手技療法の治療院、介護事業の経営に役立つ最新情報や知って得する情報満載のブログです!

この度、本を出版いたしました!

介護事業所の経営者向けの本です。

介護事業所の経営に必要なことを網羅的に書きました。

税務や会計の他、人事労務管理や助成金・補助金のこと、銀行融資のことなど、介護事業所の経営に必要なことを全て書いてあります。また、実際に介護事業所の経営者にインタビューする記事を載せるなどしてある点は、この手の本としてはあまりない形です。いずれも実務にすぐに役立つような体裁になっています。

上記の本をご希望の方はご希望の方は、セミナーにご参加ください。弊社主催のセミナーにご参加いただいた方には無料で差し上げます!!

セミナーは以下の日時で開催します。

10/22(月)13時半~ 

11/5(月)13時半~

いずれもアットビジネスセンター渋谷駅前での開催です。

参加をご希望の方は是非、ヴァンガードマネージメントオフィスまでご連絡ください!

連絡先は以下へお願いします。

 

fax 042(370)1738

e-mail  info@vanguardwan.com

※ 必ず「介護事業所名・お名前・連絡先(電話番号もしくはe-mail)・10/22もしくは11/5のいずれの参加か」を明記してください

 

 



さて、前回まで3回にわたっていわゆる「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決を引き合いに、「同一労働同一賃金」について書いてきました。経営者からすると面倒なことが増えたという話かもしれません。しかし、一方で、この「同一労働同一賃金」を進めると経営者側にもいいことがあるという話が今日の話です。「同一労働同一賃金」を進めるにあたって受給できる助成金の話です。

具体的には「キャリアアップ助成金」です。主には次の二つが使える制度です。

 

一つはキャリアアップ助成金の中の「賃金規定共通化コース」です。

これは、賃金規定の区分について、有期雇用などの非正規雇用と正規雇用の労働者について3区分以上を設け、非正規雇用と正規雇用とで共通する区分を2以上設ける制度にすると受給できるものです。

たとえば、基本給について、以下のような賃金テーブルの制度を設けることです。

 

  正規雇用(月給) 非正規雇用(時給)
1等級   1,000
2等級   1,100
3等級 200,000 1,150
4等級 208,000 1,200
5等級 215,000  
6等級 220,000  
7等級 230,000  

 

  正規雇用 非正規雇用
1等級 定型業務を指示のもと行う
2等級 定型業務を正確にこなせる
3等級 業務に対して一般的な知識を有し、定型業務を正確にこなせる
4等級 一定の研修を受け、高度な知識を有し、定型業務を行うほか、パート社員を指導できる
5等級 一定の研修を受けたうえで、パート労働者への指導の他、一定の役職に就いて役職の仕事を行う
6等級 高度な仕事を行う一方で、グループの目標達成に向け具体的なスケジュールを立て、下位の従業員に指導する
7等級 業務に対して高度な知識を有し、下位の従業員に教育的指導をし、パートタイム労働者の勤怠管理等の役職(課長職)の業務を行う

 

この助成金は導入前の制度を3か月以上導入し、変更後の賃金規定を6か月導入して初めて受給対象になります。また、変更後の賃金規定を導入する1か月以上前に「キャリアアップ計画書」を提出していないといけません。要件がいろいろとありますが、この正規雇用と非正規雇用の共通の賃金規定を導入した場合、1事業所あたりで57万円、受給できます。(生産性要件に該当すれば72万円になります。)さらに、対象となる非正規労働者が2人以上いる場合、2人目以降は1人当たり2万円(20人までが上限)加算されます。

 

対象労働者が多い場合、受給できる可能性がさらに増えるわけです。

正規雇用と非正規雇用の賃金制度を整備するにあたってはこの助成金の活用は是非、考えたいところです。

 

また、キャリアアップ助成金の「正規雇用転換コース」も是非、検討したいところです。

これは非正規雇用の労働者を正規雇用に転換すると受給できる助成金です。

現状では、以下の3種類があり、それぞれの受給額は以下です。

 

  1. 有期雇用→正規雇用 1人当たり57万円(生産性要件に該当すれば72万円)
  2. 有期雇用→無期雇用 1人当たり28万5000円(生産性要件に該当すれば36万円)
  3. 無期雇用→正規雇用 1人当たり28万5000円(生産性要件に該当すれば36万円)

なお、このキャリアアップ助成金の正規雇用転換コースについては、以前にもこのブログで紹介していますので、そちらを参考にしてみてください。

https://vanguardwan.com/blog/%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%aa%e3%81%84%e3%81%a8%e6%90%8d%e3%81%99%e3%82%8b%ef%bc%81%ef%bc%9f%e4%bd%bf%e3%81%88%e3%82%8b%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91%e3%80%8c%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%aa%e3%82%a2%e3%82%a2

 

https://vanguardwan.com/blog/%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%aa%e3%82%a2%e3%82%a2%e3%83%83%e3%83%97%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91%e3%82%92%e5%8f%97%e7%b5%a6%e3%81%99%e3%82%8b%e3%81%9f%e3%82%81%e3%81%ae%e3%83%9d%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%88-2

 

また生産性要件についても、このブログで紹介していますので参考にしてみてください。

https://vanguardwan.com/blog/%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91%e3%81%8c%e5%a2%97%e3%81%88%e3%82%8b%ef%bc%81%e3%80%8c%e7%94%9f%e7%94%a3%e6%80%a7%e8%a6%81%e4%bb%b6%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%81%af%e4%bd%95%e3%81%ae%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%8b

 

ということで、今日は、「同一労働同一賃金」を進めるにあたって受給できる助成金の話でした。



さて、前回まで3回にわたっていわゆる「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決を引き合いに、「同一労働同一賃金」について書いてきました。経営者からすると面倒なことが増えたという話かもしれません。しかし、一方で、この「同一労働同一賃金」を進めると経営者側にもいいことがあるという話が今日の話です。「同一労働同一賃金」を進めるにあたって受給できる助成金の話です。

 

具体的には「キャリアアップ助成金」です。主には次の二つが使える制度です。

 

一つはキャリアアップ助成金の中の「賃金規定共通化コース」です。

これは、賃金規定の区分について、有期雇用などの非正規雇用と正規雇用の労働者について3区分以上を設け、非正規雇用と正規雇用とで共通する区分を2以上設ける制度にすると受給できるものです。

たとえば、基本給について、以下のような賃金テーブルの制度を設けることです。

 

  正規雇用(月給) 非正規雇用(時給)
1等級   1,000
2等級   1,100
3等級 200,000 1,150
4等級 208,000 1,200
5等級 215,000  
6等級 220,000  
7等級 230,000  

 

  正規雇用 非正規雇用
1等級 定型業務を指示のもと行う
2等級 定型業務を正確にこなせる
3等級 業務に対して一般的な知識を有し、定型業務を正確にこなせる
4等級 一定の研修を受け、高度な知識を有し、定型業務を行うほか、パート社員を指導できる
5等級 一定の研修を受けたうえで、パート労働者への指導の他、一定の役職に就いて役職の仕事を行う
6等級 高度な仕事を行う一方で、グループの目標達成に向け具体的なスケジュールを立て、下位の従業員に指導する
7等級 業務に対して高度な知識を有し、下位の従業員に教育的指導をし、パートタイム労働者の勤怠管理等の役職(課長職)の業務を行う

 

この助成金は導入前の制度を3か月以上導入し、変更後の賃金規定を6か月導入して初めて受給対象になります。また、変更後の賃金規定を導入する1か月以上前に「キャリアアップ計画書」を提出していないといけません。要件がいろいろとありますが、この正規雇用と非正規雇用の共通の賃金規定を導入した場合、1事業所あたりで57万円、受給できます。(生産性要件に該当すれば72万円になります。)さらに、対象となる非正規労働者が2人以上いる場合、2人目以降は1人当たり2万円(20人までが上限)加算されます

 

対象労働者が多い場合、受給できる可能性がさらに増えるわけです。

正規雇用と非正規雇用の賃金制度を整備するにあたってはこの助成金の活用は是非、考えたいところです。

 

また、キャリアアップ助成金の「正規雇用転換コース」も是非、検討したいところです。

これは非正規雇用の労働者を正規雇用に転換すると受給できる助成金です。

現状では、以下の3種類があり、それぞれの受給額は以下です。

 

  1. 有期雇用→正規雇用 1人当たり57万円(生産性要件に該当すれば72万円)
  2. 有期雇用→無期雇用 1人当たり28万5000円(生産性要件に該当すれば36万円)
  3. 無期雇用→正規雇用 1人当たり28万5000円(生産性要件に該当すれば36万円)

なお、このキャリアアップ助成金の正規雇用転換コースについては、以前にもこのブログで紹介していますので、そちらを参考にしてみてください。

https://vanguardwan.com/blog/%e7%9f%a5%e3%82%89%e3%81%aa%e3%81%84%e3%81%a8%e6%90%8d%e3%81%99%e3%82%8b%ef%bc%81%ef%bc%9f%e4%bd%bf%e3%81%88%e3%82%8b%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91%e3%80%8c%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%aa%e3%82%a2%e3%82%a2

 

https://vanguardwan.com/blog/%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%aa%e3%82%a2%e3%82%a2%e3%83%83%e3%83%97%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91%e3%82%92%e5%8f%97%e7%b5%a6%e3%81%99%e3%82%8b%e3%81%9f%e3%82%81%e3%81%ae%e3%83%9d%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%88-2

 

また生産性要件についても、このブログで紹介していますので参考にしてみてください。

https://vanguardwan.com/blog/%e5%8a%a9%e6%88%90%e9%87%91%e3%81%8c%e5%a2%97%e3%81%88%e3%82%8b%ef%bc%81%e3%80%8c%e7%94%9f%e7%94%a3%e6%80%a7%e8%a6%81%e4%bb%b6%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%81%af%e4%bd%95%e3%81%ae%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%8b

 

ということで、今日は、「同一労働同一賃金」を進めるにあたって受給できる助成金の話でした。



さて、前回のブログで、「同一労働同一賃金」を進めるにあたって、就業規則等を変更していった場合、一部の従業員にとって、不利益な変更になってしまう場合、どのように対処していったらいいのかについて考えてみようと思います。

一般的に、就業規則や労働契約などが使用者側の都合で変更され、その変更後の内容が従業員さんにとって不利な変更になることを「不利益変更」と呼びます

就業規則や労働契約を変更する場合には、この不利益変更がない形で変更していくことも重要です。

 

ですが、会社もいくらでもお金を持っているわけではありません。会社には給与で支払える金額の限度があります。ある社員の処遇をよくすれば、一方で、別の社員の処遇が悪くなることはあり得る話です。「同一労働同一賃金」を目指し、給与体系の変更を考えるということは、変更の仕方によっては処遇が悪くなる社員が出てしまうことを意味するわけです。

 

これを考えるにあたって、まず法的にどういう問題があるのかを考えてみましょう。

まず、法律的には「不利益変更」は原則的にはいけない話です。ですが、「合理的な理由」があれば認められるとされています。では、「合理的な理由」とは何かということです。これは裁判例から答えを導き出せます。「ノイズ研究所事件」というものです。

この裁判では、年功序列型の賃金体系(年齢が上がっていくにつれて給与が上がる仕組み)から成果主義型の賃金形態(会社への貢献度が高ければ給与が上がる仕組み)に切り替えた場合、一部の社員についての給与が約1割下がったことが「合理的な理由」による不利益変更として認められるのか、というものです。

 

この裁判では、会社側の主張がほぼ認められる結果となっています。

主な理由としては、次のようなものです。

  1. 賃金形態の変更は競争が激化する業界に合って必要不可欠であったこと
  2. 今回の給与体系の変更によって、賃金総額全体については大きな変更はないものであること
  3. 頑張れば昇給する機会も平等に与えられているものであること

 

つまり、不利益な変更がやむを得ない理由があり(①の理由)、会社側の一方的な都合によるものとは認められないものであり(②の理由)、変更によって一時的に不利益を受けたとしても昇給の余地があるなどによって回復することができる(③の理由)といったことが認められた理由です。

 

「同一労働同一賃金」を目指し、賃金体系の変更をする場合、原則は賃金の原資が増えるわけではないですから、特に正規雇用の社員に不利益変更が生じてしまう可能性があります。今までついていた手当がなくなったり、もしくはなくならないまでも金額が減ることもあるでしょう。あるいは、ある手当を別の手当てに統合することで結果的に不利益変更となってしまう人が出てくる可能性があります。しかしこれはやむを得ない部分です。一つ一つの手当の意味、基本給などの設定の仕方の方法、評価の方法など、丁寧に、検討していけば道は開けます。

 

また、もう一つ大事なのは、不利益変更が生じてしまう社員がいる場合には特に、従業員説明会など、社員にその事情を説明し、新しい賃金制度について理解してもらう努力をすることは大前提としてあります。このような話をするとよく「揉めてしまうし、説明会のようなことを収拾がつかなくなるからやらない」というような話をされる経営者も少なからずいらっしゃいます。しかし、それでは逆効果です。不利益変更があるのであればなおさら、説明会はやったほうがいいです。そして、最終的に不利益変更について承諾しない社員がいたらどうするかです。これはまずは十分に話し合うことです。その上で、不利益変更を認めない社員についてはその反対する社員も含めて、就業規則の変更は認められるとした裁判例があります。(秋北バス事件【最高裁1968年12月25日】)

この裁判では就業規則の不利益変更があった場合、まず大前提として、社員に「今回の不利益変更が合理的であること」について説明会を行い、十分に説明を行っていることがあります。

 

面倒と思って従業員への説明を省くようなことはかえって経営者の首を絞める結果になります。不利益変更がある場合には、まずは従業員の皆さんにご理解いただくことが大切なわけです。

 

改正パートタイム労働法は2020年に改正されます。(中小企業はその1年後の2021年)

ここでは、非正規雇用の従業員から求められたら正社員との処遇の違いについて説明しないといけないこと、正規雇用と非正規雇用とで不合理な違いを設けてはいけないことなどが明記されています。

こうした法改正の流れを考えても、「同一労働同一賃金」を見据えた規定の整備、不利益変更になる従業員への説明など、経営者はやらないといけない課題であることを認識する必要があるものと思います。



さて、前回のブログでいわゆる「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決について、書きました。このハマキョウレックス事件は、正規雇用と非正規雇用の格差についての労働契約法第20条をめぐる裁判であるという話をしましたが、同時にこの裁判は、 「同一労働同一賃金」をめぐる裁判とも言われています。このハマキョウレックス事件の最高裁判決を受けて、今後、中小企業がどう対処していったらいいのかというのは、この「同一労働同一賃金」とは何のことなのかがわかると見えてきます。

 

「同一労働同一賃金」というのは要するに、同じ種類の仕事をしているのであれば賃金は同じでなければいけないという考え方です。

もともとこの「同一労働同一賃金」という考え方自体は欧米から来ているものです。欧米では、職務ごとの労働組合というものがあり、職務ごとに賃金形態が決まっているという経緯があります。一方で、日本では会社ごとに労働組合が組織され、会社ごとに賃金形態が定められるため、同じ仕事内容でも、A社の賃金とB社の賃金が違うのは当たり前のことと思われています。

実際、たとえば正規雇用の場合、たとえばパート労働者と同じ仕事もしている一方で、パート労働者の雇用管理(シフト組み)をやったり、残業が必要な時は正規雇用の人が残業をしたり、正規雇用には配置転換や異動があるなどするため、正規雇用の方が賃金が高いのは当たり前と受け取られる向きがありました。これをいけないとしたのが「丸子警報機事件」と呼ばれる裁判です。この裁判では、「正規雇用と非正規雇用に役割の差があったとしても著しく差があるのはいけない」としています。

「日本型同一労働同一賃金」というのは、「正規雇用と非正規雇用とで役割の違いがあるのはある程度は容認するが、まったく同じ仕事の部分は賃金などの処遇も同じにしないと不合理とみなします」というものです。ということは、職務内容、つまり仕事の中身をきちんとわけないといけないということになります。

 

今まで、なんとなくあいまいにしていた仕事の内容というのをまず分解して考えていかないといけないわけです。では、介護事業所で、デイサービスの場合を例にとって考えてみましょう。

デイサービスの業務の場合、このような業務が考えられます。

 

  1. 送迎
  2. 食事介助
  3. レクリエーション
  4. 身体介助などの利用者介助
  5. 事業所内の清掃
  6. 入浴介助
  7. 事務作業
  8. ケアマネージャーとのミーティング
  9. 家族との連絡、日程の調整
  10. パートなどの勤務時間の調整
  11. クレーム対応

 

他にもあると思いますが、思いつくものを書いていくとこうした業務が浮かびます。

この業務の洗い出しをまずしたうえで、どれが正規雇用の仕事でどれが非正規雇用の仕事かを考えていきます。

たとえば、非正規社員は①から⑥の業務を行うとします。一方で、正規雇用は②から⑨の業務を行うのを原則として、さらに、役職者は⑩と⑪の業務を行うとする、といった具合です。

加えて、入浴介助は負担が大きいことから入浴介助を行った場合には、正規・非正規に関わらず、手当を加算するとか、人事異動の可能性がある正規雇用には住宅手当を支給するとか、本来、正規雇用の役割でない送迎業務を正規雇用が行った場合には手当を支給するといったような形で、仕事の内容や、役割によって仕事に差を設けていくという形にしていくのが「同一労働同一賃金」の基本的な考え方です。

 

今回のハマキョウレックス事件の最高裁を受けて、経営者がやるべきことは、まず「同一労働同一賃金」の前提になる職務内容の洗い出しです。その上で、非正規雇用はどの業務をやり、正規雇用がやらないといけないのはどの業務かを明確にしていくこと、これが経営者がやるべきことなわけです。

 

ただ、今、実際に運用している賃金体系がこのように職務内容を考慮したものになっていない場合が問題です。職務内容にあわせて変えていく作業をしていかないといけません。

現行の制度を新しい制度に変えていく場合、ある労働者にとっては変更後の内容が不利益な変更になることを「不利益変更」といいます。原則として、この不利益変更には各労働者の同意が必要です。つまり、不利益変更のある従業員さんの同意が得られない場合、変更できないという問題があります。

 

これについては、また次回書いていこうと思います。



さて、今日は「ハマキョウレックス事件」とか「長澤運輸事件」とかと呼ばれる最高裁判決の話です。これは今年の6月1日に判決があったかなり最近の裁判例です。

特に介護事業所の経営者は関係するところの多い話だと思いますので、その概略だけでも知っておいた方がいい話でしょう。

この判決の話は、実は前からこのブログで是非ともご紹介したいと思っていた話です。少し長くなりますが、お付き合いください。

この判決は「労働契約法第20条」の話です。

なんだか難しそうだと思いましたか?簡単にいえば、非正規雇用と正規雇用というものに、適当に差をつけるようなことはしてはいけないという話です。

非正規雇用と正規雇用というのが混在するのが常態の介護事業所では、この話はぜひとも知っておいていただきたい話です。

今回と次回の二回に分けて、この「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決の話をしていこうと思います。

 

さて、まず「ハマキョウレックス事件」の「ハマキョウレックス」って、ご存知でしょうか?

ハマキョウレックスというのは物流を主な事業にしている上場企業です。

2018年3月決算では、連結ベースで売り上げが103,476百万円、経常利益で9,516百万円となっています。

物流の会社さんであること、そして全国規模で展開する比較的大きな会社であることはまず前提として押さえておきましょう。

 

その上で、このハマキョウレックス事件で今回の裁判で問題となった労働契約法第20条は次のように書かれています。

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

 

文章にするとわかりづらいかもしれません。

要するに、期間の定めがあるのとないのとで、給与や福利厚生などで不合理な差を付けてはいけないという話です。

では、ここでいう不合理な差というのは何なのでしょうか?

裁判で争われたものまさにその点です。

 

その前に、この話の大前提として、「業務の内容は責任の程度に差がない」ということがあります。正規雇用と非正規雇用とで、ほぼ同じ業務に従事していること。これが前提にあります。まずはこれを頭に置いておきましょう。

 

確かに、正規雇用の場合、転勤や出向する可能性はあります。全国にある支社に転勤する可能性があります。一方で、非正規の場合、原則、転勤はありません。また、責任ある地位に就くのも正社員です。非正規が責任のある地位に就くことはありません。その意味での差はあります。しかし、この会社の主な事業は物流です。物を運ぶ仕事です。物を運ぶという意味においては正規雇用と非正規雇用とで差は生じません。もちろん現場と事務方とでは差はあるでしょうが、基本的には「物を運ぶ仕事」において大きな差はないというのがあります。

そうした状況で、たとえば通勤手当を正規雇用には支給する一方で、非正規雇用には支給しないとしたらどうでしょうか?

確かに正規雇用と非正規雇用とでは責任の程度に違いがあるのは分かりますが、非正規雇用の人だって通勤します。それに対して、どこに住んでいようが通勤手当は支給しないというのは、「合理的」と言えるでしょうか?

また、たとえば、皆勤手当もそうです。休みなくきちんと出勤した場合に支給する手当で、まじめに働くことを奨励する手当です。これも正規雇用と非正規雇用とで支給するしないを分けるのは「合理的」と言えるでしょうか?

 

今回のハマキョウレックス事件の最高裁の判断は、こうした差は労働契約法第20条で言っている「期間の定めのあるなしで合理的とは言えない差を付けてはいけない」という部分に具体的に踏み込んだ判断をしています。

 

具体的には、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当といった項目について判断をしています

 

あまり詳しく書いていくと、法律上の難しい話になってしまうので、極力、理屈っぽい部分はこのブログでは書きません(そもそも我々実務家は、法律上どうという点ではなく、実務上、どう対応していくかが問題なので、その点に絞って書いていきます)

 

結論としては、上記の各手当のうち住宅手当は正規雇用と非正規雇用とで差を付けているのは不合理ではないとしました。ですが、残りの無事故手当、作業手当、休職手当、皆勤手当は、正規雇用と非正規雇用とで差を付けるのは合理的ではない、つまり、労働契約法第20条に違反するとしました

 

裁判で重要なのはその理由です。なぜそういう結論になったのかです。

そうした結論になったのは、手当の趣旨です。〇〇手当として支給している手当がどういう趣旨で支給されているのか。最高裁はそこに注目しました。

たとえば、無事故手当というのがありました。これは、優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得が大きな目的で支給されている手当です。

安全な輸送に正規雇用や非正規雇用は関係ないですよね?だから否定されたわけです。

 

また、作業手当というのも同じです。作業手当はこの会社では、特殊作業に対して支払われる手当としていました。しかし、実際には、正規雇用には一律に月額1万円が支給されており、実質的な意味合いがないことから、正規雇用と非正規雇用で差を付けてはいけない手当だと解釈されました。

 

給食手当は、従業員が休憩時間中に取る食事の補助として支給されているものということでしたが、これも非正規雇用であっても食事はとるので、否定されました。

 

皆勤手当や通勤手当も同様の趣旨です。

 

一方で、住宅手当は正規雇用と非正規雇用とで差があっていいとしたのはなぜでしょうか?

これは、正社員については配置転換で違う支社に行ってしまうことがあるから、としています。非正規雇用は基本的に転勤はありません。一方で、正社員は転勤があります。だから、住居の部分について手当に相違があってもそれは合理的な理由と言える、としています。

 

このように、この裁判例でわかるのは手当というのはどういう趣旨で支給されているのか、ということが大事だということです。

 

また、もう一つ、住宅手当や給食手当について、会社側は「住宅の費用の援助や福利厚生を手厚くすることは有能な人材確保に不可欠」という主張をしましたが、この主張は退けられています。

よく正規雇用との差を設けている理由に「有用な人材の確保」とか「正規雇用は長期雇用を前提にしている」とかいった理由を挙げることがあります。私も何度となく聞きます。しかし、これらの理由ではダメだといっているわけです。合理的な理由というのは、住宅手当のような差を設けているのに訳があるようなものです。そうでなく、設けている差はダメだといっています。

 

ハマキョウレックス事件の判決の要旨、おわかりいただけましたか?

 

また、たとえばこれらの項目について、もし無効とした場合、正規雇用と同じ手当の金額を支給しないといけないのか、という問題もありますが、難しくなりますのでちょっとその話は置いておきます。

 

では、この判決を受けて、会社側はどう対応していったらいいのかについて、次回は書いていこうと思います。



さて、今日は銀行融資で銀行がやってはいけないことがあるという話です。

ちょうど1ヶ月くらい前になりますが、東日本銀行が金融庁から業務改善命令を受けました。まずはその記事です。↴

https://jp.reuters.com/article/higashi-nippon-bank-fsa-idJPKBN1K315N

 

東日本銀行が業務改善命令を受けたのは何点かありますが、主に次の二点についてこのブログでは書いていこうと思います。

まず一つ目が、本来受け取るべきではなかった手数料を受け取っていたというものです

具体的には、地方公共団体の制度融資を使った融資で手数料を受け取っていたというものです。

もう一つがいわゆる「歩積み両建て」というものです。

これは、融資を受けた金額の一部を定期預金にしてもらうという約束をして融資をすることです。

他にも、支店の営業エリア内に実態のない融資先の営業所の登記を行わせ、支店長専決権限を行使させる、といったこともやっていたようですが、上記の二点に絞ってその問題点について考えてみましょう。これらは、銀行融資では固く禁止されている行為で、今回は金融庁からその指摘を受けました。では、なぜいけないのでしょうか?

 

一つ目はわかると思います。

銀行融資で本来、受け取るべきでない名目で手数料を受け取るというのが禁止されているのは何となくお分かりだと思います。今回の大きな問題は「制度融資」という税金を使った融資制度なのにもかかわらず、銀行が手数料を徴収していたという点です。融資を受ける側からすると、手数料が発生していることについて大きな疑問を持たなかったのかもしれませんが、税金を使った制度を使ったら銀行が手数料を取るというのは自治体との協定で禁止されています。さらに言えば、融資を受ける側から手数料を取ってしまったら制度融資を勧めることが銀行のためにやっているようなものになってしまうからということもあるのだと思います。

 

そして二つ目の「歩積み両建て」というのは、昔はよくあった話で、禁止されている融資の最たるものです。

具体例で考えればわかります。たとえば、1億円を融資したとします。そのうち、5000万円を定期にしてほしいと融資の際に依頼したとします。

こんなことをするのであれば、単純に5000万円を融資すればいいのでは?と思うかもしれません。これは具体例で考えればよくわかります。

たとえば、1億円の融資を利率2%で融資を受けたとします。年間の支払う金利は200万円です。「歩積み両建て」で同時に5000万円の定期を組んだとします。そうすると銀行は、1億円から定期預金の5000万を引いた金額で実際には考えます。銀行的には、この会社には定期預金の5000万を差し引いた5000万円を実質的に貸している金額と考えます。銀行からすると、実質的に貸している5000万円に対して、利率200万円を受け取っていることになり、実質的には利率4%で貸しているのと同じになるわけです。もちろん、定期を組んでいるわけですから銀行からしたら定期の利息を支払う部分がありますが、現状では、定期の利息と言っても年利で0.1%とか0.2%とかです5000万円の定期であっても会社からしたら受け取る利息は5万円とか10万円とかいうレベルです。銀行からしたら圧倒的に受けとる利息の方が大きいわけです。単純に5000万円を利率2%で融資しても受け取る利息は100万円です。このように考えれば銀行の受け取る利息が「歩積み両建て」の方がはるかに大きくなることがお分かりだと思います。

このように、ある意味、企業からしたらわからないうちに銀行が儲かるような仕組みになってしまっていることに問題があるといっているわけです。加えていえば、「歩積み両建て」で積んだ定期預金は簡単には解約できないようにしています。企業からしたら事実上、1億円の融資ではなく5000万円の融資と同じことなわけです。倫理的にも問題があるのはお分かりだと思います。

 

さて、このように、融資でやってはいけないことがあるというのを経営者の皆さん、ご存知でしたでしょうか?知らなかったということであれば知っておいた方がいいでしょう。

その上で、たとえば、銀行から「投資信託があるのだが、買ってほしい」とか「カードローンの契約をしてほしい」とか、そういった依頼を受けたことがある人も多いと思います。

これらは、銀行が本業の貸付業務でなかなかもうけが出ないため、本業以外の業務で稼いでいこうという表れです。本業のお金の貸付でもうけが出ないため、支店単位でノルマを課して「投資信託」や「カードローン」、あるいは「保険」といった部分で儲けようとしているわけです。

 

経営者の皆さんは、こうした銀行の申し出に「無下に断ったら融資に影響が出るのではないか」と思うようです。実際、経営者の皆さんから「銀行から投資信託の販売を持ち掛けられたんだけど、やっておかないといけない(融資に不利になってしまう)のでしょうか」といったようなご相談を受けることは多いです。ですが、仮にこうした「投資信託」や「カードローン」や「保険」の勧誘を断ったことで、融資の判断に影響させるような行為も禁止されていることです。純粋にその「投資信託」や「カードローン」「保険」が魅力のあるもので、経営者自身がこれらをやってもいいと判断しているのなら別ですが、必要もないのに「融資に影響がある」と思う必要は全くありません。むしろ、そうしたことをちらつかせてくるとしたら、金融庁に言ってもいい違反行為です。経営者の皆さんは毅然とした態度で臨むべきです。

 

今回の東日本銀行の業務改善命令は経営者自身も知っていれば起こらなかったような話なのではないかと思います。もしご存知ない経営者の方がいらっしゃいましたら、この機会に「やってはいけない融資」について知っておきましょう。



週刊ダイヤモンドという経済誌にソフトバンクグループのCFO、財務担当の責任を担う後藤芳光さんの「返せる自信があるのなら借金はいくらでもしていい」というインタビュー記事が載りました。(2018/6/16版の記事です)

今日は会社の借入金について、改めて考えてみたいと思います。

まずは雑誌の記事を少し紹介しましょう。

「上場企業の経営者が株主に対して、『無借金経営です』と胸を張るというのは、何を考えているんだといいたいですね。株主からしたら、企業価値を上げてもらわねば困る。ところが、借金をしなければ、手元資金の範囲でしか成長できない。にもかかわらず、借金は悪だと。もはや、論理を超えていますよね。背景には日本人の美徳のようなものがあるかもしれません。日本人は、借金と聞いた瞬間に一歩引いてしまうんです。それは海外から見たら不思議に映るでしょうね。」

こんな書き出しで始まります。

借金はいくらしても問題ない。問題なのは現預金をいくらもっているかだというような内容が書かれています。

 

さて、そのソフトバンクですが、借金(有利子負債といいます)、売上を比較してみてみると、以下のようになります。以下は2018年3月期決算の数字です。

 

売上高   9,158,765百万円

有利子負債 17,042,188百万円

純利益   1,038,977百万円

 

桁が大きすぎていくらなのかわかりづらいかもしれません。売り上げが年間約9兆円に対して、借金は17兆円もあります。売り上げの実に倍くらいの借金があるわけです。ですが、利益は約1兆円あります。2017年3月期は利益が1.4兆円だったので、昨年比で約4000億円利益が減少していますが、依然として高い利益を出しています。

ソフトバンクの会長の孫正義さんはご自身のことを「借金王」と言っているらしいですが、これだけ借金があっても問題がないのは、現預金が約3兆円もあるためです。借金と言ってもすぐに返済を迫られるわけではありません。経営にとって大切なのは借金をいかに少なくするかではなく、できるだけ多くの現預金を持つことです。そして、確実に毎期、利益を出すことです。これによって、銀行はより貸しやすくなります。こうした状況が売上以上の借入金をしても問題ない状況を生み出しています。ソフトバンクという日本を代表する企業がこれを証明しています。

 

私の手元に「会社四季報」があります。「会社四季報」というのはその会社の事業の概要が書かれている辞書のようなもので、日本の上場企業の決算状況のダイジェスト版が載っています。この「会社四季報」を参考にいくつかの有名企業の売上と有利子負債の状況をみてみると、有利子負債が0となっている企業も数多くあります。借金はよくないと考えている表れでしょう。一方で、売上を上回る有利子負債がある有名企業も数多くあります。どんな企業があるのか、少し見てみましょう。

 

小田急電鉄

2018年3月期

売上高 524,660百万円

有利子負債 611,473百万円

純利益は29,328百万円と過去最高益。複々線化で混雑緩和し、利用者増加。

 

JR東日本

2018年3月期

売上高 2,950,156百万円

有利子負債 3,190,523百万円

純利益は 288,957百万円と直近5年で最高益。東京駅「グランスタ」やさいたま新都心の商業施設や賃貸ビルが好調。

 

東京ドーム

2018年1月期

売上高 83,686百万円

有利子負債 140,511百万円

純利益は8,116百万円と直近5年で最高益。スパラクーアが利益に貢献。

 

住友不動産

2018年3月期

売上高 948,402百万円

有利子負債 3,473,511百円

純利益は119,731百万円と直近5年で最高益。リフォーム・仲介事業が好調を持続。

 

NECキャピタルソリューション

2018年3月期

売上高 231,432百円

有利子負債 729,073百万円

純利益は6,006百万円と直近5年で最高益。情報通信機器・リースが堅調。

 

これらの企業の経営状況は決して悪い状況ではなく、むしろ好調な経営状態を維持しています。

 

よく私が聞かれることに「借入金はいくらまでしていいんですか?」というものがあります。

これは正直言うと、困る質問です。結局、いくらまで借入していいかなどというものは答えがないからです。現預金が少ないのであれば資本金を大きくするか、借り入れ(有利子負債)をするかしかないわけです。これまでこのブログで何度となく、書いてきましたが、どこまで借金をしていいのかと考えるのではなく、現預金を多く持つことが大事です。現金が少ないのであれば、借入金で賄うしかないでしょう。

これまでのブログは以下を参照してください。

 

月商の6か月分の借入金で倒産危機!?税理士や会計士の借入金にまつわる誤解

借入金なしの経営は危険!手元資金に不安がなくても借入しよう!

 

銀行融資の鉄則、「晴れた時こそ傘を借りる!」

 

上記のような大企業の決算を参考にしてみてはいかがでしょうか?



さて、今日は実際、私の顧問先でもあったお話です。

内縁の妻もしくは夫を社会保険の扶養にするにはどうしたらいいのか、という話です。

その前に、内縁関係というのは、事実婚、つまり、結婚していない(婚姻届を出していない)関係ということです。その内縁関係でも、社会保険の扶養にはなれるというのはご存知でしたでしょうか?

ちなみに、よく比較されるのですが、税法上の扶養になるには婚姻届を出していないといけません。つまり、税務上、配偶者控除を取るには内縁関係ではダメです。

 

さて、それを前提に、では、内縁関係でも社会保険に入れるというのは、手続きはどうしたらいいのでしょうか?

まず、通常の婚姻関係での扶養なのか、内縁関係かどうかは、届け出だけではわかりません。手続き上は、年金事務所では苗字が違うということから確認するでしょう。また、今は届け出にはマイナンバーが必要ですから、それでまずは確認するでしょう。

たまたま、苗字は一緒だが、婚姻関係にないというようなケースで、マイナンバーを出さずに手続きすると、ごく稀ではありますが、表面上は内縁関係なのか、婚姻関係なのか、わからないということも言えます。ですが、基礎年金番号で確認して婚姻関係にはないことは結局は分かるのではないかと思います。

 

話が少しそれましたが、婚姻関係の場合、特に添付書類はありません。マイナンバーや基礎年金番号でわかるからです。では、内縁関係の場合、それを証明するものは何か添付しないといけないのでしょうか?

 

まずは同居していないとダメです。ただ、同居しているだけでは内縁関係であることの証明にはなりません。では、どうやって内縁関係であることを証明するのでしょうか。

 

これはあまりよく知られていないことのようですが、住民票の備考欄のようなところに、「夫(未届)」とか「妻(未届)」というのを記載できるものがあります。

通常は続柄に「夫」とか「妻」とか書かれるわけですが、その続柄の欄ではなく、別に「夫(未届)」とか「妻(未届)」というのを記載できるのです。それらが記載されている住民票を添付して手続きします。

 

または、お互いの戸籍謄本を添付して、地域の民生委員などに内縁関係であることを証明してもらうやり方もあるようです。しかし、民生委員などを介するやり方は、少し面倒であるということもあります。この方法を選択するのは、何か余程の事情がある場合だと思います。

一般的には、内縁関係の証明は、やはり、住民票に「夫(未届)」とか「妻(未届)」と記載する方法でしょう。

 

ちなみに、外国人の場合、夫婦であっての姓が違うことは珍しいことではありません。この場合、どうするかというと、たいていが住民票を添付して夫婦であることを証明します。場合によって、戸籍謄本などを添付して夫婦であることを証明します。外国人の場合、この点、気をつけましょう。

 

また、同性のカップルを内縁関係とは今のところ認められてはいないようです。渋谷区などで同性のカップルの証明書を発行するという話がありますが、証明書を発行してもらい内縁関係なので社会保険の扶養にするというのは今のところはできないです。

 

いずれにしても、内縁関係(事実婚)は社会保険の扶養にはなれますが、手続き的には少し面倒です。そもそも、婚姻関係になってしまえば、そうした証明が必要ないことになります。婚姻関係であれば税務上の扶養にもなれます。その意味でも結婚してしまうというのも選択肢の一つになってきます。

 

今の時代、いろんな事情があって内縁関係になっているカップルも多いです。そもそも結婚してしまったほうがいいという選択肢も含め、ご自身の事情を勘案して考えてみてください。



さて、今日は久しぶりにマイナンバーの手続きの話です。

平成30年5月以降は雇用保険の資格取得(入社の手続き)、資格喪失や離職票発行(退社の手続き)は原則、マイナンバーの記入をしないと原則、手続きできないこととなりました。

では、本当にマイナンバーがないと手続きできないのでしょうか?

5月以降、私も実務上、対応していると、確かにマイナンバーの記載のない書類は、原則、書類を返却されるようになりました。しかし同時に、窓口の職員から「マイナンバーの記載がないですが、何か理由があるのでしょうか?」とか「マイナンバーの記載がないままですと手続きできないのですが、どうされますか?」と言った形で聞かれるようになりました。

私の事務所では、基本的に手続きは電子申請で行っています。電子申請の場合マイナンバーの記載がないと、「マイナンバーの記載がないので連絡をください」とコメントを付されて返されるようになりました。

さて、実務上、このようにマイナンバーがない場合、どうするかです。たとえば、「マイナンバーは出したくない」と従業員さんに言われたら手続きができないままです。このような場合、どうしたらいいのでしょうか?

原則は、やはりその従業員さんに言ってマイナンバーをもらうことです。

そうなのですが、いろんな理由でマイナンバーをもらえない場合、そんなときは、まず、備考欄に「マイナンバーの提出を拒否された」といった理由を記載することが求められます。その上で、再度、書類を出します。そうすると、手続きしてもらえます。

言い方を変えれば、マイナンバーがない場合、備考欄にマイナンバーの記載がない理由を記載すれば手続きはできるということです

ちなみに、なぜマイナンバーを記載していないかの理由ですが、単に「マイナンバーをもらっていない」とか「マイナンバーをもらい忘れた」いうことではダメでしょう。本人が提出を拒否したとかいう積極的に出せない理由がないとダメだと思われます。

また、雇用保険はマイナンバーの記載がないと原則手続きができませんが、健康保険や厚生年金はどうかというと、マイナンバーの記載がなくても原則、手続きは出来ます。

ただ、マイナンバーの記載があると、住所や基礎年金番号の記載をしなくても手続きができます。これは結構、楽です。住所とかがわからなくても、①氏名②生年月日③社会保険加入年月日④1か月の給与の額と⑤マイナンバーを記載すれば、手続きができるわけです。書類の記載が楽になりました。

また、マイナンバーの登録が年金事務所でされていれば、原則、住所変更届の提出も不要になりました。この点も手続きが簡素化されている点です。

いずれにしても、社会保険や雇用保険はマイナンバーの記載があった方が手続きが簡単になってきています。おそらく、こうした傾向は今後も続くものと思います。これまでマイナンバーを積極的にもらってこなかった事業所も多いと思います。ですが、今後は入社時からマイナンバーを原則もらうようにした方が、手続き自体が楽ですから、やはりマイナンバーをもらうようにした方がいいように思います。

ということで、今日は久しぶりにマイナンバーの話でした。