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ラグビーのワールドカップの余韻がまだ残っているということでしょうか。 ラグビーの解説やドラマにも俳優として出演したりしていた元ラグビー日本代表のキャプテン廣瀬俊朗さんの記事をたまたまネットの記事でみました。廣瀬俊朗さんの「目的」と「目標」の違いという話は経営にもそのままあてまはまる話だと思って感心しつつ読みました。↴

https://www.j-cast.com/2019/11/12372341.html?p=all

大学入試でも、人生でも、「目標」を掲げる人は多いです。実際「目標」というのは目に見えやすいものですし、それを達成するために頑張るというのは分かりやすいです。しかし、「目的」というのはあまり考えないことが多いかもしれません。私は経営者にこそ「目標」よりも「目的」が必要だと思って、日々、それを実感しています。

経営目標というと、一番わかりやすいのは「売上年商○万円」というようなものです。 「目標」というのはそれを目指してがんばっているときはいいんです。山の頂上をみながら歩いているようなものです。しかし、「目標」を達成してしまうとそのあとはどうなってしまうのでしょうか?もしくは、「目標」が達成できなかったら、どうなってしまうのでしょうか?

大学入試などは典型例だと思います。○○大学に合格する、といって頑張って勉強しても、必ずしもその結果を得られるとは限りません。では、目標を達成できなかったらやってきたことは全て無駄になるのでしょうか?そうではないです。問題なのは、何のために頑張ってきたのかという「目的」なわけです。

先ほどの廣瀬さんは、次のように話をしています。

「『目標』っていうのは、例えば『日本一になる』とか『試合に出る』とか、皆さん、あると思います。それは最後、天候だったり、監督が決めることだったり…。自分自身では決められない。でも、『目的』っていうのは違う。『なぜ自分はラグビーをしているのか』ということ。周囲の子どもたち、クラブハウスを毎日、キレイにしてくれていている方々…。そういった方々に『自分の姿勢』を見てもらうこと。ラガーマンなんて選手寿命はそう長くない。皆さん、いずれは引退する。その時に『何を残せたのか?』というのが『目的』だと思います」

「目標」というのは自分以外のモノにも影響されます。達成できるとは限りません。しかし、「目的」はまさに自分自身が決めることです。つまり

「目標」・・・他者に影響されるモノ

「目的」・・・自分が決めるモノ

これは経営にも当てはまる話だと思います。 「経営目標」を掲げて、年商(月商)○万円!というのは大事なことです。否定はしません。それに向けて頑張ることも大事なことです。しかし、それは「目的」を達成するための手段でしかないわけです。そもそもなぜ、その年商(月商)○万円を達成したいのか、そこです。年商(月商)○万円を達成すれば、資金繰りが楽になる、銀行からの融資が受けやすくなる、給与が上がる・・・それもそうかもしれませんが、それらは「目標」を達成した結果、起こることです。もっと根本的な「目的」が必要です。

なぜ、その事業で売り上げを上げたいのでしょうか?自分のやろうとしているビジネスモデルをより多く広げて社会に貢献したいとか、目の前の○○というお客さんを喜ばせたいとか・・・それが「目的」です。

私が見ていると、特に長く経営に携わっているとその部分を見失いがちです。見失うととたんに「カネもうけ」に走りがちです。「カネもうけ」自体は私は悪いことではないと思っています。悪いのは「カネもうけ」は目的を見失ってしまうことが多いということです。「カネもうけ」は多少、悪いことをしたとしてもお金を持ってくる人を評価することにつながります。そうなると、経営者に軸がなくなります。何のためにやっているのかがわからなくなるわけです。従業員や周りの人はそうした経営者の姿勢に敏感です。たちまち雰囲気が悪くなります。しかも、「目的」を中心に考えないと、どこに向かっているのかわからなくなります。

また、経営というのは様々な環境に影響されます。「カネもうけ」が思うようにいかなくなることも出てきます。そうした悪い状況に陥った時、自分はなぜこの事業をしているのか、その「目的」があれば頑張れます。「目的」というのは忘れがちなのですが、悪くなった時にとても大事なものになってきます。

よくスローガン(標語)を掲げている会社があります。 会社のスローガンというと私が真っ先に思い当たるのが電機メーカーのソニーの「It’s a sony」です。 Sonyというのは会社の名前ですから固有名詞です。固有名詞の前に「a」があるのは文法的には正しくはありません。ここには、固有名詞としてのsonyではなく、sonyの製品が「a」を付けるほどにあちこちに存在するようなものを目指すという意思があるそうです。それほど社会の役に立つ商品を作る、これがソニーという会社の存在する「目的」なわけです。

このように「目的」をスローガンという言葉にするのは、なぜこの事業をやっているのかという「目的」を忘れないためという側面もあるのではないかと私は考えています。

ちなみに、私は自分の事務所の名前にその事業の目的を「スローガン(標語)」として入れています。HPにも書かれていますが、「ヴァンガードマネージメントオフィス」の「ヴァンガード」は先駆者という意味です。私は事務所名前に自分の「目的」を入れました。詳しくは下記のHPの会社概要をご覧ください。↴

会社概要

 皆さんの会社でも「目的」を忘れないよう、スローガンにしてみてはいかがでしょうか?



今年は実に台風の多い年です。台風15号のあと台風19号が来て、風水害の災害が多く発生しました。被害に遭わないまでも、非難を余儀なくされた方も随分、いらっしゃいます。

今年は同時期にラグビーのワールドカップがありました。中止になってしまう試合もあった中で、台風19号の影響で釜石で開催予定だったカナダとナミビアの試合が中止になりました。それを受けて、カナダの選手は釜石でボランティア活動をかって出たようです。日本代表の選手も富津市にボランティアに行ったということです。

それにしても、ますますラグビーの選手というのは国を問わずにこうした姿勢の人が多いのには感心させられます。ますますラグビーに対しての好感度が上がるような話です。

さて、災害の多い今年ですが、災害に遭った場合は税金の申告や納付期限が延長されることをご存知でしょうか。

延長される場合には2種類あります。

一つは地域が指定されるケースです。

これは国税庁が申告や納付が延期される地域を指定します。指定された地域にある法人やその地域に住んでいる人の確定申告は延期されます災害等の理由がやんでから2か月以内に延期されます。実際、東日本大震災は3月11日に災害がありました。確定申告の期限が3月15日と迫っていましたので、この地域を指定した申告期限の延期が適用されました。このときは、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の5県については、平成23年3月11日以降に到来する国税に関する申告・納付等の期限の延長をしたのです。

指定された地域以外でも災害にあった場合には同様に申告期限を延長することができます。

この場合には「災害による申告、納付等の期限延長申請書」という書類を税務署に提出する必要があります。

これは、仮に当初の申告期限が過ぎていたとしても大丈夫です。あとからでも提出すればいいのです。この期限を経過していてもあとからでも出せば認められるというのはこの制度の特徴的なことです。 この延長申請書を出すと、災害等の理由がやんだ日から2か月以内に申告すればいいことになっています。 今回の台風の被害の場合には、原則的には、この個別に延期する制度を使うことになります。

この届け出の際には、罹災証明書の写しなどの添付を求められることもありますから、税務署に相談しながらやったほうがいいとは思います。

また、対象になる税目は、法人税や所得税の他、消費税や源泉所得税も対象になります。 源泉所得税は毎月納付だったりすると、災害があった後、納付の手続きができないということは想定できます。その場合にも、災害がやんでから早めに「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を出したほうがいいでしょう。

それから、この災害に遭ったというのは対象になるのは関与している会計事務所側が災害に遭った場合にも適用されます。

国税庁のHPには次のように記載されています。

地域指定以外の地域に納税地がある法人が、災害により期限までに法人税、消費税及び地方消費税の申告をすることができない場合とは、

例えば次のような場合をいいます。  

本社事務所が損害を受け、帳簿書類等の全部又は一部が滅失する等、直接的な被害を受けたことにより申告等を行うことが困難な場合

交通手段・通信手段の遮断や停電(計画停電を含む)などのライフラインの遮断により申告等を行うことが困難な場合

会計処理を行っていた事業所が被災し、帳簿書類の滅失や会計データが破損したことから、決算が確定しないため、申告等を行うことが困難な場合

工場、支店等が被災し、合理的な損害見積額の計算を行うのに相当期間を要し、決算が確定しないため、申告等を行うことが困難な場合

連結納税の適用を受けている場合において、連結子法人が被災し、連結所得の計算に必要な会計データの破損があったことなどから、申告等を行うことが困難な場合

災害の影響により、株主総会が開催できず、決算が確定しないため、申告等を行うことが困難な場合

このような場合のほか、税理士が、 ・交通手段・通信手段の遮断や停電(計画停電を含む)などのライフラインの遮断 ・納税者から預かった帳簿書類の滅失又は申告書作成に必要なデータの破損等 の理由で、関与先法人の申告等を行うことが困難な場合

にも、個別指定の申請をすることができます。

また、このような災害による申告期限の延長の場合、通常は課される延滞税や加算税が課されることはありません

延長になった期限内に申告すれば、通常の期限内での申告と同じ扱いとなるためです。

それから、これは税金の申告・納付の話ですが、助成金の申請や社会保険・労働保険の申告納付には原則的にはこうした災害による延長というのはありません。「やむを得ない事由」がある場合には認められる場合もあるかもしれませんが、原則的には助成金や社会保険・労働保険には期限延長はないものだと思っておいた方がいいでしょう。

今回の台風や地震といった自然災害に限らず、火事といった災害にも適用できます。 私の顧問先にも申告期限近くに火事にあってしまい、申告期限を延期した会社がありました。

自然災害や火事などにあったらまずは災害と向き合うことですが、それが済んだら今度は申告期限のこともあるということを頭の片隅にでもおいておいていただければと思います。



早いもので、もう年末調整の時期となってきました。 この時期になると最も質問が多いのがパートの方がいくらまでだったら働いたらいいのかという質問です。税制も変わったこともあり、少し変わっていますからこの機会に把握しておきましょう。

大きくは「税金」の話と「社会保険」の話があります。

まず、「税金」の方の壁から行きましょう。 103万円というのは、以前はパートの方が税法上の扶養になるにはこの103万円というのが基準でした。今はこの配偶者控除(正しくは配偶者特別控除として上限)の基準は103万円から150万円になっています。具体的には103万円を超えて150万円までは配偶者控除ではなく、配偶者特別控除で上限の38万円が取れる範囲です。103万円というのはご自身に所得税の負担が出てくる基準になります。生命保険料控除など、他の所得控除が何もないのであれば、103万円を超えたところから所得税がかかります。 そして、150万円というのは配偶者(通常は夫であるケースが多いと思います)の側が配偶者特別控除の上限額の38万円をギリギリとれる基準です。150万円から201万円までは配偶者特別控除が取れますが、控除額が150万超から201万になるまで段階的に減っていくことになります。

実はその前に、住民税がかかる基準が100万円というのがあります。

ということは、税金上の壁というのは、次の順に税金がかかってくることになります。

100万円・・・本人側に住民税がかかる

103万円・・・本人側に所得税がかかる

150万円・・・配偶者側の配偶者特別控除の上限額が取れる

201万円・・・配偶者側の配偶者特別控除もゼロになる

次に、社会保険の壁です。

社会保険の壁というのは、社会保険の扶養になるかどうかという基準の話です。これには二つあります。106万円と130万円です

106万円というのは、配偶者が大きな会社にお勤めの場合の社会保険の扶養の基準です。

正社員が501人以上の会社など一定の要件の会社にお勤めの場合、扶養に入る基準は年収が106万円未満である必要があります。106万円というのを12で割ると月額約88,000円です。月収88,000円を超えると社会保険の扶養から外れないといけなくなるわけです。これが106万円の壁です。

一方で、配偶者がお勤めの会社が大企業でない場合、社会保険の扶養に入る基準は年収130万円になります。

年収130万円ということは月収に直すと、だいたい108,000円です。この中に収まっていれば扶養でいられます。 ちなみに、月収で直したときに、106万の場合には88,000円、130万の場合には108,000円という方ですが、ある月はこれを超えていて、ある月はこれを超えていないというケースもあるでしょう。その場合には、年収で見て106万や130万を超えていないかどうかで判断することになります。

また、社会保険の扶養から外れた場合には、ご自身で国民健康保険や国民年金に入ることになります。これらの負担を考えると、こうした基準を少しオーバーしたくらいだと社会保険の扶養から外れるのは負担が大きくなるということはあり得る話です。 国民健康保険や国民年金に入るのではなく、パートとして働いている会社の社会保険に加入するというのも選択肢になります。この場合には常勤の4分の3以上の勤務時間に達しているかどうかが問題になります。勤務時間が常勤者の4分の3に満たないようだと、ご自身で国民健康保険や国民年金に入ることになるわけです。 パートとして働いている会社の社会保険に入れば、厚生年金にもなるので将来の年金額が増えることもありますし、病気や怪我で働けなくなった場合、傷病手当金を受給することもできます。

会社と話をして社会保険の適用になる程度まで時間数を増やしていくということも選択肢になります。 100万、103万、106万、130万、150万、201万と壁にはそれぞれ基準があります。とても多くの基準があり、それぞれの意味が異なります。数が多くて把握しきれないようでしたら、まずは税金と社会保険にわけてこのブログを見ながらどのようにしたらいいのか、検討してみてください。



ラグビーのワールドカップが終わりました。 結局、日本に勝った南アフリカが優勝しましたね。 日本もベスト8と大健闘でした!!! もう一つ勝って、ベスト4まで行っていたらどうなったのだろうと思います。

それにしても大いに盛り上がった大会でした。

ラグビーロスというのが広がっているらしいです。これほどまで盛り上がるとは正直、予想していませんでした。ラグビーファンを自認する私としては、一過性のことに終わらずに、トップリーグや大学ラグビーの盛り上がりにつながるといいなあと思っています。

4年後が楽しみですね。個人的には日本代表がいつかオールブラックスに勝ってくれる日が来るのではないかと楽しみにしています。

11月に入り、いよいよ年末調整の時期にもなってきます。 今週もまた情報発信していこうと思います。



令和2年度の税制改正で気になる話題が出ているようです。 退職金の税制が見直される可能性があるということです。

退職金は税金が少なくなるような計算がされます。 収入金額から一定の退職所得控除額を控除して、その上その引いた金額を2分の1するという計算をします。しかも、退職所得控除額は、勤続20年以下だと勤続年数に40万円を掛けた金額が控除額になります。(最低でも80万円は控除されます)

勤続年数が20年を超えると、20年の場合の控除額の800万円(40万円×20年)に70万円×(勤続年数―20年)で求めることができます。算式で示すと次のようになります。

(1)退職金の収入金額(源泉徴収される前の金額)

(2)退職所得控除額

 ① 勤続年数が20年以下・・・40万円×勤続年数  

② 勤続年数が20年超・・・800万円+70万円×(勤続年数―20年)

(3){(1)―(2)}×1/2

もともと退職金というのは、退職後の老後の生活のための資金であることが多いことから、税制上の優遇措置を設けたというのがその趣旨です。見直しの話が出てきている背景には、近年、働き方が多様化し、一つの会社に勤務し続けるという働き方が少なくなってきていることが挙げられます。必ずしも、定年まで一つの会社に勤務し続けるという働き方がスタンダードではなくなってきたわけです。そもそも老後の生活設計以前に辞めてしまうのに税制上の優遇措置を設ける必要があるのかというところだと思います。 また、そもそも退職金のない会社もあったりします。退職金のない会社で勤務した場合には、退職金がある会社で勤務している者との差ができてしまうという問題もあるでしょう。 様々な働き方がある中で、勤続年数の違いや退職金の有無によって有利・不利が出てきてしまうような税制は見直したほうがいいというのが背景にあるわけです。

実は、退職金の課税方法が優遇されているのを見直そうという話自体は以前からありました。今回、これが自民党の税制調査会で、具体的にこの退職金課税の見直しに言及する意見があったようです。自民党の税制調査会での意見があって税制改正に反映されるという過去の流れからしても、令和2年の税制改正に挙がってくる可能性があるわけです。

具体的に見直しの対象になるのは、おそらく勤続年数が20年超の場合に退職所得控除額が増える点と、2分の1課税になる点ではないかと思われます。

退職金の税制上の優遇措置があることに目を付けて、時間をかけて節税対策の退職金目的の生命保険をやっていたりする中小企業も多いと思います。どのようになるのかは、現時点ではわかりませんが、退職金の税制が見直される可能性があるということは中小企業の経営者の皆さんも知っておいてもいい点だと思います。



今日はこの10月から導入された軽減税率制度で、有料老人ホームの軽減税率について書いていこうと思います。

まず、有料老人ホームでの食事の提供は軽減税率の対象になります。 このことは以前に本ブログでも取り上げました。↴

 

以前のブログでも書いたように、「1食640円、1日1,920円(1食640円×3食)」以下の部分の食事の提供が軽減税率の8%になります。問題は有料老人ホームでの食事の提供を業者に依頼していた場合、どのように計算すれば軽減税率の対象になるのか、という点です。

この点は以前のブログで書いた国税庁のQ&Aからは明らかでなかったのですが、業務委託費がある場合の軽減税率の取り扱いについて、国税庁は納税者に対しての回答文書という形で回答しています。

この老人ホームにおいては、入居契約書で「食材費が1日3食800円(1日3食とも食べない【欠食】場合に限り食材費はなし)で、食材費は800円×喫食日数としている場合で、なおかつ、業務委託費が食材費とは別に、欠食の有無にかかわらず、月額31,000円としている」という例が出ています 上記の場合、たとえば、1か月の日数が31日の月の場合、1日当たりの食費は次のように計算していいのかというのが質問の要点です。

800円+31,000円÷31日=1,800円 1日1,800円ということは、1日1,920円以下になるため、業務委託費部分も含めた全額を軽減税率の対象としていいのかというのが質問の要点です。

結論としては、このケースのように、合理的に算定できている限り業務委託費部分も含め、軽減税率の対象としていいとしています

ちなみに、1か月30日の場合には、「800円+31,000円÷30日=1,833円」なので1,920円以下となり、1か月28日の場合でも、「800円+31,000円÷28日=1,907円」で1,920円以下となり、いずれにしても軽減税率の適用で問題ないことになります。 有料老人ホームでの業務委託費がある場合の食費の取り扱い国税庁からの文書回答なので問題ないと考えていいです。

なお、この金額は税抜きの金額です。1食640円は税抜き価格ですから、税込価格だと、640円×1.08=691円となります。(1日は税抜きで1,920円なので、税込は1日当たり1,920円×1.08=2,073円となります)

参考にしてみてください。



前回のブログでやった「不納付加算税」というのは源泉所得税特有の加算税です。それ以外の加算税が3つあります。修正申告した場合の加算税です。

○過少申告加算税

過少申告加算税というのは、いったん期限内申告をしてその申告書に修正があって修正申告した場合です。原則は10%ですが、一定の場合には15%になります。一定の場合というのは「期限内申告の税額」と「50万円」のいずれか多いほうの金額を超える場合を言います。この超える部分の金額は15%になります。 たとえば、期限内申告で納めた税金が100万円だったとします。 期限内申告の税額100万円と50万円を比べて100万円の方が大きいですから、修正申告の税額が100万円を超えたら超える部分が15%の加算税となります。修正申告で納付した税額が150万円だったとすると、100万円を超えた50万円が15%の加算税となるわけです。 この場合、100万円の部分は10%で、50万円の部分は15%になるため、過少申告加算税は325,000円となります。 ただし、この過少申告加算税には軽減されて5%になる場合があります。税務調査などがなくて自主的に修正申告を出す場合です。通常、修正申告をするのは税務調査があって税務署に指摘されてやることが多いです。過少申告加算税の税率が10%(もしくは15%)となるのは税務調査を受けて修正申告した場合です。なんらかの理由で、申告した内容が間違えていることに自分で気づいて修正申告した場合には過少申告加算税は5%に軽減されます。 前回の源泉所得税の納付をうっかり忘れてしまった場合の救済措置があったのと同じで、うっかりミスで気づいて自主的に修正申告した場合には過少申告加算税の税率も少なくなっているわけです。 修正申告をすると発生する加算税が「過少申告加算税」というのはご理解いただけましたでしょうか。

○無申告加算税

「無申告加算税」というのは名前のとおりです。期限までに申告がなかった場合に課される加算税です。無申告加算税には通常、2種類あります。一つは、期限までに申告しなかった場合です。もう一つは、その期限までに申告しなかった申告内容に誤りがあって修正申告する場合です。期限後申告の修正申告ということです。 この無申告加算税の税率は、原則は15%です。ただし、これも過少申告加算税と同じで、一定の場合には加算税の税率が増えて20%になります。一定の場合というのは「期限後申告の税額」と「50万円」のいずれか多いほうの金額を超える部分の金額は20%になります。 これも、過少申告加算税と同様に、期限後申告と言っても1か月以内に申告された場合には、加算税の税率が軽減されます。期限後と言っても様々な事情があり、なんらかのやむを得ない理由で期限後になってしまったとか、申告書は出来ていたのにうっかり出すのを忘れていたとか、そうした様々な事情があります。1か月以内に申告したのであれば、無申告加算税も15%ではなく、10%(一定の場合には15%)に軽減する措置があります。 また、過去5年間に無申告加算税や重加算税が課されたことがある場合に「無申告加算税」がまた課された場合、これは悪質とみて、加算税が通常の割合に10%加算されます。無申告加算税というのは申告期限後に申告したということなわけで、事情がどうであれ、期限後に申告するということを5年以内にすでにやっているのであれば同情の余地はないということなわけです。 いずれにしても、期限後申告の場合(もしくは期限後申告の修正申告の場合)の加算税が「無申告加算税」です。

○ 重加算税

重加算税というのは、「仮装・隠ぺいがあった場合」とされています。悪意があって税額をごまかしたり、申告していなかったりした場合です。この場合には、上記の「過少申告加算税」や「無申告加算税」に代えて「重加算税」が課されます。重加算税の税率は、二つあります。「過少申告加算税」や源泉所得税の納付が遅れた場合の「不納付加算税」に代えて課される場合には35%です。「無申告加算税」に代えて課される場合には40%です。 たとえば、申告期限後の申告になって、それが悪質であると判断されると、40%となるので、期限後申告で納めた税額が100万円だったとすると、40万円を追加で納付することになります。実際には、申告期限から納付された日までの期間の延滞税も納付するので、140万円では済みません。

また、重加算税というのは、税務署側が課する最高級の加算税です。重加算税の対象になったということは、言ってみれば「ブラックリスト」入りなわけです。通常、3年以内に再度、税務調査があるとされています。 重加算税の対象となるというのは単に税金が多く発生するだけの話ではないのです。そのため、重加算税の対象となる場合の要件というのは実は細かく規定されています。「仮装・隠ぺい」の事実を具体的に書かれているわけです。これは、納税者側に負担を強いる話だから「こういうことに該当したら重加算税の対象だよ」ということを先に税務署側が明確に示しているわけです。 全部、ここであげるのは難しいので、一部だけご紹介します。法人税の場合の重加算税の例としては以下のようなものがあります。

(1) いわゆる二重帳簿を作成していること。

(2) 次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)があること。  帳簿、原始記録、証ひょう書類、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、棚卸表その他決算に関係のある書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること。  帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること。  帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること。

(3) 特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類を改ざんし、又は虚偽の申請に基づき当該書類の交付を受けていること。

(4) 簿外資産(確定した決算の基礎となった帳簿の資産勘定に計上されていない資産をいう。)に係る利息収入、賃貸料収入等の果実を計上していないこと。

(5) 簿外資金(確定した決算の基礎となった帳簿に計上していない収入金又は当該帳簿に費用を過大若しくは架空に計上することにより当該帳簿から除外した資金をいう。)をもって役員賞与その他の費用を支出していること。

(6) 同族会社であるにもかかわらず、その判定の基礎となる株主等の所有株式等を架空の者又は単なる名義人に分割する等により非同族会社としていること。

帳簿の改ざん、売上の計上をしていない、簿外資産がある・・・ いかにも悪そうなことだとお分かりだと思います。 今回、話題になっているチュートリアルの徳井さんの場合、申告していない期間がかなりあったとか、仮に申告していても申告期限までに申告していない(報道によると一度も期限内申告したことがないということですが)など、重加算税に該当する事実があったようです。 重加算税はかなり重い罰則なんだと理解していただければと思います。

修正申告したり、期限後申告だったりするとこうした加算税が課されるわけですが、これ以外に延滞税もかかります。それを考えると、税法に則って期限までにきちんとした内容で税務申告をすることは重要であるということを認識していただけたらと思います。

参考までに以前に書いた本ブログの「延滞税」の記事は以下です↴

以上、今日は3つの加算税の話でした。



さて、今日は「修正申告」に伴う「加算税」という話です。前回、チュートリアルの徳井さんの修正申告の話を書きました。実は、修正申告するというのは差額の税額を納付しなければいけないだけではないのです。修正申告に伴って「加算税」という税金が発生してきます。その話をしていきたいと思います。

「加算税」には大きくわけて三種類と一種類あります。合計4種類ですが、三種類と一種類と分けたほうが理解しやすいと思います。 三種類というのは、「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」です。これらは、申告に伴って発生する加算税です。 一方で、一種類というのは「不納付加算税」です。これは源泉所得税の支払が期限までに納付できなかった場合の加算税です。

源泉所得税というのは他の税金と違って、申告して納付するものではありません。税務署側からすると納付して初めて税額がわかるものです。つまり、納付してもらうまで税額が分からない税金なわけです。納付期限までに納付できずに、期限後に納付した場合、源泉所得税の場合には、その金額の10%を追加して納付することになります。この「不納付加算税」ですが、実は免除される場合があります。次の要件に該当した場合です。

1. 納期限から1ヵ月以内に納付している

2. 納期限の属する月の前月末日から過去1年間は、税務署に指摘されることなく、すべて期限内に納付している

うっかり納付するのを忘れることはあるはずです。そうした場合には「不納付加算税」は取らないというようにしているのです。 また、税務調査等で指摘を受けてから納付した場合、原則通り10%の不納付加算税が課されますが、税務署に指摘される前に自主的に納付した場合には不納付加算税が5%に減免されます。 そして、計算した不納付加算税の金額が5,000円未満の場合には納付が免除されます。 なお、5,000円未満かどうかは「所得の種類ごと」かつ「納期限の異なるごと」に判定されます。 「所得の種類ごと」というのは、「給与」に対する源泉所得税と「報酬」に対する源泉所得税がある場合、「給与」と「報酬」の合計で不納付加算税の金額が5,000円を超えていたとしても、給与分の不納付加算税と報酬分の不納付加算税がそれぞれ5,000円未満であれば、どちらも免除されるということです。

ということで、次回は、「不納付加算税」以外の加算税についてみていきましょう。



お笑いコンビのチュートリアルの徳井義美さんが設立した会社が所得隠しをしていたとして7年間で1億2000万円の所得隠しを指摘されたという報道がされました。

2012年から2015年までの4年間で個人的な旅行や洋服代、アクセサリー代などを会社の経費として計上していたのですが、国税局側はこれを経費として認めず、約2000万円の所得隠しを指摘したということです。 また、2016年から2018年までの3年間は収入を全く申告しておらず、徳井さんに対し約1億円の申告漏れを指摘したということです。

重加算税等を含めた追徴税額はあわせて約3400万円にのぼるという話です。 徳井さんはすでに納税と修正申告を済ませているらしいです。

この話は芸能人なだけに大きな報道がされています。 芸能人などの著名人は税金逃れという問題で済む話ではなく、たとえばスポンサー契約をしている相手に対しての損害賠償請求など、話が大事になります。これらを徳井さん自身はどの程度、自覚していたのか、そもそも全く申告していなかった点からすると、申告漏れということに対してどの程度、認識があったのが疑問ではあります。 通常の税務調査を受けたことのある方はお分かりになるとは思いますが、通常は税務調査で調べられるのは過去3年分です。それを7年もさかのぼったわけです。国税庁からするとよほど「悪質」であると判断されたのでしょう。

怖いのは、修正申告によって発生する税金だけではないことです。これに伴って取引を中止することになったりという影響があるということです。特に、徳井さんの場合、芸能人です。イメージとか社会的影響とかを考えると影響は甚大です。徳井さん自身も記者会見を開き、謝罪しています。これは影響が大きく及ばないように配慮しているのでしょう。

もう一つよくわからない点があります。このような事態になったのは私は顧問税理士がいないのかと思っていました。ですが、どうやら税理士はついていたようです。通常、法人組織にしているのであれば税理士がついているのは当然です。よくわからないのは税理士がついているにもかかわらず7年もさかのぼって修正申告したうえ、重加算税の対象になったという点です。しかも、報道によれば、申告漏れというか、直近3年間は申告自体していなかったということです。どういう事情かは不明ですが、税理士がついていながら申告もせず、こうした事態になってしまうのは釈然としない感じはします。

ということで、今日は徳井さんの話で終わってしまいましたが、次回は、修正申告に伴って発生する「加算税」の話をしていきたいと思います。



さて、今日はよくある質問です。個人事業をやっている方で、ご自宅の電話代や携帯電話代などの経費はどこまで認められるのでしょうか?

こうした質問は主に個人事業主の方から受けることが多いです。結論が聞きたいのでズバリ「自宅の電話代は何%だったら大丈夫」といった聞かれ方をすることもあります。 ですが、税務署側にも判断する際の基準があります。今日は実際の裁判例を引き合いに、税務署はどういう基準でどう判断しているのか、という話をしていきたいと思います。

その前に、基本的な部分の話からです。 支出のうちに生活費の部分が含まれているものを「家事費」とか「家事関連費」といった呼び方をします。 「家事費」というのは必要経費には算入できない生活費です。自宅の家賃や毎日の食費などが「家事費」です。「家事費」はどう頑張っても、必要経費には算入できないものです。 これに対して、「家事関連費」というのは、生活費の部分と事業に関連する部分が混ざっているものです。これは、一部が必要経費に算入できます。 この「家事関連費」に関して、国税庁のHPには次のように書かれていますので、以下にそのまま引用します。

個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。  

(例)交際費、接待費、地代、家賃、水道光熱費  

この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

「家事関連費」については、生活費の部分と業務の部分とで明確に分けられれば必要経費にしていいと言っているわけです。 さて、これを前提にしてある裁判例を見ていきましょう。 この裁判例は、夫が妻と共同で保険代理店をやっていたというケースです。問題になったのは次のような経費です。

・自宅の家賃

・自宅の水道光熱費

・長男の義務教育にかかる費用

・長男に係る弁護士費用

・仕事用品の雑費とする一部費用

裁判では、まず、前提として、家事関連費のうち必要経費と認められるのは ①業務の遂行上必要であること ②その必要な部分が明確に区分されていること この二点である

と、改めて確認したうえで、上記の費用を次のように判断しています。

・自宅の家賃

「『1階部分の利用実績表』と題する手帳によれば、妻と共同で、顧客を招いてセミナー等を開催していたことが認められる。しかし、居住の用に供されるのは3LDKの2階建て住宅全体であり、居住用部分と事業用部分を明確に区分できる状態にないことは明らかである。そのため、必要経費にならない」

・自宅の水道光熱費

「本件住宅のうち、本件住宅のうち各業務のために使用されるいわば専用スペースとして使用されていた部分はなく、リビング等が各業務に使用されていた実態も明らかでないことから、必要経費に算入することはできない」 ・長男の義務教育にかかる費用 「長男は、PTSDに罹患していると診断されていることが認められ、小学校に通学することができなかった期間があることが推認されるものの、これらの事実関係のみからは、義務教育代行費用(教育費用)と各業務との関連性が明らかではない。原告は、教育費用を支払わなければ原告は売上げを確保することができなかった旨主張するが、教育費用の支出について客観的な必要性を根拠付けるものとはいえない。」

・長男に係る弁護士費用

「一般に、事業を行う者が、事業所得による収益の補填を目的として、事業所得の減少分に係る損害賠償請求訴訟を提起することを弁護士に依頼した場合には、その費用は、総収入金額を得るために直接要した費用ということができるから、その金額は必要経費に算入することができるというべきである。 本件弁護士費用(原告の長男が小学校の担任教師から暴力を受けたことに関してD市教育委員会を訴えるために弁護士に支出した費用)は、長男の訴訟にかかわることで、各業務に係る売上げの減少による損害賠償を求める訴訟を提起すること及びそのための事前交渉を弁護士に委任した際の着手金であり、原告と妻は、各業務に関する必要経費を原告名義及び妻名義で支払っていることから、本件弁護士費用の2分の1に相当する金額については、原告の必要経費と認めるのが相当である。」

・仕事用品の雑費とする一部費用

「 本件雑費で購入した服飾品等は、各業務の遂行上、客観的に必要であるとは認め難く、本件雑費を必要経費に算入することはできない。」

この裁判例からわかるのは、まず、 自宅家賃や水道光熱費を家事関連費として経費に計上するには「その必要な部分が明確に区分されていること」が大事である ということです。たとえば、自宅の家賃の一部を経費に計上したいのであれば、どの部屋が仕事部屋なのか、その部屋は全体の㎡数のうちの何㎡なのか、というのを明確にしないとダメだということです。 水道光熱費についても、業務で使っている部屋が特定されて業務上の使用割合がはっきりわからないから「家事関連費」で必要経費になる要件を満たしていないと言っているわけで、逆にいえば、明確に区別できるのであれば必要経費にできると解釈できるでしょう。 水道光熱費を家事関連費として経費に計上するにしても、どの部屋が業務で使っている部屋なのかをまずは特定することが大事なわけです。 弁護士費用についても、一見、長男に係る弁護士費用なので経費とは関係なさそうではあるのですが、収入が減ったために提起した損害賠償訴訟は「収入を得るために直接要した費用」であるとして必要経費にしていいと判断されています。この部分の解釈も注目点です。 また、必要経費にしていいのは2分の1としたのも面白い点です。「原告と妻で弁護士費用を払っている」ので、夫の方を必要経費に算入したと考えているのか、それとも、夫と妻で支出した全体の金額の約半分が事業にかかわりがあると判断したのかは判然としません。 (おそらく夫と妻で弁護士費用を支払っているので、夫の方は事業にかかわりがあると考えて2分の1と判断したのではないかと思いますが) ですが、「収入が減った原因になった事実」とかかわりがあると判断されれば必要経費にできると判断されている点は注目点です。

最後に、服飾品は業務との関連性が少ないとみて必要経費とみなされなかったという点も付け加えてみておきましょう。

いずれにしても共通して言えるのは、「業務に関連がある」というだけでは経費計上できないということです。特に「家事関連費」になる場合には、どの部分が業務でどの部分が業務でないのか、というのが「明確に区分」されていることが重要だという点をよく理解しておきましょう。

ということで、今日は「家事関連費」のお話でした。