

③ 金融機関の営業日も5月7日となってしまう

これは支払いや売上の入金に影響のある話です。要は資金繰りを考える際に、これらを考慮に入れる必要があります。金融機関もすべて10連休中は営業していませんから、4月26日までに銀行の手続きはしておかないといけません。また、通常、月末や月初になる入出金が全て5月7日もしくは4月26日という連休の前後に集中してしまう可能性があります。そうなった場合、通常は資金繰りに問題ない残高が不足するなどの事態が発生しかねません。事前に入金・支払いの資金繰り状況をよく確認したほうがいいでしょう。

 

④ 年払いの倒産防止共済の支払いは5月7日になってしまう

セーフティ共済(倒産防止共済)を4月中に年払いにしている場合、4月末の引き落としにはなりません。4月決算法人の場合でセーフティ共済を費用処理したい場合、通常は支払い時に損金経理となるため、支払いが5月7日になってしまうと損金処理できないという話になります。ですが、今回は、天皇の退位と即位に伴う特例として、4月末で支払いは終わっていなくても、5月7日に口座引き落としできれば、4月末での「未払金」として経理処理すれば損金算入できることになりました。この話は以前の私のブログを参考にしてみてください。↴

https://vanguardwan.com/blog/4%e6%9c%88%e6%b1%ba%e7%ae%97%e6%b3%95%e4%ba%ba%e3%81%af%e8%a6%81%e6%b3%a8%e6%84%8f%ef%bc%81%e5%80%92%e7%94%a3%e9%98%b2%e6%ad%a2%e5%85%b1%e6%b8%88%e3%81%ae%e7%89%b9%e4%be%8b%e3%81%8c%e3%81%82%e3%82%8a

 

⑤ 10連休と労基法の関係はどうなっているのか

これは以前からご質問をいただくことの多かった論点です。

10連休は休ませないといけないのかというものです。

10連休のうち、まず、4/27は土曜日です。多くの企業では土曜日は「休日」とはなっていないものと思います。「休日」となるかどうかはその会社の就業規則の休日の規定に何と書いてあるかが問題です。「休日」に「日曜日」の他、「祝日」も入っていれば、4/29(昭和の日)、4/30(退位の日(国民の祝日【祝日に挟まれた日は祝日】  )、5/1(即位の日)、5/2(国民の祝日【祝日に挟まれた日は祝日】)、5/3(憲法記念日)、5/4(みどりの日)、5/5(こどもの日)、5/6(振替休日)は全て祝日となるため、「休日」扱いとなります。つまり、就業規則の「休日」に「祝日」が入っていれば、10連休とは言わないまでも9連休にはなるわけです

一方で、就業規則の「休日」に「祝日」がなく、「休日」が「日曜日」だけなのであれば、4/28と5/5だけが「休日」となります

 

この「休日」かどうかが問題なのは、時間外給与の算定です。休日労働となれば、平日の時間単価の1.35倍で計算しないといけないわけです。もし仮に、「休日」が「日曜・祝日」となっていて、これらの祝日中に出勤した場合、時間外労働となってしまうわけです。

一方で、1か月単位の変形労働時間制を採用していた場合で、「休日」がたとえば「シフトによる」となっていれば、祝日を休日とせずに取り扱うことが可能です。

 

今回は10連休という特殊な事情があったわけですが、たとえば治療院や介護事業所などの業種では、そもそも1か月単位の変形労働時間制を導入しておいた方が会社側は運用がやりやすいはずです

 

会社側の考え方が優先されているようですが、冒頭のアンケートを振り返ってみてください。10連休をきちんと休めるとしているのは約3割です。ほとんどの企業が10連休の休みは取れないわけです。今回のような事態を想定して、従業員さんとの話し合いの上で、就業規則を変えることも検討したほうがいいでしょう。

 

ただ、就業規則は急には変えられないです。もし「休日」に「祝日」が入っていて、休みが取れない場合、たとえば、「4/30~5/2は出勤してほしい。その代わりに○○○の3日間を休みにしてほしい」というような形にする、いわゆる「代休」という形にすれば、休日の割増賃金の支払いの必要はないです。「代休」を成立させるには、事前に振替を認めてもらうことが必要なわけです。事後に振替をいっても「代休」は認められません。事後に言った場合、休日労働となってしまいますから注意が必要です。

 

⑥ 連休明けの役所への提出書類は「令和」になる

連休前は「平成」で、連休明けは「令和」になっています。特に、役所関係の書類はすべて「平成」から「令和」に変更になります。これは結構、手間な話です、会計ソフトや給与ソフトなどはこれらのソフトを扱うベンダーさんが対応してくれるのでしょうが、これ以外の様々な書類はすべて直して使用する必要があります。連休前に様々な書類をチェックしておく必要があるでしょう

 

まだ他にもあるかもしれませんが、役所の手続きや金融機関の手続きを中心に考えると、上記のようなことが想定されます。10連休が休めるか休めないかにかかわらず、上記のようなことを考慮に入れてみてはいかがでしょうか。




今朝の国会の参議院決算委員会(平成31年4月4日)での議論は企業経営の考え方にも参考になる議論だと思って、しばし聞いていました。どのような議論だったのか、そのサマリーをここで書いていきたいと思います。

 

お金の正体は何かといえば銀行が集めたお金の預貯金の額で貸しているわけではなく、要するに、銀行はこの会社が信用に足りるからお金を貸す、つまり、信用創造をしているわけです。貸したお金によってだれかの預貯金の額が増えている。借り入れが増えれば誰かの預貯金が増える。これが実際に起こっていることなんです。」(自民党 西田昌司議員)

 

マネーストック、マネーサプライというのは銀行預金が企業や家計の資金需要を受けて銀行が信用創造を行うことによって資金貸付を行っていることは確かです。」(黒田東彦日銀総裁)

 

借金は預金を集めて借金をしていると思っていたわけですが、そうではなく、預金は誰かが借金をすることによって出ているんだと、まさにこれは地動説から天動説という話なんです。

通貨がモノだったら、商品だったらそうなんですが、そうではないんです、信用創造なんです。地動説から天動説への大転換が必要なんです。」(自民党 西田昌司議員)

 

この議論は、いわゆる「MMT理論」というものを議論しているものです。MMT理論というのは「政府は紙幣を印刷すれば借金を返せるのだから、政府が破産することはありえない。したがって、財政赤字を気にすることはない。もっとも、財政赤字は無限には増やせない。そんなことをしたらインフレになる。つまり、増税するのはインフレを抑制するために必要だからなのだ」という理論です。つまり、「増税は財政赤字を減らすためではなく、インフレを抑制するために行うのであって、インフレが心配ないのであれば増税は不要である」というのがMMT理論です。(よくわからない方はMMT理論の部分は読み飛ばしていただいて結構です)

 

西田議員と政府とのやり取りはこのMMT理論の是非についてというのが主な論点ですが、これは企業経営においても重なる部分のある考え方だと思いますので、今回のブログで取り上げたいと思います。

 

企業が借金をするということの従来の考え方は銀行が集めた預金を貸しているという考え方でした。しかし、今はこうした考え方は実務的ではないといわれています。むしろ逆なのではないかと考えられているわけです。つまり、銀行が「この会社にはお金を貸せる」と評価してお金を貸すと、その企業の預金残高が増えるわけです。その預金残高が増えることで、様々な企業活動をすることにつながり、様々な用途にお金が使われ、景気が良くなると考える考え方です。銀行は「集めたお金を貸している」のではないというのが前提にあります。銀行がお金を貸すのは「貸せる会社だから貸している」わけです。これを「信用創造」といっているわけです。「実際にあるお金」という「モノ」を貸しているわけではないというわけです。これは私は企業経営の(もっといえば経済の)本質をついている話だと思うわけです。

 

企業経営においてはこの「信用創造」という考え方を理解する必要があります。銀行が「お金を貸せる企業」だと思わせる状況、そのことこそが重要なわけです。それを「信用創造」といっています。この「お金を貸せる企業」と思わせる状況を作ると倒産という企業経営の究極的な状況から遠ざけることができます。つまりは企業経営を存続できる状態にすることができるわけです。企業経営の肝は「倒産から遠い状況に置くこと」だという話は以前のブログでもしました。↴

https://vanguardwan.com/blog/%e9%8a%80%e8%a1%8c%e8%9e%8d%e8%b3%87%e3%81%ae%e9%89%84%e5%89%87%e3%80%81%e3%80%8c%e6%99%b4%e3%82%8c%e3%81%9f%e6%99%82%e3%81%93%e3%81%9d%e5%82%98%e3%82%92%e5%80%9f%e3%82%8a%e3%82%8b%ef%bc%81%e3%80%8d

 

それが「信用創造」なわけです。

 

先日、「整骨院の倒産件数が年間で50件だったという記事があった」と話をしていただいた整骨院の先生がいらっしゃいました。その先生もおっしゃっていましたが、そうなんです。これだけの整骨院の数があっても、昨年1年間で倒産した整骨院はたったの50件なんです。

介護事業所についても、東京商工リサーチの記事に次のような記事があります。

「2018年(1‐12月)の「老人福祉・介護事業」倒産は106件(前年比4.5%減)だった。介護保険法が施行された2000年度以降では、7年ぶりに前年を下回った。ただ、倒産件数は過去3番目に多く、高止まり状況が続いている。」(東京商工リサーチ)

しかし、介護の事業所の数はデイサービスだけでもコンビニエンスストア並みかそれ以上に件数があるそうです。しかし、昨年1年間の倒産件数は100件程度しかないわけです。

そのように考えると、整骨院や介護事業所の企業経営は他の業種と比較すれば、むしろ、経営環境においては他業種に比べ、有利な状況にあると言えます。

 

企業経営にとって重要なことは「信用創造」です。そのためには、銀行などの金融機関から信用される企業を作ることが大事です。今日の参議院の決算委員会の審議をみていて改めて思ったのは、企業経営とは借金の多寡を気にした経営ではなく、銀行などの金融機関から信用される企業を作ること(信用創造すること)が最も大事なことだと改めて認識したわけです。

 

中小企業の経営者の皆さんにとって、今日のこの話が何らかの参考になればと切に思います。

 




さて、今日は「経営力向上計画」を使った融資制度の話です。

中小企業経営力強化資金」というものです。

 

これは日本政策金融公庫の融資制度です。名前くらいは知っておいた方がいいでしょう。

助成金や補助金を使う場合にはセットで考えたほうがいい融資制度でもあります

どういうことかといいますと、助成金にしても補助金にしてもお金が先に出ていく行為があります。先に出ていくお金をあとから助成金や補助金で穴埋めするというのがお金の基本的な流れです

それに対して、融資というのは基本的には何か事業を始めるときに先にお金をもらうものです

結構、勘違いされている方もいらっしゃるのですが、助成金や補助金というのは後からお金をもらうわけです。ということは、先に出ていくお金をどう工面するのかという問題がそもそもあります。

これを穴埋めするのが融資なわけですが、「経営力向上計画」を使った融資制度、政策公庫の「中小企業経営力強化資金」を今日は紹介いたします。

 

「中小企業経営力強化資金」の「ご利用いただける方」について、次のように記載しています。

 

次のすべてに当てはまる方

・経営革新又は異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方

・自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受けている方

 

経営革新というと難しそうですが、それほど難しく考えなくてもいいものです。

たとえば、治療院であれば、今までとは違う自費サービスをやるとか、そういうことでもいいのです。あるいは、HPを新しくして、今までとは違う人たちを呼べるようにするとか、そういう内容でもいいわけです。

つまりは、「経営革新」というと難しそうですが、普通に考えていいわけです

この融資のポイントは「経営力向上計画」を経営革新等支援機関に書いてもらうことです。それで、その「経営力向上計画」を融資の申し込みの際に、添付すればいいだけです。

実は、それほど難しい制度ではないのです。

 

「経営力向上計画」というのは、以前にも書きましたが、「これからこういうことをやって生産性を上げる予定です」というようなことを書いたものです。それを主務官庁の許可をもらいます。介護施設や治療院の場合、厚生労働省に送って許可をもらいます。おおよそ1ヶ月くらいで印鑑がつかれたものが返送されます。

公庫にはその印鑑をついてもらった「経営力向上計画」の写しを提出します。

 

この「経営力向上計画」は基本的には「経営革新等支援機関」で作ってもらいます。通常は、税理士や公認会計士などの会計事務所で取り扱っています。そこで作ってもらったものを出すわけです。

 

さて、この「中小企業経営力強化資金」ですが、どういった特徴があるのでしょうか?

 

・無担保、条件によっては代表者の保証が不要な無保証になることがある

・金利はおおむね2%前後

・設備であれば最大20年、運転資金であれば最大7年での融資制度

 

それほど特徴的なことはない普通の融資制度だと思いましたでしょうか?

この融資制度は特別、金利が安いというわけでもありません。公庫の通常融資よりも少しだけ金利が安い程度です。ひょっとしたら民間の金融機関の方が金利が安い制度融資などがあるかもしれません。私はポイントはそこではないと思っています。この制度の融資というのは他の融資制度とは別枠の融資制度であることが非常に重要な話だと思っています。

つまり、他に融資を受けていても、それとは別に枠を設けてもらっていることが特徴的なわけです。言い換えると、他の融資制度の枠は残しながらこの融資制度を利用できるというのが特徴的なわけです。

 

助成金や補助金を受けるということは、新しい事業や今までにないことを始めるということでもあったりします。そういうタイミングだからこそ使えるこの政策公庫の「中小企業経営力強化資金」という制度、是非、使ってみてはいかがでしょうか?

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さて、今日の話は従業員さんの給与を上げると企業にとってはどんな特典があるのかという話です。主には「所得拡大促進税制」の話と助成金の「生産性要件」の話です。この二つは同一線上にある話であるということを経営者の皆さんにはご理解いただければと思います。

税制と助成金。この二つに従業員さんの給与を上げる「昇給」というのは関係があるというのをまずはご存知でしたでしょうか。

まずは税制の「所得拡大促進税制」の話です。

これはざっくりいうと、前年よりも給与の支払額が増えて、1人当たりの給与も昨年よりも増えた場合、中小企業はその増やした給与の20%を法人税から控除できるというものです

給与を増やすと法人税が減るわけです。法人税が減ると法人事業税が減ります。法人税の金額に税率を掛けて計算するためです。つまり、実際には法人税の20%以上が減税になる仕組みになっています。

 

要件は主には次の三つです。

  1. 平成25年4月1日以降に開始する事業年度の一つ前の事業年度(これを「基準年度」といいます)と比べて中小企業の場合3%給与が増加していること
  2. 前年の給与の額<本年の給与の額
  3. 前年の一人当たりの給与の額<本年の一人当たりの給与の額

 

この要件を見てもお分かりの通り、要するに一人一人の給与を上げると適用できるのが所得拡大促進税制です。

 

また、この所得拡大促進税制は来年から仕組みが変わります。正確には、平成30年4月1日以降に始まる事業年度から変わります。

中小企業の場合、要件は主に次の二つです。

  1. 「前年の給与の額<本年の給与の額」の増えた割合が2.5%以上
  2. 次のうちのどちらかを満たすこと
  1. 教育訓練費が前年より10%以上増えていること
  2. 事業年度終了の日までに経営力向上計画を出していること

 

経営力向上計画というのは、認定支援機関で作成するものです。認定支援機関のほとんどが税理士事務所などの会計事務所です。この税制を使うためにも経営力向上計画が非常に重要になってきます。この辺の話はまた今度のブログで書いていこうと思います。

 

さて、一方で、生産性を上げるともらえるご褒美が助成金の「生産性要件」です。これは、3年前の決算と比べて生産性要件が向上すると助成金の金額が増えるというものです。

概略としては、以下の算式で計算した金額が3年前より増えていればいいというものです。

 

生産性= 付加価値(

    雇用保険被保険者数

付加価値=「営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課」で計算した金額。

※人件費に役員報酬は含まない

生産性要件については、以前のブログを参照してみてください↴

助成金が増える!「生産性要件」とは何のことか、ご存知でしょうか?

また、この生産性要件はいろいろな助成金に採用されています。次のようなものが代表例です。

  • (再就職支援関係)
    • 労働移動支援助成金
      早期雇入れ支援コース、中途採用拡大コース
  • (雇入れ関係)
    • 地域雇用開発助成金
      地域雇用開発コース
  • (起業支援関係)
    • 生涯現役起業支援助成金
  • (雇用環境の整備関係)
    • 人材確保等支援助成金
      雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、介護・保育労働者雇用管理制度助成コース、人事評価改善等助成コース、設備改善等支援コース、雇用管理制度助成コース(建設分野)、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)、作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
    • 65歳超雇用推進助成金
      高年齢者雇用環境整備支援コース、高年齢者無期雇用転換コース
    • キャリアアップ助成金
      正社員化コース、賃金規定等改定コース、健康診断制度コース、賃金規定等共通化コース、諸手当制度共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コース
  • (仕事と家庭の両立支援関係)
    • 両立支援等助成金
      出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コース、再雇用者評価処遇コース、女性活躍加速化コース
  • (人材開発関係)
    • 人材開発支援助成金
      特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース、建設労働者認定訓練コース、建設労働者技能実習コース 
  • (最低賃金引き上げ関係)            
    • 業務改善助成金

実に、多くの助成金に生産性要件があるだけでなく、多くの事業所で適用可能性の高い助成金が実に多いこともわかります。

国の今の方向性は「一人当たりの給与を上げる」「生産性を上げる」です。これらをすると、税金が安くなり、助成金が増えるというおまけがつくよと言っているわけです。

国の方向性になるべく合わせるようにしていくことは、中小企業にとっては大きなプラスになります。経営をしていくにあたってはこうした国の方向性に合わせた経営から国から多くの恩恵を受けることは、よりいい経営環境で経営できることにつながります。経営者にとってはこうした時代感覚というのは非常に重要です。

「所得を上げる」「生産性を上げる」「同一労働同一賃金」。これが今の時代の流れです。「所得を上げる」というのが今回紹介した所得拡大促進税制であり、最低賃金の引き上げです。「生産性要件」というのが今回紹介した助成金の生産性要件であり、経営力向上計画です(経営力向上計画はまた今度説明しましょう)。「同一労働同一賃金」がハマキョウレックス事件の最高裁判決であり、キャリアアップ助成金です。

次回も引き続き、こうした時代の要請という観点から見ていこうと思います。




週刊ダイヤモンドという経済誌にソフトバンクグループのCFO、財務担当の責任を担う後藤芳光さんの「返せる自信があるのなら借金はいくらでもしていい」というインタビュー記事が載りました。(2018/6/16版の記事です)

今日は会社の借入金について、改めて考えてみたいと思います。

まずは雑誌の記事を少し紹介しましょう。

「上場企業の経営者が株主に対して、『無借金経営です』と胸を張るというのは、何を考えているんだといいたいですね。株主からしたら、企業価値を上げてもらわねば困る。ところが、借金をしなければ、手元資金の範囲でしか成長できない。にもかかわらず、借金は悪だと。もはや、論理を超えていますよね。背景には日本人の美徳のようなものがあるかもしれません。日本人は、借金と聞いた瞬間に一歩引いてしまうんです。それは海外から見たら不思議に映るでしょうね。」

こんな書き出しで始まります。

借金はいくらしても問題ない。問題なのは現預金をいくらもっているかだというような内容が書かれています。

 

さて、そのソフトバンクですが、借金(有利子負債といいます)、売上を比較してみてみると、以下のようになります。以下は2018年3月期決算の数字です。

 

売上高   9,158,765百万円

有利子負債 17,042,188百万円

純利益   1,038,977百万円

 

桁が大きすぎていくらなのかわかりづらいかもしれません。売り上げが年間約9兆円に対して、借金は17兆円もあります。売り上げの実に倍くらいの借金があるわけです。ですが、利益は約1兆円あります。2017年3月期は利益が1.4兆円だったので、昨年比で約4000億円利益が減少していますが、依然として高い利益を出しています。

ソフトバンクの会長の孫正義さんはご自身のことを「借金王」と言っているらしいですが、これだけ借金があっても問題がないのは、現預金が約3兆円もあるためです。借金と言ってもすぐに返済を迫られるわけではありません。経営にとって大切なのは借金をいかに少なくするかではなく、できるだけ多くの現預金を持つことです。そして、確実に毎期、利益を出すことです。これによって、銀行はより貸しやすくなります。こうした状況が売上以上の借入金をしても問題ない状況を生み出しています。ソフトバンクという日本を代表する企業がこれを証明しています。

 

私の手元に「会社四季報」があります。「会社四季報」というのはその会社の事業の概要が書かれている辞書のようなもので、日本の上場企業の決算状況のダイジェスト版が載っています。この「会社四季報」を参考にいくつかの有名企業の売上と有利子負債の状況をみてみると、有利子負債が0となっている企業も数多くあります。借金はよくないと考えている表れでしょう。一方で、売上を上回る有利子負債がある有名企業も数多くあります。どんな企業があるのか、少し見てみましょう。

 

小田急電鉄

2018年3月期

売上高 524,660百万円

有利子負債 611,473百万円

純利益は29,328百万円と過去最高益。複々線化で混雑緩和し、利用者増加。

 

JR東日本

2018年3月期

売上高 2,950,156百万円

有利子負債 3,190,523百万円

純利益は 288,957百万円と直近5年で最高益。東京駅「グランスタ」やさいたま新都心の商業施設や賃貸ビルが好調。

 

東京ドーム

2018年1月期

売上高 83,686百万円

有利子負債 140,511百万円

純利益は8,116百万円と直近5年で最高益。スパラクーアが利益に貢献。

 

住友不動産

2018年3月期

売上高 948,402百万円

有利子負債 3,473,511百円

純利益は119,731百万円と直近5年で最高益。リフォーム・仲介事業が好調を持続。

 

NECキャピタルソリューション

2018年3月期

売上高 231,432百円

有利子負債 729,073百万円

純利益は6,006百万円と直近5年で最高益。情報通信機器・リースが堅調。

 

これらの企業の経営状況は決して悪い状況ではなく、むしろ好調な経営状態を維持しています。

 

よく私が聞かれることに「借入金はいくらまでしていいんですか?」というものがあります。

これは正直言うと、困る質問です。結局、いくらまで借入していいかなどというものは答えがないからです。現預金が少ないのであれば資本金を大きくするか、借り入れ(有利子負債)をするかしかないわけです。これまでこのブログで何度となく、書いてきましたが、どこまで借金をしていいのかと考えるのではなく、現預金を多く持つことが大事です。現金が少ないのであれば、借入金で賄うしかないでしょう。

これまでのブログは以下を参照してください。

 

月商の6か月分の借入金で倒産危機!?税理士や会計士の借入金にまつわる誤解

借入金なしの経営は危険!手元資金に不安がなくても借入しよう!

 

銀行融資の鉄則、「晴れた時こそ傘を借りる!」

 

上記のような大企業の決算を参考にしてみてはいかがでしょうか?